萩尾望都さんの「トーマの心臓」にインスパイアされて作ったという作品。(私もそういう世代だわ~(^^人)題名は「1999年の夏休み」だけど、できたのは1988年らしい。出てくるPCなんかが液晶じゃなくてだいぶクラシックだし(わざと側面を覆わずメカ部分を出している感じ)。監督はガメラ三部作やデスノート二部作の金子修介さん。私は知らなかったけど、この作品は横浜映画祭で賞をとっている。今回はBLブログを書いているかたのお勧めで、WOWOWオンデマンドで見た。(8/31まで見られるとのこと)
 
舞台はどこか山奥の全寮制学校。中等部らしい。タクミくんの祠堂学院的な、自然豊かな広大な敷地にクラシックな建物。BOYS LOVEの舞台はちょっとチープ感があり、そんなに街から離れていない様子だったが、こちらはもっとギムナジウム的な趣がある。一階だけでなく三階にもこんな柱廊があるのはなんでかな?屋根に十字架があるわけでないし礼拝堂もないのかな。ま、それは別にいいけど。ロケ地は横浜大倉山公園にある記念館とのこと。

 

夏休みになったが、事情があって家に帰れない生徒が3人いた。3年生の直人、和彦、2年生の則夫。そして、3か月くらい前に一人の級友が近くの池(湖?)に落ちて行方不明になっていた。その子は悠といい、和彦に告白してフラれたのを苦にして自殺したのだと噂されたが、遺体は上がっていなかった。左からナオト、カズヒコ、ノリオ。この作品では、登場人物は4人の少年たちしかいないが、演じているのはすべて少女である。そのせいか、独特の違和感というか、声も高く中性的な彼らに独特のファンタジー的美しさがある。それに彼らは夏休みだというのに常時クラシックな制服を身に着けている。膝の靴下止めなんて、1999年に生き残ってるものなのか?
 
 

 
落ち着いたリーダー的性格のナオトは、実はルームメイトのカズヒコが好きなのだ。そしてノリオはユウが死んだと思い、池に野で摘んだ花束を投げ入れたりしている。
 

特に誰かに面と向かって責められたりはしていないカズヒコだが、内心相当ユウのことは気に病んでいて、うなされることもあるようだ。学校には食堂があるが夏休みの間は自分たちで料理している。当番制でノリオが大きなフライパンでオムレツを焼いた。でも食が進まないカズヒコにノリオはむくれ、ナオトは料理を引き取って食べてやるのだった。
 
 
ローカル線しかないこの学校の最寄り駅(しかも単線)に、ある日降り立った少年がいた。
 
 
その少年は、いなくなった悠に瓜二つで、みんなユウだと思うが、彼は自分は薫だという。
夏休みにいきなり転入してきて入寮する生徒なんているのかと思うが、家庭の事情だと言う薫。
 
悠と薫はもちろん二役だけど、区別しやすいように薫の声は悠と違う人が吹き込んでいて、服装も似てはいるが色調が違っている。さっそくカオルはナオトに案内されて部屋を見て回り、自分の部屋を決めた。でもカオルが気に入ったそこは、前にユウが使っていた空き部屋だった。調度品はライティングデスクとチェストと本棚とベッドとスタンドくらいだが、これらも濃色の木製家具でスチールやプラではなく、監督の美意識がうかがわれる。(だってお手本がトーマの心臓だもんね(^^;))花紋のような形の鏡が綺麗だ。
 

 

学校の隣には林があり、奥にいくと池がある。池にはボートをつないだ桟橋もあるが、へりが高い崖になっているところもある。ユウは深夜そこから飛び込んだらしい。その崖に立って下を覗き込んだカオルが足を滑らせた。気になって来ていたカズヒコは、走って行って助け上げようとしたが、カズヒコの手をカオルは拒み、払いのけ、自力でよじ登った。

 

 
なんとなくカオルはカズヒコに対してとげとげしい感じがする。とまどうカズヒコ。