この6月は結構みた。「からかい上手の高木さん」はすでに書いているのでここでは割愛。

 

★「違国日記」

原作漫画はアマゾンkindleでよくリコメンドされたが、読んでいなかった。

 

さきに書いた通り、人付き合いの苦手な小説家であるまきお(新垣結衣)が、仲違いしていた嫌いな姉夫婦の遺児である姪っ子・朝をひきとり、その後の暮らしを描く物語。

朝はとても素直で明るい子で、これまでに見たことのないタイプの大人である風変わりなおばさんとちゃんと暮らせて、かつその心をほぐしていく。まきおは人付き合いが苦手とはいっても、表現型がソフトでないだけで、人を愛し姪を可愛がる気持ちはちゃんとあるのだ。新人の早瀬憩ちゃん、すごくよかった。そして親友とその姪をちゃんとフォローし結びつける快活な友・夏帆もよかった。なぜ別れたのかわからないけど今も仲良く友人としてつきあっている頼りになる元カレ・瀬戸康史もよかった。

何なんだろうなあ、主人公のまきおは、一人でできるだけ人に頼らず、何にも束縛されずに小説を書いて生きていきたい人なのかな。それなのに亡き姉は、古い考えで上から妹に否定的にものを言うから、それはいやだったんだろうけど、死んじゃってもずっと「赦さない、嫌いだ」と思い続けられるものなのかしら。その姉にも事情があったらしいけど、お母さんはそれをちゃんと明かさないし、その姉が書き残した日記についてもまきおや朝が読んでどう思ったか、内容も反応も十分描かれていないし、原作を知らないからか消化不良だわ。

 

★「ハピネス」

 

これはもう窪塚愛流につきるかな。

原作が嶽本野ばら、下妻物語の原作者で、調べたらロリータファッション大好きな人(男性)。そういえばあの映画でも深田恭子がロリだった。

凄く唐突だが、あと1週間で私は死ぬという彼女に驚きながらも付き合うBFが窪塚くん。病気のために長く生きられないとわかっていたから、両親(大森南朋、吉田羊)はそれを覚悟しながら娘を育ててきて、今も「今夜彼の家にお泊りする」といえばそれを許す。高校生同士だし、もしこれが普通の状況だったら絶対許さないけど、いま娘は君のおかげで笑って暮らせているからと。好きなことをやらせるつもりなのだ。

設定にいろいろ無理があるとは思うけどね。で、彼女は彼と好きなロリータファッションのブランド本店まで旅をし、二人でロリータの服をきて、一緒にレストランで「世界一のカレー」を食べて・・・。避けられずに最後の時は来るが、上の写真の窪塚君は、その彼女に買ったばかりの服を着せてあげ、うなじに頬を寄せる。そのときの写真だったんだな。

こんなに若くして死んじゃうなんて、二人離れ離れになるなんて、何が幸せなの?といえば、そうじゃなくて、この広い世の中で、お互い巡り合えたことが幸せなんだよ、と彼女。君に会えて、恋ができて、良かった、幸せだよ、と本心から笑顔の彼女なのだった。彼も、彼女に消えられてからも、彼女と行っていた喫茶店でマスターと彼女の話をするなど、いなくなったとは思えないような暮らしをしている。つっこみどころはたくさんあったのだけど、見終わって、なんだかジーンとした。

 

★「オペラ座の怪人」

 

 

ちゃんと劇場で見たことがなかったので、これがデジタルリマスターで来たから、見に行こうと思っていた。今男子フィギュアスケートの演目によく登場するあの曲が流れてくるとテンションが上がる。

これも、原作を誰の視点で描くかによって、かなり違ったものになるのだろう。ファントムが悪で貴族の青年が正義だとは、昔々ならいざしらず、今どきの人々は思わないに違いない。(違う?)そして映像美が圧倒的だ。オペラ座から抜ける地下水路とその先にある秘密の宮殿(?)、数えきれないほどのろうそくの灯のゆらめきなど、美術スタッフと監督のこだわりはすごいなと思った。(実際には換気の悪そうなところで大量のろうそくを燃やすなんてとんでもないと思うけど💦)

報われない愛って、哀しいなあ・・・。ノートルダムのせむし男とか、エレファントマンとか、シラノ・ド・ベルジュラックとか、いろいろ思い出してしまった。

 

★朽ちないサクラ

 

