劇場では、「せかいのおきく」「東京リベンジャーズ 血のハロウィン編~運命」「銀河鉄道の父」「岸辺露伴 ルーブルへ行く」を見た。
5月、仕事が忙しくなってややばてており、また、せっかく休みがあっても雨降りだったり用があったりして、休日があったわりには行けなかった。特に日曜日なんか一歩も外に出ないこともままあった。(-_-;)
せかいのおきく
「4月見たい映画」で予告していたが、江戸時代の庶民の健気な暮らしを白黒(なぜかたまにぱっとカラーになる)で描いたもの。
向かって左の中次(寛一郎)が持っているのはかごに入れた古紙、右の矢亮(池松壮亮)が置いた桶には長屋などから買い付けた糞尿が入っている。古紙はリサイクル用に売り、糞尿は大家から買い取って、近郊の大農家に売るのだ。それらを汲んで運び、小舟に載せて川を渡って、着いた先でしばらく寝かせてからまた大八車に載せて農家に運ぶ。鼻つまみの仕事だが、古紙よりも割がいいので中次も矢亮について「おわい屋」を始める。彼らがいないと町の快適な暮らしは成り立たないのにさげすまれるし、ひどい客もいて値切られたり頭から糞尿をかけられたりして、我慢の連続だ。でも客に逆らわない矢亮に反発する中次。
おきくの父は、結局居所を突き止められ殺された。おきくものどを切られて一命はとりとめたが声が出せなくなる。しばらくは長屋にひきこもっているが、近所の人たちや子供たちのやさしさや励ましで元気になっていき、声は出せなくても、のどに布を巻いてまた寺子屋の先生を始める。おきくに書道用の巻紙をプレゼントした中次。おきくは、冬の雪が降る中、中次に愛を伝えるため一人で別の長屋まで走っていくのだった。
「せかい」という概念は、おきくの父が中次に教えた。将来好きな女ができたら、せかいでいちばんお前が好きだと言ってやんなよ。・・・でも中次はとまどっている。相手は落ちぶれていてもお武家のお嬢さんだが、自分は妹に労咳(結核)で死なれ天涯孤独な庶民である。でもおきくはそれでも中次がいいというのだ。中次は、いつまでもおわい屋でいたくはない。字を覚えてもっとましな仕事に就きたい。そして中次も子供に混じって寺子屋に通い、おきくの生徒になるのだった。
これね、白黒だからしみじみするけど、これでカラーだったら糞尿がリアルに見えて、ちょっとずっと見るのに耐えられないかも。(-_-;)もちろん粘土か何かで作った糞尿だろうけど、かなり厳しいことになりそう。それでも汚れ役をやりきった寛一郎と池松壮亮には感心するわ。石橋蓮司も、もちろん黒木華もよかった。
東京リベンジャーズ 血のハロウィン編~運命
バイオレンスは苦手だけど、なんせ前のを見ちゃってるから気になるのよね(^^;)。
タケミチ(北村匠海)は、また今の年代でフリーターしてくらしているようだが、ヒナタ(今田美桜)と交際していた。でも今や東京卍会は、タケミチの知る、あのマイキーとドラケンが築いた結束力と統率力のあるまともな会ではない凶悪なものとなっていた。ドラケンはせっかく命を救ったものの、刑務所に収監されていたし、ヒナタはデートのときタケミチの目の前で殺されてしまった。しかも実行役は友達の磯村隼人?運命を変えてヒナタを救うため、再びタケミチはタイムリープするのだった。今回、高杉真宙の役どころがなかなかよかった(ポスター上段左から2人目)。
卍会結成のときのエピソードを中心として描かれる今作。マイキーを慕っていたのにおかしくなる村上虹郎と永山絢斗の感情と論理がわからない。(・_・;)面白かったが、90分くらいの長さ(短さ)だったのがちょうどよかった。続きが観たくなるところで、すとんと終わった。(^^;)続きは6月公開。多分見に行くだろうな。やっぱり悪い奴は、間宮祥太朗と清水尋也か。
銀河鉄道の父
ほんとは一番見たかったのがこれなのだ。小中学校と、宮沢賢治の作品には親しんできたから。主演が役所さんならハズレはないだろうし。このお正月に見に行った「ファミリア」同様、ここのところ役所さんとはコンビの成島出監督。
花巻の老舗質屋の跡取り息子の賢治。父は子煩悩で、賢治がおなかを壊して入院すれば、自ら付き添い、こんどは自分が腸炎になる始末。おじいちゃん(田中泯)は質屋になれと厳しいが、父は甘々で賢治(菅田将暉)が頼み込めば上級学校にも行かせる。これが質屋と関係ない高等農学校だったのだが。(そこで出会った保坂嘉内とのBL的な付き合いについては触れていない)そして様々な思想にふれた賢治は質屋を継ぎたくないと言い出し、家を出て国柱会に入ろうとして上京し、家族の許可がないと断られるなど生き方の迷子になっていた。そんな賢治はすぐ下の妹のトシ(森七菜)と仲が良く、トシは賢治の書く物語のファンでもありよき理解者だった。この家はあの時代、しかも地方でも、トシを東京の女学校に行かせていたくらいだから、財力があって子供の教育に理解のある家だったのだ。
だから賢治はやっぱりお坊ちゃんだった。(知ってたけど(;^ω^)あのころ、クラシックレコードを地方にあってダントツに買っていたのが賢治だった。と、これは映画には出ていない。)トシは女学校の先生になったが、結核を患い、宮沢家の別宅で療養生活を送る。賢治はトシのために何編も詩や童話を書き綴り読み聞かせた。
永訣の朝に、熱に浮かされ脱水して唇が渇いたトシが、「あめゆぎ(雨雪)とってきてけれじゃ」と言い、賢治は茶碗を持って庭に飛び出した。それを冒頭とする詩集をあとで出版したが、ほとんど売れなかった。・・・それは息子の本を粗末にされるのを避けたい父がほぼ全部本屋から買い取ったのだった。賢治は実家を出てトシのいなくなった別宅に移り住み、羅須地人協会を立ち上げ地元の農民たちに土地や気候に合った施肥のしかたなどを指導し、チェロを覚えて星巡りの歌をつくりそこに集う人たちに披露したりする。彼は本当にロマンチストで、まっすぐな人だったのだ。
父は、トシが亡くなりもう何も書けないと泣く賢治に、俺のために書いてくれと包み込む。弔いの場でほかの人たちと違い自分だけお題目を躍起になって唱えたときは、お前のやり方でトシを送ってやればいいと言う。下の弟妹たちでは、頼りない兄の代わりに店を継いで守った弟(豊田裕大)。いつも静かに見守り、賢治が病に倒れ危ない時は、体を拭こうとする夫(父)に「私だって賢さんの母親です」と言って代わった母(坂井真紀)。別宅から見る清冽な豊沢川(だと思う)、川霧、山々(奥羽山脈?早池峰?)のシルエットと田んぼの景色の美しさ。やませや吹雪が吹き荒れると大変厳しいが、この家族とこの風土だから、賢治の作品ははぐくまれたのだろうと思った。
心に沁みる作品だった。
さて、長くなってしまったので、二つに分けることにします。続きはその2へ・・・。