ひとは生きていく。いのちよりも長く。
例によって何も予備知識なく見に行った映画。でも、別の映画を見た時にこれの予告編を見たら、柴咲コウが「お行きなさい」とさっそうと指さしていたので、釈由美子がそう言っていたドラマを思い出した。結構面白かったのでよく見ていたそれは、「スカイハイ」。今回の映画は同じ作者高橋ツトム氏によるスカイハイのスピンオフ漫画が原作らしい。そして、萩原利久くんも出るということで、(^_^;)見に行った。プロデュースが「この世界の片隅に」の真木太郎氏、監督が「あずみ」「ゴジラfinal wars」「ルパン三世」の北村龍平氏。
場所は天界と地上の間にあるという町、三ツ瀬。そこにある老舗旅館天間荘には、臨死状態の人がイズコ(今回は柴咲コウ、町の観光協会の人、という話だが・・・・?)につれられて、タクシーでやってくる。お客は「天満荘で魂の疲れを癒して、肉体に戻るか、そのまま天界へ旅立つのか決めたらいい」とイズコに言われる。(映画ではわからなかったが、後で原作漫画を無料の範囲で読んだら、そこにかかる費用は本人は支払い不要らしい。)つまりお客は生死の境をさまよっているわけだが、では町の住人や天間荘の人は?釈然としないままにストーリーは進む。
ある日、若い女の子小川たまえ(のん)がイズコに連れられてやって来る。迎える天間荘の若女将のぞみ(大島優子)、妹かなえ(門脇麦)は、お客がどんな人なのか、予め記録を見てわかっている。なんとたまえは、二人の腹違いの妹だった。昔父が家を出ていき、その後に知らない女性に産ませた子がたまえだった。複雑な気持ちながら、たまえには罪はないし、せいいっぱいのおもてなしをしようと笑顔の練習をするのぞみ。(^^;)
たまえは、初めて見る海に大はしゃぎで、のぞみらが腹違いの姉だときいて驚くが、挨拶もそこそこに眼下に広がる海に向かって走っていった。無邪気で可愛い。イズコは、彼女はまだ自分がどんな状態におかれているのかわからないのですと言い、のぞみとかなえに後を託して去る。
たまえは、目の前にずらりと並べられた、いわゆる旅館の夕食に目を丸くする。こんなご馳走食べたことない、と。とても支払いできないというが、気にしなくてもいいとのぞみは言う。たまえは、幼くして母に死に別れ、9歳で父が失踪し、施設で育った子で、トラックにひかれて臨死状態になったのだった。そこに大おかみ(のぞみらの母、寺島しのぶ)が酔っぱらってやって来る。のぞみは和服を着ているのに、大おかみはセンスがいいとは言えない洋服姿で、パーマヘアもいまいち。客として認めないと、たまえの前で父を罵って去る。のぞみは、あの人はああ見えて気が小さくて、あなたが来ると知って昨日からお酒を飲んで気持ちを紛らわせていたのだという。たまえは、黙ってお客さんしているよりも居心地がいいから働きますと言って旅館の仕事を手伝い始めた。
かなえは、家の仕事は手伝わず、町の水族館でイルカショーのイルカの調教をしている。イルカはタクトといい、よく慣れている。少し離れて物事のなりゆきを見ている感じの子。水族館に行ったことがないというたまえを水族館に連れて行って、タクトに会わせたら、タクトがすぐたまえのいうことを聞いたのに驚いた。かなえには漁師の恋人(高良健吾)がいて、彼は旅館に魚を届けに来る。板前は中村雅俊。漁師の父はギバちゃんこと柳葉敏郎で、ただいまと彼が帰ると、タイのうろこを取っている。魚屋を営んでいるらしい。でもわからないのは、ギバちゃんが港町によくある高台の神社に階段を上ってお参りに行くのだが、どうも息子は亡くなっているらしい。家には息子の写真も飾ってある。そこで、実は高良健吾も亡くなっていて三ツ瀬で暮らしているのだとわかる。萩原君も階段を上ってきて、ギバちゃんを励ましている。彼があの子だったのか。(ネタバレするので詳しくは書かない(^_^;))
そこで、はたと気が付いた。この海辺の町の様子、ギバちゃんが神社に行くため後にした家も周囲の家もやけに新しい。これは東日本大震災の津波に見舞われた町ではなかろうか?
しかしこれも高台にある天間荘から見る町は、浜に沿って更地が続いているわけではなく、普通の港町なのだった。
その後、素直なたまえが気難しいお客の老婦人(三田佳子・さすがな貫禄の演技)の気持ちをほぐしたり、自殺を図った娘が来て、自分の人生を振り返る走馬燈を見て怒って倒してボヤを起こしたり、かなえの恋人がやっと決断して天界に去ったり、様々なことが起きる。行方不明だったたまえらの父(永瀬正敏)も登場し、なぜ父がたまえを残して失踪したのかも明らかになる。実はこの街の人たちは、津波で亡くなったが、まだ死を受け止めきれずに三ツ瀬で暮らしていたのだった。漫画を読んでわかったが、三ツ瀬の時間は地上の時間とは違って、長くたったと思っても、地上では一瞬のことであるらしい。天間荘の人たちは、イズコに協力し、自分たちが死んでいることを理解したうえで、町の人たちが決断するのを待ちつつ、新しく来る臨死状態の人を受け入れていたのだった。
そして町の人たちを送り出し、自分たちも天界に旅立った。父母娘2人で。いっぽうたまえは、いろんな人たちの想いを託され、地上に生き返った。それからが少し長いような気もしたが、たまえが地上に戻ってからの行動を描くことはやはり必要だったのだろう。「いかに生きるか」がテーマの作品だか、東日本大震災をサブテーマにしたからか、東北の俳優たちが中村雅俊やギバちゃん以外にも大勢チョイ役でも出ていた。高橋ジョージ、大島蓉子、つのだ★ひろなど。自殺を図った山谷花純の母役が藤原紀香、三田佳子の若い時がとよた真帆など、ほんの少しの出演でも俳優陣は豪華だった。
見ていて時々うるっとしたが、私ははっきりとは泣かなかった。しかしHPによると、以下のような評判である。やはり期待した以上に(してなかったが(-_-;))素晴らしい感動作だった。
監督がこの作品を映画化しようと思ってから、すでに8年が経っているとのこと。見た後eBooksで無料でかなり読んだが、原作だとかなえは旅館の調理担当で、イルカの調教師は別の女性だった。父の職業も映画ではカメラマンだったが、原作ではギタリストだった。ヤングジャンプで連載していたようで、全4巻単行本が出ている。(天間荘の三姉妹-スカイハイ-)。
こんな旅館については、CGを使ったんだろうな。(まさか新しく建ててないと思う)日本庭園もあったし。原作漫画ではたまえはいきなりお客の前に出せないからと、厨房で魚のおろし方を修行していた。この大おかみの絵、寺島さんがこの姿じゃ申し訳ないけど。でも寺島さんがびしっと和装をしたら、迫力のある綺麗さがあった。
よろしかったらご覧ください。映画も漫画も。
追記:主題歌「美しき世界」(絢香作詞、玉置浩二作曲、歌唱はこのふたりのデュエット)がまた素晴らしいのだった。予告編のときから、チェリー(玉置ファンのこと)である利久君は嬉しいだろうなと思っていたが。エンディングに流れてくるとじーんとした。
いつものとおり直したところは青字です。