2023年・平成5年度の一作目は、これ。
実を言うと、つい最近までこの映画のこともお正月公開だということも知らなかった。多分恒例の「相棒」お正月特番に流れたスポットCMでこれを知ったのだと思う。(ところでお正月の相棒は、森崎ウィン君が出ていてうれしかった(;^ω^)「にしぼし」で町田君と共演してたし、「蜜蜂と遠雷」も見たけど、私が好きなのはNHKの「彼女が成仏できない理由」。)
しょっちゅう映画館に行ってるのにフライヤも見たことないし、どうせこっちではやらないんでしょ、と思ったら、ありました、車で1時間余りの隣町の館に。「死刑にいたる病」を見に行ったあそこ。冬だから道中がいやだったけど、意を決して出かけた。ここはショッピングモール的にはいつものシネコンと同じ母体だけれど、映画館は系列が違うのだ。見る前にとりあえずモール内のサイゼリヤでお昼。うちのほうのサイゼリヤは若者で混んでいるが、こちらのレストランは空いていた。はじめてのサイゼリヤ。
ていうかサイゼリヤの写真要らないよね。(;^ω^)
下はフライヤ。
もともと身寄りのいなかった陶器職人の誠治(役所広司)は、ひとりで陶器を手作りし生計をたてている。が、周囲にたくさんあった工房は、時代の流れとともに次々に商売を畳んでなくなっていた。妻は息子の学(吉沢亮)が幼い時になくなり、自慢の息子は出来が良くて、いい大学からいい会社へ就職し、今はアルジェリアでプラントの立ち上げに従事していた。その息子が、現地で働いていた、紛争で家族を失った難民の娘ナディアと結婚し、里帰りした。迎えた誠治も、近所に住む妻の兄夫婦(中原丈雄、室井滋)も、清楚で気立てのよさそうなナディアを気に入る。学は仕事を辞めてここに帰り、父さんと焼き物を作りたいというが、誠治はいまどき焼き物では食っていけないと反対する。
町にはブラジル人労働者が多く住み、ひとつの団地まるごとブラジル共和国みたいになっていた。彼らはリーマンショック前に夢をもって訪日し、その後リストラされたりして苦しい生活を強いられている家庭が多かった。中には金のために悪事に手を染める者も出たが、それよりももっと強く巨大な悪の組織が街を牛耳っていて、その中の半グレグループ(松重豊のヤクザにまで幅をきかしている)の首領(組織のボスの息子)が個人的にブラジル人をいじめていた。というのは、彼の妻と幼い娘が、夜通しパーティーしたあと飲酒運転していたブラジル人の車にひかれて死んでしまったからであった。以来、当事者でもない「ブラ公」を目の敵にした彼(榎本・MIYAVI)に追われて、ケガをした若者マルコスが誠治の工房に逃げ込んできた。マルコスを助けたことで、誠治・学・ナディアはブラジル人たちと友人になり、なにかと頼られるようになった。ナディアは学に、ここでお父さんと私たちとで家族になって暮らしたい、という。
学とナディアはいったんアルジェリアに帰ったが、その彼らを悲劇が襲った。
日本で、アルジェリアの砂漠で。生まれた場所も言語も文化も違う人々だが、みんな同じく人間だから、家族を愛し、友を愛し、通い合う心がある。家族を失った自分の悲しみや空虚さなんか誰にもわからない、といって他人を平気で殺させる榎本は甘えすぎている。一方仲間を自分を犠牲にしてまで助けようとする人もいる。ブラジル人にも、日本人にも。
失うものが何もなくなった誠治は、同じ施設で育った今は刑事をしている佐藤浩市に頼み、ブラジル人コミュニティを脅かす榎本とそのドラッグ売買組織を摘発するため、大きな賭けに出る。そして、新しい、血のつながりの全くない「家族」を作っていくのだった。
誠治がガイドブックを手に学のタブレットを開けて、自分が父親になる喜びの報告を見つけたときには私もじわっときた。(´;ω;`)
出演したブラジル人俳優たちは、オーディションで選ばれた人たちとのこと。監督は成島出さん(ソロモンの偽証、八日目の蝉)。榎本の手下の髪の赤い人、だれだっけ、前にも見たことある・・・・と思ったら、高橋侃(なお)だった。エンドロールを見ていたら,インティマシー・コーディネーターの浅田さんの名前がみえた。これにも関わられてたんだ。まあ、マルコスとしっかりものの彼女が追い詰められて、団地の屋上でいたしてしまうシーンがあったが、あのあたりかな。吉沢亮、できた息子だった。愛情深くて。役所さんはさすがと言うしかない。
こんな世の中だけど、フライヤのコピーにあるように、大切な人とともに生きていきたいという願いは、憎しみよりも強いのだ。