高山真さんの自伝的小説のドラマ化ということで話題のエゴイスト、公開初日に行ってきた。
小説(文庫)は、映画館のグッズ売り場にも映画館の入っているショッピングモールの本屋にも平積みされていて、手に取ってみたらぱっとすぐ読めそうな感じであったが、まだ買っていないので未読である。まだ公開中だし、ネタバレなしで書けるかどうかは今の時点で自信がない。(-_-;)

 

浩輔(鈴木亮平)は、東京でファッション雑誌の編集者として高級そうなマンションに住み、一人気ままにくらしている。彼の故郷は千葉の海沿いの田舎で、中学の時母をなくした。彼は自分の性志向を自覚していて、当時の同級生らは彼をおカマと罵り、母の香典返しのノートを破って紙飛行機にしたような連中だ。だから今も浩輔は母の命日に帰郷するとき、彼の心の鎧として高級ブランドの服を身にまとい、かつての同級生と道ですれ違っても無視している。東京でゲイ仲間と会食しおしゃべりするのがいい息抜きだが、そのときジム通いよりもパーソナルトレーナーにつくのがいいと勧められた。ゲイのいい子がいると。

 

そして会ったのが龍太(宮沢氷魚)だった。レンタルジムで龍太とトレーニングする浩輔は、すぐに爽やかで素直な龍太を気に入った。シングルマザーの母が病気したため高校を中退し、ずっと働きづめな龍太。高校中退ではいい職もなく、学校に行く余裕もないためトレーナーの知識と技術は独学だった。「お母さんに」とよくお土産をくれる親切な浩輔に龍太も惹かれ、あっという間に関係を持った二人。なかなか濃厚な性描写があったが、これはインティマシ―・コーディネーターがはいってるのかな?はじめ鈴木君が「受け」だったので、あれっと思ったが、そのあとの機会には役割交代していた。テレビでなく映画であるせいもあるのか、「僕ミク」どころではない見せ方だった。(・_・;)(監督・脚本松永大司)(もうひとりの脚本家は狗飼恭子)・・・それにしても、むしろトレーナーの氷魚君よりも、生徒の鈴木君のほうがマッチョだったが。

 

とても仲良しな恋人同士なのに、ある時龍太は浩輔に別れを切り出す。理由は、経済的にトレーナーとガテン系のバイトだけでは苦しいので、前から「売り」もやっていた。しかし浩輔を好きになってから売りができなくなったので、別れたいとのこと。いったんは了承した浩輔だが、龍太の不在と独占欲に耐えられず、そういうサイトで龍太を探し出し、(携帯画面は顔は隠してボディの写真と多分源氏名が並んでるメニューだった)毎月決まった金額をあげるからこの仕事はやめてくれと頼む。・・・つまりこれだと、愛人契約ということになるんじゃないかな。(・。・;

でもやっぱりお互いのことが好きだから、とりあえずまた恋人同士になった二人。龍太は売りをしない分、ますますバイトを増やした。愛のシーンの彼も、頑張って仕事をしているときの彼も、健気ですごく綺麗だった。何をしていても全く穢れがない雰囲気。(o^―^o)

 

龍太は浩輔を母と暮らすアパートに連れてくる。多分それまで龍太は友人の話もしたことがなかったのだろう。なのにいい友人ができたと嬉し気に話す龍太に、母はぜひ浩輔を招いてもてなしたかったのだ。母は、阿川佐和子。彼女は前から女優としてもセンスがいいと思っていた(「陸王」や「セミオトコ」など)が、本当にこの映画では素晴らしかった。(それと浩輔の父役の柄本明がよかった。いつも不気味な役で怪演されているが。)(^^;)家庭料理の宴は心温まるシーンだった。しかし、働きづめで無理したせいかあるとき突然龍太が・・・・。(´;ω;`)泣き崩れる浩輔。龍太の母は、龍太と浩輔のことはわかっていたようだ。しかし男同士だからなどといって諫めるようなことはしなかった。むしろ龍太によくしてくれた浩輔に礼を言う。

意気消沈する浩輔は、一人で暮らす父に母と別れる話は全くなかったのかと尋ねてみた。父の答えは意外だった。母は病気がわかったときに、離婚を切り出したらしいが、父は、嫌いになったのなら別れてやるが、そうでないなら、出会ってしまったんだから仕方がない、とことん行くしかないと答えたと。素敵なお父さんだ。( ノД`)結婚もせず孫もみせてやれない浩輔は、父にゲイとは告白していないようすだが、時折親に顔をみせにいくのだから、まあまあ親孝行なのかもしれない。

 

そのあと、ええっと思ったのだが、浩輔はひとりぼっちになった龍太の母に経済的援助を申し出る。私は「やめときなさいよ」と思った。もちろん彼女も初めは断った。が、しつこい浩輔に、結局折れた。浩輔はお土産を買っていったり花を替えたり、まめに彼女の家(龍太の思いや匂いの残る家)に通う。それは自己満足でエゴなのかもしれない。しかし、龍太やその母との絆を失くしたくなかったのだ。また早く亡くなった生母に甘えたり尽くしたりしきれなかった想いも、代理ではあるが満たされるのだ。彼女が入院した先にいくと、同室のおばあさんが、浩輔が行くたびに「息子さん?」と尋ねる。初めは否定していた浩輔と彼女だが、そのうちに「自慢の息子です」と答えるようになった。もう彼女は「ステージ4」なのだという。ああそれで、と思った。もう先が見えている彼女は、そのこともあって、もう浩輔の気持ちを受け入れようと思ったのかもしれない。死を前にしたら、建前や堅苦しい倫理観ではなく、人が心と心で繋がろうとするときに、お金がどうとかはむしろ瑣末なことなのかも。そして龍太を思うと、浩輔と離れずに彼をも息子として最後まで共に生きていきたかったのかも。

 

ただ、最後に浩輔のいうセリフは心に刺さった。でもそりゃあ、私だってそうだわよ。こんなに長く生きてきたって、とても一言じゃあ言えないし、わかってもいないわ。(;´Д`)

 

見終わった後に「YAHOO!映画」でほかの人たちの感想を見てみた。当然賛否両論。実際にゲイである人が苦言を呈していたのも読んだ。ただ私の評価としては、悪くない。刺激の強い濡れ場も、なんのその(?)別に不快ではなかった。そのように描く必要があったのかと言えば、それはわからないけれど、でもそこに愛があったように感じたからねえ。主演の二人はよく頑張ったと思う。鈴木君は、「エルピス」で長澤まさみと濡れ場を演じていた時もすごくセクシーで大人の色気に溢れていたが、こちらも女としてちょっと嫌なところがあった。すなわち、結局こんなふうに組み敷かれて言いたいことを黙らされるのは嫌だなと言う思いを、彼女の役どころと同じように感じたのだ。

お金が介在することにも気持ち悪さがあると書かれていたが、それはまあそうだけど、状況にかんがみて、許容。(;^ω^)宮沢君が鈴木君よりもマッチョじゃないことにも。

ただひとつ、カメラワークが・・・・(-_-;)見ているうちにむかむかしてきて、「あれ?片頭痛がはじまるの?それともこれからめまいがしてくるの?変なもの食べたっけ?」と考えたが、これは「寄り」が多いカメラワークのせいだという結論に達し、我慢しながら見た

あとでほかの人の感想を読んだら、やはり気持ち悪くなった人たちもいたようだし、見終わってからよくなったから間違いない。これから見る人はお気をつけて。

出演した役者さんたちのすばらしさを感じてください。