3月の終わりに落下の解剖学、その後4月に入りオッペンハイマー、ギブン柊mix、陰陽師0を見た。でもこの後結構予定がつまっているから、4月はこれで終わりかな。

 

まず、「落下の解剖学」。これはすでにカンヌやゴールデングローブその他有名な映画祭で賞を獲っているが、アカデミーでザンドラ・ヒュラーが主演女優賞を受賞した。彼女は来月公開の「関心領域」でも主演女優を務め、注目されている。どちらも軽いエンタメではなく、重い意味をもった作品。

 

 

大都市ではもっと早く公開されていたのだが、こちらの映画館では沈黙状態だったので、どうせこっちには来ないのだろうと思っていた。しかし、各館の上映予定映画を検索していたら(映画館はちっとも数多くないんだけどね)、ヒットしたので、勇んで見に行った。

もの書きを生業にしている夫婦だが、妻は成功しているのに夫は芽が出ず、副業で稼いでいる。ロンドンにいたが夫がついていないときに息子が視力障害を負うような事故に遭い、夫は故郷の山奥に強引に家族を引っ張って連れてきて、山小屋を経営しながら小説を書こうとする。妻は実はバイセクシャルで、浮気をしたこともあり(夫には打ち明け済み)、文学専攻の女子学生がはるばる話を聞きに妻を訪ねて来たが、インタビューが始まると大きな音で音楽をかけて邪魔をする。それで彼女を追い返したと思ったら、大きな音がして、夫が3階作業場から地面に落ちて死んだ。落ちたとき目撃したのは、犬の散歩から帰ってきた視力障碍のある息子。疑われたのは妻だった。

その後は警察による現場検証があり、法廷での論争シーンが何度も繰り返された。その中で次第に家族の様子が明らかになっていったし、事件を受け止めながらどう裁判の日々を過ごしていったかも描かれた。夫が落ちた角度や血痕のつきかたの分析などは、テレビで「科捜研の女」を見る方が面白いし精度も高い。ここの現地警察、トロいなあ、、と思った。(^^;)法廷劇は息詰まる様相。別に妻の肩をもって見ているわけではないが、やはり検事は意地悪な聞き方をする。

それにしてもザンドラを始め、息子役や犬までもが(!)素晴らしい役者だった。結局は、自殺未遂の過去がある夫が自殺したと推定されて彼女は不起訴になった。時間が長い割には、みなの熱演のため、長いと感じる間なく見終わった。見ごたえがあった。

 

 

「オッペンハイマー」はご存じのとおりアカデミー賞作品賞を受賞した。

 

日本は唯一の被爆国だから、ついそれを心に持っていると、相当批判的な目で見てしまうことになりそうだが、これはクリストファー・ノーラン監督の反戦映画なのだそうだ。

わからなくはない。科学者が自分の仮説を証明したくなること。純粋に森羅万象の中に存在する理を明らかにしたくなること。そして研究するには資金が要ること。うまくいけば賞賛と名声と潤沢な研究資金が与えられ、そうでなければ冷遇される。「にんげんだもの」、うまくいかなければ妬み嫉みひがみの心も生まれる。

オッペンハイマーには既に名声があり、核研究施設で困難にめげず試行錯誤を繰り返し、原子

爆弾を作った。が、実際に使用することには抵抗していたが、できてしまえばもうそれは国のもので、軍隊が来て持って行ってしまった。研究者はそれに対して無力だった。そしてご存じの通り広島と長崎に続けて投下され、誰も想像できなかったほどのとんでもない悲惨な状況を生み出した。軍や政府の中にも、もう日本は降伏寸前だったのに、なぜ原爆まで使う必要があったのかとの意見が出たが、私は結局あれは実地実験であり、台頭してきたソ連への威嚇だったのだろうと思う。でもソ連だって競うように核開発を進めたし、日本だって戦争中核爆弾を作ろうとしていたのだ。ただアメリカとは比較にならないほど、お粗末な研究施設でやっていたのだけれど。(映画「太陽の子」参照)

ほかの科学者は続けて水爆実験に取り組んだがオッペンハイマーは反対し、時代は反帝国主義から冷戦に突入。おりしもマッカーシーによる「赤狩り」が行われ、戦前から共産党員とかかわりがあったオッペンハイマーは諮問調査会のような場で何度も執拗に追及された。でもその諮問会は、公の体をとりながら実は個人的な恨みをはらすための場であったらしい。これも長尺の映画だったが、もううんざりした。私がうんざりするわけだから本人はもっとうんざりしたろう。

学問と政治は本来別であるべきだし、学問研究は公序良俗に反しなければ自由に行えるべきだ。また、今の日本国憲法は思想信条の自由や結社の自由などを保障しているが、たとえば彼がもし当時のアメリカで共産党員だったとしても、だから仕事や地位を剥奪するなどということは自由主義社会ならありえないことだ。結局最終的に、JFK(その名前が出たときおおっ!(@_@)と思った)らの反対で、彼は赤認定されずにすんだ。認定されたら、何かの罰が行われたはず。聞いたはずだがもう忘れたけど種々のものの剥奪。

ギリシャ神話のプロメテウスは、神から火を盗んで人類に与えたため、人類は文明や技術を手に入れたが、同時にそれで武器を作り戦争を始めた。それで3万年くらいの間岩に括り付けられて大鷲につつかれる責め苦を受けたんだっけ?オッペンハイマーもプロメテウスだったのかな。

考えさせられる作品だった。

 

