★「ゴールデン・カムイ」
 
 
 
 
これはアニメでもうサード・シーズンくらいまで放送されているようだが、私はアマプラで第一シーズンまでしか見終わっていない。でも今回の劇場版は、第一シーズンの半分くらいまでの内容だったので、十分わかった。つまりアシリパさんがうんこと思って敬遠していた調味料(味噌)を食べられるようになるまでだ、なんちゃって。(^^;)
バイオレンスなシーンもあるので(特に戦争の)繊細な人には必ずしもおすすめできないが、間違いなく面白かった。山﨑賢人はキングダムといいこれといい、近年アクション大作に出ることが本当に多くなった。殺陣やアクションの稽古を相当しているのだろう。
ストーリーは日露戦争のニ百三高地の戦いを抜きにしては語れない。有名な激戦で双方に大勢の死者を出したが日本が勝利した。(これで有名なのが「坂の上の雲」の秋山好古)その戦いで武勲をあげて、不死身の杉本という異名をつけられた杉本佐市(山﨑賢人)が、故郷の幼馴染の目を治したく治療費を稼ぐために北海道で砂金採りをしていたが、アイヌが隠した莫大な量の金の隠し場所の分割地図を、とある囚人が網走監獄で24人の囚人に入れ墨で描いてから脱獄させたという都市伝説をきく。それを杉本に語った男が殺され、その背と胸にも怪しい入れ墨があったので、否応なく杉本も金の争奪戦に巻き込まれた。
ヒグマに襲われたところを救けてくれたアイヌの少女アシリパ(ロシアとの混血らしく目が青い)(山田杏奈)と道連れになり、自分たちでアイヌの埋蔵金を探し始めた。ライバルは大きく2組。日露戦争で悲惨な戦いをしたのにその後の扱いが悪かった政府に対抗して、北海道に独立国を作ろうとしている第七師団と、同様な狙いを持った元新選組副長土方歳三の一味。(生きてたんかい?しかも相当なお歳じゃないか)奴らは容赦なく杉本らを襲ってくるし、アイヌに敬意を払っていない。その点杉本はそうではなく、アシリパの北国の生活における知恵と度胸に敬意を持ち、対等に接しているところが見ていて気持ちよい。
VFXも凄くて、クマに襲われたりアシリパの幼馴染のオオカミが助けに入ったりするところも本当に目の前でおきていることのようだし、馬そりで疾走しながらそり上で格闘したり、関節を外して鉄格子をすり抜けたり、ずっとどきどきハラハラして全く飽きさせなかった。キャスティングもはまっていて、頭の骨が吹き飛んで義額(?)をつけているという師団長玉木宏の不気味な怪演が凄かった。矢本悠馬の白石もぴったり。(^^;)双子役の栁俊太郎(二役)も眉毛がないとマジ怖かった。実直なマタギが大谷亮平なのも合っていた。
厳しく美しい北海道の自然も、どこまで本当でどこからが「いじって」いるのかわからなかったが、実際ロケもしているし、役者は凍るような沢水に入ったりしているのだ、大変だなあ。
それにしても原作が壮大な物語だし、今回はそのさわりみたいな部分だけだったから、次回作ができることを期待していいのかな?また見たいなあ。
 
★哀れなるものたち
 
 
 
 
これに関しては、kerakutenさんのブログに詳しいのでよかったら検索して飛んでみてください。
アカデミーでも何部門もにノミネートされているし、ヴェネチア金獅子賞なので、見に行ってみた。が、見たら衝撃でダメージを受けてしまった。(-_-;)ちなみに行って気づいたら18禁だった。
画像も衣装も何もかも、すごく作りこんであって、確かに素晴らしいのだが、私は見て疲れた。
内容はSFファンタジーというべきなのか、一人の女性の成長物語というべきなのか、それとも・・・。
冒頭、ロンドンの橋から一人の若い女性が身投げする、その身重の女性は「新鮮な遺体」として外科医兼研究者のゴッド(ウィレム・デフォー)が手に入れ、電気ショックで蘇生させたあと、なんと損傷した脳のかわりに胎児の脳を移植され、新しい命を得た。(そんな簡単にはいかないでしょうに。)彼女はベラと名付けられ、ゴッドの屋敷内で育てられており、体は成人女性なのに中身は子供だった。歩き方も小さい子のように左右に揺れながら不安定に歩いていて、喃語を話す。エマ・ストーンの演技力が凄い。子供だから食べ物を食べては皿に吐き出したり、気に入らないと投げ出して割ったり。そこにゴッドを尊敬する学生が来て、毎日ベラの観察記録を付け始めた。彼の言う「美しい痴人」は、毎日15個も言葉を覚え、めざましく成長するが、我々が子供のときのように大人に「めっ」と怒られたり大声を出されたりたしなめられたりはしないのだった。そのためか、彼女は社会通念とか礼儀とかはいまひとつわかっていない。・・・なのにいつのまにか自慰をすることは覚えてしまった。(-_-;)やれやれ。
 
