せっかく定時(6時らしい)に帰れると思ったのにまた主任の無茶ぶりで残業することになった浩国。仕事を終えて走って行ったがもう夜店は終わっていた。家に帰ると、甲斐はカップめんをすすっていて、テーブルには焼きそば。「ラス1だった」と。お前が食べろよ、と言っても、いや好きなんだろ、お祭りの焼きそば、と。「約束をすっぽかされたんだから怒れよ」、と言っても、「わざとじゃないんだし。」という甲斐。でも浩国の気が済まない。
やっぱり期待なんかするもんじゃないな、と独り言。え、そうなの?(・_・;)そう思って来たの?
ごめんな、と言い合っている二人。「何でお前が謝るんだよ。」甲斐は人に甘えた経験が少ないんだろうな、浩国のは少し意外だったけど、甲斐はきっと他人に期待しないで来たんだろうな。
翌朝浩国が目をさますと、もう甲斐はいなかった。テーブルには朝ごはんとお弁当の包みが。
甲斐はおやじさんの店に荷物を取りにいっていた。
そこへちょうどご近所のおなじみさんらしい女性が声をかけた。「今どこにいるの?」「知り合いの家に。」「ケンジさんに追い出されたの?まさかね、甲斐君は息子同然だもんね」と。(そうなんですよ、追い出されたんです。(-_-;))
その昔、甲斐はおやじさんに前掛け(エプロン)を渡され、何か作れるのか?と訊かれた。いや・・・。おやじさんは、包丁とレシピ本を出してきて、俺のために飯を作れと言った。いいか、自分のためじゃない、誰かのための飯だ。「誰かのため」と甲斐は繰り返した。
浩国の会社のお昼休み。甲斐の作ったお弁当を無表情で食べる浩国。甲斐は浩国の好みをよーく知っている。ハンバーグよりもミートボール、卵焼きは甘いのが好き、梅干しでご飯を何杯も食べられる。隣の金子さんが、「まずいのか?」と訊く。「いや、うまいです。」
いいよな、うちの奥さんも昔は作ってくれたんだ。でも、あっちが忙しい時にダメ出しを重ねて、怒らせてしまったから今は・・・。無償の愛ってのは幻想だぞ、何かを与えてもらったら、何かを返す。人と人ってのはそういうもんだ。語る金子さん。その通りよね。(^^;)
浩国以外の同僚はむっとしているが、黙って当たり前のように受ける浩国に、「腹が立たないんですか?」と女子社員が訊く。「え?」そんなことは考えてもみなかった浩国。そこで、はっと気づいた。甲斐と暮らしていて気が楽なのは、甲斐が何も期待していないからだと。
一方甲斐は病院にいき、親父さんの息子(ケンジというのね?)(*ケンジは親父さんの名前らしい)に鍵を返していた。息子は親父さんに、鍵を返す時も淡々としていたよ、あいつはそんな奴なんだよという。(じゃあなに、ケンジにすがって親父さんに会わせてください、と泣けばいいわけ?何を期待してるの?(-_-;))治療に専念するために見舞いも断ったというケンジ息子に、親父さんは、「好きにすればいい。・・・あいつは何も期待していないからな。ずっとそうやって生きてきたんだ」と静かに呟いた。
浩国が帰宅すると、甲斐は寝ていたが、起きて浩国の夕ご飯を温め始めた。持っていた本は、「初めてのキャラ弁」。(o^―^o)浩国は甲斐に、今度あらためてどこかのお祭りとか花火とかに行こうと、買ってきたばかりのガイドブックを見せた。でも甲斐は特にそういったものには興味はないらしい。でもそれじゃあ俺の気が済まないから頼むというと、「それなら一緒に寝て」と。(えええ!?そんな、あらん嬉しいじゃない。(^^ゞ と腐ってる私。💦)
そして・・・人のいい浩国、結局一緒に寝ているが、「埋め合わせって祭りとか~」と言うと、「ヒロは俺とデートしたいの?」「そうじゃないけど」「じゃ、いいじゃん、仕事早めなくていいし」ごもっともです。(^^;)
ぐいっと抱き寄せ、「ヒロ、小さくなったな。」「お前がデカくなりすぎなんだよ。」ぎゅう。
「放せって」「やだ」
「心臓の音、凄い。意識してる?」「それは・・・。」「意識してよ。」
「ヒロ、好きだ。」「何言ってんだよ、やめろって、その冗談。」「冗談だって、誰が言った?
冗談てことにしたいのは浩国だろ?俺と向き合うのが面倒だから。」「・・・そんなこと。」
「浩国ストレートだからさ、俺もわきまえようと思ってたんだけど、さっきみたいに優しくされるとつけあがるよ、俺。・・・そうあからさまに困った顔すんなよ。」「お前な」「俺、明日も早いから、おやすみ」と甲斐は寝なおした。こうやって、(甲斐は)逃げ道を作ってくれる。だからこのまま甘えていたくなる。
にこやかに振り返った。
さて、いかがな成り行きになりましょうか、この二人?