「ギブン 柊mix」

これも全然こっちでやるという話がなくて、「本日の上映作品」をネットで検索していたらヒットしたので、いけそうな日に仕事を午後休みにして行ってきた。(午前中と午後の2回しか上映がなかった💦)もう~力入ってないのねえ。(;´Д`)でも行ったら入場者特典がもらえたわ。(^^;)それはイラストシート。描かれているのは、上段左から、秋彦、立夏、玄純、下段左から、春樹、真冬、柊。

 

 

 

1月27日には話がなかったけど、今月になって上映された。私は原作未読である。

時間的には、佐藤真冬をボーカルに迎えたギブンがアマチュアのコンテストに出たけれど優勝を逃したころのこと。優勝してアマチュアながらプロとともに大きなフェスへの出場が決まったのはshy(シー)だった。それは、真冬の幼馴染の八木玄純(しずすみ)、鹿島柊(ひいらぎ)、吉田由起(ゆき)の3ピースバンドなのだが、由起が自殺したためにギターが不在だった。柊はその穴埋めにギブンの上ノ山立夏を立ててフェスに出ようとする。話を持ち掛けられた立夏は断ろうとしたが、やはりshyの音楽はとてもかっこよくて、出演することを承諾した。しかし真冬はそれが受け入れがたいようだ。以前真冬は恋人の由起がバンドに熱中することで、由起を音楽に盗られて自分が取り残される気がしていた。今度は新しい彼氏の立夏がそんなことになるのではないか、と。

そして真冬は「早くしずちゃんとくっついちゃいなよ」と柊に言うが(真冬はそういった気持ちに敏感なのだ)、柊は玄純の想いに気づいていない。彼は幼い時から柊のお守り役だったので。

一方腐れ縁だった雨月とやっと別れた、バイオリン科の学生でギヴンではドラムの梶秋彦は、とあるビルの屋上にあるぼろい部屋(何だろうね、たまにドラマや映画で目にするこういった部屋は?)に引っ越ししていた。格安で、楽器の音出しがOKなのだと。時々音大の大学院生の中山春樹(ギブンではベース)が來るが、もうこの二人は体の関係もあるステディ。二人が今まさに始めようとしたときに間が悪く立夏が訪ねてきたが、秋彦は無視して続けようとするも、春樹は窓に灯が映っているし居るのがバレバレだから早く服をきて出ろというのだった。さすが春樹。(^^;)

また、柊のほうも、玄純の気持ちに気づき、自分でもこれまで気づかなかった玄純に対する気持ちに名前がつけられて、夜玄純の部屋に忍んでいくのだった。(平安貴族か?日本には夜這い文化があるのだろうか(・_・;))

shyにはフェスデビューの話があったが、ギブンも大きく水をあけられたわけではなくて、春樹のもとにプロデビューの話が舞い込んでいた。秋彦も春樹もそれぞれ学校の最終学年で特に就活もしていないので、異存はない。でも立夏と真冬は高校生なので、よく考えなさいということだった。さて、どうなるのだろう。この先のギブンの行方は、確かはっきりとは示されていなかったような・・・。ああもう記憶が怪しい。(-_-;)全編で60分余りしかなかったので、あんまり盛沢山ではなかったが、アニメだとこんなものかな。最近の実写映画特に洋画が長すぎるからなあ。

 

「陰陽師0(ゼロ)」

 

 

今大河ドラマ「光る君へ」でユースケ・サンタマリアが安倍晴明を演じているが、あんなには「力」はなかったのではないかと思っている私。(^^;)

この映画の安倍晴明は、まだ陰陽寮の学生(がくしょう)である。のちに帝付きの陰陽師になるずっと前の話、エピソードゼロ。晴明は幼い時に父を殺され、孤児となって陰陽寮の教授の一人(国村準)に育てられた。ほかの学生らと違って、上の位に上がることに興味がない。そこに源博雅(染谷将太)が持ち込んだ事件は、伊勢神宮から戻った斎宮の徽子女王(奈緒)が怪異に悩まされているというもの。博雅は彼女が密かに好きだった。晴明はその事件を解決するが、彼は陰陽師だが物事の事実のみを客観的に観察し見極めようとする人物だったので、位が高く信義に篤い博雅の信頼を得た。

その後、陰陽寮では謎の殺人事件がおき、その死のいきさつを推理し得たものに昇進させるということになったが、晴明は犯人の濡れ衣を着せられ、博雅とともに追われる身となる。

いっぽう博雅を好きな徽子は(両想いなのにね💦)、帝(花山帝かな、「光る君へ」では本郷奏多だったがここでは板垣李光人)からの恋文を届けた博雅に怒って龍にさらわれた。

晴明は無事に徽子を取り戻し、自分の父を殺した相手をつきとめることができるのか。

 

監督が佐藤嗣麻子さんで、あの山崎貴監督の奥さんということで、VFXは白組が担当した。脚本も同じ。この手の作品に、初めの2作品のような重厚さやヒューマンドラマ的なものは求めていないので(^^;)、エンタメとしてよかったんじゃないかな。山崎くんのアクションはキングダムの時同様キレッキレだったし、奈緒は儚げで綺麗だったし。昔の「陰陽師」(2001年、野村萬斎主演・伊藤英明が博雅)のとはストーリーと時系列(このときの晴明は学生ではない)が違うから比べても仕方ない。画像はやはり素晴らしかったし、無意識の世界に迷い込んだというのもありかなと思った。

 

ひとつひとつの映画については長くなかったんだけどな・・・。4000字超えちゃった。(^^;)

下はCLAMPによる入場者特典。