Flow
ヨーロッパの3か国共作のアニメーション。(いちおうラトビア作品となっている)
絵は、自然描写は写真のように近景ははっきり背景はボケもあり、登場する動物(動物のみ)は、近くてアップだと3Dアニメのようだったりしたが、つまりとても美しかった。それよりなにより私が驚いたのは音だった。洪水がひいて濡れた草の上を四つ足動物が歩く音など、本当に自分の記憶にある濡れ草の上を歩くときのような音がしたから。ちなみにセリフはない。(!)
主人公らしいのは、この黒猫ちゃん。大人というよりは、少年か青年くらいの猫で、大洪水という初めての出来事に翻弄されながらも健気に生き抜いていた。雨が降り続き、人間のいない世界(人の暮らしの痕跡はある)で、流れてきた帆船に乗りこんだ。先客のよく寝るカピバラは猫を気にも留めず(つまり追い出したりはせず)、やがて猿や神話に登場するような大きな鳥や、犬のグループなどと道連れになる。
潜って魚を獲ることを覚えて腹を満たし、神殿の遺跡?のようなところでは鳥が天に昇ったり、仲間が増えたり減ったりし、洪水にはつきものだが水が退けたときに水中生物が地面に取り残されたり(あれはピラルク?)・・・結末が劇的ではなかったのだが・・・別に起承転結でダイナミックなストーリーを作るつもりではなかったのかな?
動物たちのキャラクター、例えば黒猫のやさしさや健気さ、カピバラのおちついて考え深そうなところ、とある犬(レトリバー系かな)の人懐こくて明るいところ、鳥の気高さやなぜか黒猫にかける思いやり、猿の好奇心や物へのこだわりなど、とても上手に描かれていた。結末がよくわからないといっても、見てよかったと思える後味の良さだった。
少年と犬
東日本大震災で職を失い、センパイ(伊藤健太郎)に誘われて断れず、生きるために強盗の運転手をやっている青年(高橋文哉)。彼は犬好きで、ある日はぐれ犬に好かれて実家に連れて帰る。その首輪には「多聞(たもん)」という名前が刻まれたタグがあった。実はのちに動物病院でわかったのだが、皮下にマイクロチップも埋め込まれ大事に飼われていたが、もとの飼い主(岩手の中高年の婦人)は震災で命を落としていた。でも多聞は岩手ではなく、いつも西の方を気にしていた。
ある日警察の手入れが入り、逃走中大けがをして、多門とも離れ離れになった彼は、のちにSNSを探して現在の飼い主西野七瀬にたどり着く。
彼女は家庭と男運に恵まれず、今はデリヘル嬢をしていた。その彼女が山中で犯罪の証拠を隠滅していたときに、けがをした多聞と出会い、連れて帰って動物病院で手当をし、時々SNSに一緒の写真を載せていたのだった。高橋くんは多聞に会いに滋賀まで出かけていくが、彼女は多聞を渡さない。でも彼女も客とのトラブルから雇い主に追われ、二人と一匹で「ガソリンがなくなるところまで」逃避行しながら、多聞の行きたいところまで連れて行こうとした。しかし、雪の中で車は無情に止まり、彼女は警察に出頭するため彼と別れるが、その後の彼に悲劇が襲った。
彼らのように様々な人たちに助けられ、また助けて、最終的に多聞は熊本まで行き、会いたかった少年に会えるのだったが・・・。ネタバレするのでこの辺で。ムービーウォーカーでは案外評価の★が少ないけど、それなりに感動して満足もした。西野七瀬が出所後ちゃんとやり直していければいいな。
教皇選挙
なかなか面白かった。
ローマ教皇は、新旧問わずやっぱりキリスト教では最高位のかたであるから、その代替わりの教皇を選ぶのは重大な事だ。現代では(昔は知らないけど)それは世界各国から100人以上の代表が集って、その中から選挙(コンクラーベという)でえらばれる。ローレンス主席枢機卿(レイフ・ファインズ)は、その仕切りという大仕事を任された。
知らなかったが、窓にはブラインドを下ろし、一切の外部との連絡を断って、世界から集った代表はバチカンの教会内にお籠りするのだった。まるで競馬のレース前の騎手みたい、といったら罰当たりだろうか。(^^;)その公平さと冷静さから、ベリーニ枢機卿のようにローレンスを推す人もいるが、ベリーニは、まともな人間だったら誰も教皇になどなりたくないさという。なんだかわかる気がする。
投票が行われるも票は割れて、何度かやり直しの投票を行う間に、そのまともでない(?)人たちの中で怪情報だか暴露情報だかが現れてくる。そういうのはだいたいお決まりで、お金の話とか、女性問題とか。ちなみに新教の牧師は家族が持てるが、旧教では神父は独身。そして修道女たちが各国から集まった代表のお世話をするため、料理などに忙しく動き回っている。やっぱり女性はこういう場には出てこれないんだな。(-_-;)そのことを枢機卿らは疑問にも思わないのだろうか。
そして最後に、思いがけない候補(先の教皇の秘蔵っ子らしい)がクローズアップされ、最終的に新教皇に選出され、煙突からは「コンクラーベは終了した」「新教皇が決まった」という意味の煙が立ち上るのだった。しかしここでまた重大な疑問が現れ、ローレンスは次の教皇予定者に、1体1で審問を行うことになる。そのやり取りとは・・・。どんでん返し的でもあるが、とても心にしみて、考えさせられる内容なので、ゆめゆめ寝たりしないでしっかり見ていただきたい。(^▽^;)
今を生きる、いい教皇だと私は思ったけど。
そして私は、好き好んでそんな立場は引き受けたくないと思うほう。(^^;)
このコンクラーベは、亡くなった前教皇の思惑通りにすすんだようだ。ベリーニが生前の教皇とチェスをしたときの思い出を、「彼は8手先を読んで指すのだ」と言っていたが、前教皇はトランブレやアデイエミを失墜させるための策を練ってあり、ベニテスを枢機卿にして呼び寄せておいた。そういった謎解き的な面も面白い。家父長制的なカトリックに対する批判も描いているが、おおむねエンタメとして実際の聖職者たちからは受け入れてもらったようだ。
いつものように追加したところは青字です。