 
この、後ろを向いている女性は、主人公・杉咲花の親友(森田想)で、「私を信じて」は彼女の叫びだったんだね。以前、浜尾京介くん主演のサクラのドラマのブログを書いたけど、今回のサクラも公安のこと。原作未読なので、もしかして、花ちゃんと萩原利久くんがサクラなの?と思っていたが違った。警察の生活安全課勤務の利久君は、まるで「美しい彼」の平良のように、好きな人(花ちゃん)に尽くすまじめでまめな役だった。名前は前のほうに出ているけど和田聰宏さん(「うつかれ」の野口カメラマン)は出番が少なかったなあ。それと同じくらいちょっとだったのが尾美としのりさん、全体に俳優の使い方が贅沢だったかも。(^^;)でもポスターの5人はたっぷりと演じていた。「25時、赤坂で」の篠原悠伸くんも重要な役だった。遠藤雄弥くんは、個人的に「またこんなの?」だった。もっと「いい人」の役来ないかな、と次回に期待する。(^^;)
黒幕が彼なのね、というのは途中から気づいたけれど、それにしても、サスペンスものでは得体のしれない悪者役を新興宗教団体にしがちなのには辟易した。(-_-;)わけわかんない人たちのことだから何でもやるでしょ、というのは思考停止じゃない?もっと別の設定を考えるべきじゃないかな。
下は、入場特典にもらったポストカード(艶消しの紙)
 

 

 

★ルックバック

 

 

ふだんそんなに劇場でアニメは見ないのだけど、予告編とかで、絵柄が(線が違うし、いかにもな感じのお目目キラキラな子供っぽい人物でなく)よくあるアニメとは違うなと思ったし、藤本タツキ原作なら見てもいいかなと思って見た。彼の「チェンソーマン」は1回アマプラあたりで見たきりだが、その出身地が私の育ったところと近いのでね。

A4プリント大くらいの「学年新聞」に、4コマ漫画を連載している藤本(声・河合優実)は、絵がうまいといつも周りの友達から褒められて得意になっていた。彼女に担任の教師は、ひきこもりで不登校の生徒・京本が学年新聞に漫画を描きたいと言っているから、場所を譲ってほしいといわれる。ふん、お手並み拝見、とOKした藤野は、京本の書いた漫画の絵のクオリティが高いのに驚き、学年で一番絵がうまいポジションは自分だとばかりに、猛然と絵の勉強(独学)を始めた。でもある日、なんだか憑きものが落ちたみたいにぱたんと漫画を描かなくなった。よせばいいのに、友人は、休み時間も絵を描きまくっていて一緒に遊ぼうとしない藤野に、「もうやめなよ、中学に入ってもそんなだとオタクっていわれて気味悪がられるよ」とアドバイスする。

悪気はないんだろうけど、というか善意なんだろうけど、でも、なんだソレ。(;´Д`)

きっと違国日記のまきおもそういわれたんだろうし、藤本タツキもそういわれてきたのかもしれない。

小学校の卒業式で、藤野は、担任に欠席した京本に卒業証書を持っていってやってと頼まれる。嫌々ながら京本の家に行った藤野は、そこで初めて京本と会い、そこから無二の漫画仲間になっていくのだった。ふたりで漫画家デビューもし、これからというところで波乱がおきる。そしてそのあと、思いもかけない出来事がおこるのだ。

オタクが悪いとは思わないし、自分の好きなことを突き詰めたら、職業漫画家になるという道が開けた。やりきるということが、いかに困難で、それゆえいかに凄いことなのかと考えさせる。そして、当たり前だと思っていた日常が、実はそれ自体とても有難いことだったんだなあとも気づく。

短いけれど、しっかり胸に残る作品だった。それに藤野が駆けてゆく登下校の道は、よく見たような田舎道だし、そこに横たわる美しい山はどうみても鳥海山だし、京本の訛は地元弁に近かったし(一番近かったのは、はじめのほうに登場して藤野の絵を褒めたおばあちゃんのセリフ)、コンビニがあるとか電車が今風だとか、私が見た景色よりも現代だけど、懐かしい心象風景があった。

 

下は、入場者特典の漫画冊子。ええっ、こんなのくれちゃっていいの?全く同じではないけど、映画の草稿という感じの漫画だったのだ。

 

 

 

これは京アニの作品ではないが、あらためて、京都アニメーション事件の犠牲者の方々のご冥福をお祈りします。