2月に劇場で見たラブストーリー。誰よりもつよく抱きしめて、ファーストキス、ゆきてかへらぬ、の3本。

「誰よりもつよく抱きしめて」新堂冬樹氏の小説を内田英治監督が映画化。原作未読。

内田英治さんといえば、やはりミッドナイトスワン,そしてサイレントラブ。監督の映画って、なんとなくフランコ・ゼッフィレッリのを思い出させるんだけど、それは私だけかな。(ロミオとジュリエットやブラザーサン・シスタームーン、エンドレス・ラブの監督)今回脚本は監督ではなく、今まで存じ上げなかったイ・ナウォンさん。(「夜が明けたらいちばんに君に会いに行く」の脚本家とのこと)

 

 

高校生の時に、良城(三山凌輝)の祖父の営む絵本店「夢の扉」で知り合った良城と月菜(久保史緒里)。ちょっと臆病そうな良城だが、勇気を出して彼女に告白し、恋人同士になった。彼は繊細過ぎて(ちょっと発達障害ぽいところも)職場になじめず、今は彼女と公団住宅みたいな部屋で暮らしつつ、在宅で絵本作家兼バイトでチラシなどのデザイナーをやっている。彼は潔癖症でいつも使い捨てのゴム手袋をしたままで、彼女に素手で触れることができない。高校の時はそうじゃなかったようだが、社会でもまれて疲弊したのだろうか。彼女も大学時代は青年海外協力隊に行きたいと思っていたが、今はその気持ちを封じ込めて、彼のそばを離れないためになのか、あの絵本店で働いている。

 

 

一見穏やかな日常生活のようではあるが、二人の間にはやはり葛藤がある。彼は以前モジャという飛べない鳥を主人公にした童話絵本を出し、これが人気作だったのに、次回作を生み出せていない。料理は彼の担当だ。なぜかなあ、彼が家にいるほうだから(?)と考えて、はたと気づいたが、それは彼が自分で納得できるような調理のしかたをしなければ、食べられないからかもしれない。なんと難儀な。(-_-;)いったいどれだけ洗うねん、というくらい食材を洗うし。めっちゃ洗剤がある。家財もあちこちをラップで覆っている。

 

なかなか「治療」にも踏み出せなかったが、やっと決意して治療(カウンセリング)を開始したら、これまでこういう人は自分しかいないと思っていたのに、同じような症状で苦しんでいる仲間村山千春(穂志もえか)ができた。彼女は介護していたお母さんを感染症で亡くしたため発症した潔癖症だから、わかりやすいんだけど。

 

良城は別に村山を女性として好きなわけではなく、彼女もそうなのだが、月菜にはかれらが心を通わせている様子が面白くない。それはわかるなあ、好きな人の気持ちが完全には理解できないことに歯がゆい思いをしてきたのに、良城は彼女と楽しそうにしている。そして月菜は彼女にきつくあたってしまい、良城にたしなめられるのだ。村山も気の毒に。

 

 

そんなとき、お店に韓国人シェフのジェホンが現れ、絵本のことで月菜と意気投合する。(実は彼は昔もっと若い時に、この店で彼女と出会っていたことが後で明かされる)彼を演じるのは韓国の人気アイドルグループ2PMのチャンソン。私は韓国アイドルにはうといけど、そのグループ名は知っている。そして、彼は十分大人だ。

彼が絵本店に忘れていった電話をたまたまとってしまった月菜に、電話の相手である彼のGFは一方的に別れを告げた。電話を取りに来た彼は、お礼にと月菜を彼のレストランに招き、手料理(プロだけど💦)をふるまう。

 

なんとジェホンは逆に、GFと触れ合っても心が動かない人らしい。だからフラれたのだという。そのへんは・・・よくわからないなあ。アセクシャルの逆バージョン?アロマンティックとセット

で(アロマ・アセク)ならアセクシャルもなんとなくわかるんだけど。(「ふったらどしゃぶり」のかおりちゃんなら、アセクのみなのかな。)それでもジェホンは月菜に心惹かれ、好きだと言い、フランスのレストランにシェフとして招かれているので一緒に行って欲しいとまでいう。良城と喧嘩して飛び出した月菜を立派なマンションに泊めてくれるが、手は出さない。

 

この二人、お互いを凄く思いやっているのに、なかなか思い切って前に踏み出せないところがもどかしい。綺麗ごとではない本音をぶつけ合えていない。いつまでもふらふらしたまま(と思われている)の良城は、月菜に申し訳ないという祖父に激しくしかられる。月菜は、このままではお互いのためにならないと、良城から離れる決心をする。この雨の中、良城は月菜のつまづいて脱げてしまった靴を、雨水のたまった道の溝から本当にものすごく頑張って(それを見ているこちらも苦しくなるくらい)拾い上げて渡すのだが・・・。びしょ濡れたのまま泣きながら村山を訪ねる良城が哀しくて涙がにじんだ。

 

 

一方、ひとりで砂浜に丸くなって夜を明かした時の月菜の孤独も哀しかった。内田監督っぽいシーンかなとも感じたけど。(ミッドナイトスワン的な、ね)朝、バイクでジェホンが探しに来てくれ、タンデムで海岸を走っているのを見た時は、てっきり月菜はフランスに行くのかと思ってしまった。

 

数年後。ばっさりショートカットの明るい表情の月菜が、多分NGOとかJICAとかで行っていたアフリカから帰ってきた。彼女が向かった「夢の扉」のドアを開けたら、そこではすっきりとした表情の良城が出迎えたのだった。  

ハッピーエンドで良かった。

 

途中はかなりもどかしかったが、純愛と美しい景色、嫌な人がほぼ出てこないことなどで、見終わったあとの気持ちがじんと、またはほっこりする。その辺がゼッフィレッリを思い出した理由かな。

 

 

 

入場者特典のカードにQRコードがついていて、それを読み込むと、良城の第一作

「空を知らないモジャ」と第二作「モジャの冒険」が読める。・・・でも、どうやらその2冊はネットなどで買えるらしい。(^^;)