学生は、ゴッド教授がベラを愛人にしようと考えているのかと疑ったが、そうではなく、教授は子供の時マッドサイエンティストみたいな父に実験台にされ、あちこち体がつぎはぎだらけだし、性器も実験のため役に立たないのだという。ひどい親!!そしてベラには父性愛を感じているという。教授は、ベラを屋敷の外に出さないなら(心配なので)君と結婚させてもいいといい、学生はそれに乗る。それで公正証書をつくろうと屋敷に弁護士を呼ぶと、その弁護士が滅茶苦茶に俗物な奴で、ベラを見て外壁を伝ってやってきて、籠の鳥じゃ気の毒だから外の世界を見せてあげようと、リスボンへの船旅に連れ出す。ベラはゴッドに弁護士と駆け落ちしてから帰って来て結婚すると伝える。Σ(゚Д゚)いやー、ありえないでしょ、と思うのだが、ゴッドはベラの服の裏にお金を縫い込み、送り出した。可愛い子には旅をさせよってやつ?・・・・
18禁なので、弁護士とベラのあんなのこんなの(←ベラに言わせると「熱烈ジャンプ」、すなわち遊びやダンスみたいなものなのだ)は出てくるが、あんまりエロくない。だって、そこに愛はないからかな。ちっともロマンチックじゃない。(-_-;)
 
そうやって、リスボンやアレキサンドリアやパリや、あちこちに行き、様々な人に会い、ベラも精神的に成長していく。弁護士がギャンブルで大勝ちしたのに、その大金をベラが船上から覗き下ろした、貧困のなかに死んでいく庶民に寄付したため(現実には船員にネコババされたけど)、文無しになった弁護士とベラは船を降ろされ、ベラはパリの娼館でバイトを始めた。弁護士にはののしられるが、彼女は私が自分で稼いだお金だから何も問題ないと言い切る。そして服の裏の札束を出してくれてやった。
そういう社会通念みたいなものがベラには通用しない。実際、自分で稼がずに文句ばっかり言っている弁護士よりはよほどマシかもしれない。娼婦仲間には社会主義者の女性もいて、彼女が大学の講義(一般向け?)に出ているのでベラも参加する。そうして娼婦をしながら勉強するベラ。仲間の女性とベッドで愛(恋?ではないよね。同志愛?)の交換をして、彼女がベラのおなかに帝王切開の痕を見つけた。彼女の子供は母に預けたというが、ベラは自分に子供がいたとは初耳で驚く。
 
ゴッドが病に倒れ、ベラからはたまに簡単な葉書が(字と文は子供)来ていたので、婚約者からの連絡で帰国を促された。帰宅したベラはゴッドに子供について問いただし、自分が受けた世にも稀なる手術について知った。でもベラはその体で生きていくしかない。ゴッド邸にはベラの二代目のフェリシティという若い女性(中身は赤ん坊)もいた。彼女は婚約者と結婚しようとするが、その式にベラの夫と名乗る男が乗り込んできた。彼は軍人で、ベラ(の以前の人)は妊娠が負担で気持ちが錯乱して家を出たのだという。それは都合のいい言い訳に聞こえるが。ベラは自分で選択してその男に連れ戻された。しかしこの男はいつも銃を持ち歩いていて家の使用人に対する扱いもひどく、いやな奴だった。彼はベラの自由を奪い家に監禁しようとし、小競り合いのすえ自分の銃でケガを負った。ベラは彼が死ぬのは見たくないと、彼を引きずってゴッド邸にもどり、婚約者の執刀で命はとりとめた。しかし・・・。
最後はゴッド邸でベラ夫妻と社会主義者の彼女と変わり果てた姿の軍人が一緒に暮らしている。花も咲き、明るい庭で、一見幸せそう。(でも私きもいからキマイラとか嫌いなんだがなあ。←謎)ベラは医者になるという。
 
哀れなるものたちって、誰の事なんだろう。自殺しようとして命を救われたけど、それまで誰も知ることのなかった人生を歩むことになったベラも哀れだし、親に実験台にされてつぎはぎの顔で結婚もできなかったゴッドも哀れだし、女の人権など頭の隅にも浮かばない俗物弁護士も哀れだし(ベラが本を読むと本を海に投げる奴だ)、愛されてるんだかなんだかわからない学生(婚約者)も哀れだし、溝の中で死んでいく貧しい人たちも、身売りして生活している娼婦たちも、安い娼館に通う男たちも、娼婦の上前を少しはねてそのお金で病気の孫を育てている娼館の老女主人も、他人を全く信じられず暴力で支配する軍人も、なんだかみんな哀れだ。
だけど救いはなくもない。逞しく前を向いて生きるベラであり、自分の道を進もうとするその友人であり、彼女らとともに生きようとする元学生であり・・・。そして全体においてこの作品は、奇妙な位湿っぽくなかった。
 
出来映えとして素晴らしいと思う。だけど私としては好きな映画ではないなあ。
(あ、あっという間に役名を忘れちゃって、スミマセンね。m(__)m)