前半については既に書いてみたけど。
その後見たのは、「グッバイ・クルエル・ワールド」、「アイアム まきもと」「マイ・ブロークン・マリコ」の3本。
まず、グッバイ・クルエル・ワールド。
こういう言葉好きじゃないけど、映画のポップから言えば、出てくる人たち、「クズ」ばっか。
上左の宮川大輔から順に、職業不詳・借金のために恋人(玉城ティナ)を風俗で働かせてるチンピラ。恋人は生きづらい田舎と家から出てきて、それしかできる仕事がなくて前からそれをやってたのかも。宮沢氷魚は、彼女がよくつかうホテル従業員。帰るところはネットカフェ。大森南朋は、刑事だけどヤクザに通じて利益を得ている。三浦友和は、むかし大学闘争をやってた左翼崩れで、詭弁でだました(?)若者を手下に、違法なことをやらせている。斎藤工はアコギな借金の取り立てなどを中心に違法な商売をしている。西島秀俊は、むかしヤクザだったが暴対法のために失業し、その後なかなかまともに働けずに妻子に出ていかれ、正業での再起を期している。
この連中が、お互いの名も素性も知らずに、ラブホの一室で行われているヤクザのオレオレ詐欺などで得た金をまとめる現場に踏み込んで金を強奪。情報を流したのは女と宮沢で、踏み込んだのは女、斎藤、三浦、西島。逃走の運転が宮川。しかし、莫大な金を手にして喜んだのも束の間、ヤクザはメンツをかけて復讐に出る。盗まれた金額を誇大に広めて、仲間割れや反発を誘う。その片棒を担いでいるのが大森。
最終的には、みんな凄まじい死に方をする。銃うちまくりで、ヤクザ、怖・・・・。(-_-;)みんな欲望まみれなんだから。もうちっと違う生き方はできないものか。でも、まっとうに生きたいと思っているのに、それを元ヤクザというレッテルだけで拒絶する世間がまた悪いのだ。「黄金を抱いて飛べ」に似てるけど、あれはもっと救いがあったかな。(忘れちゃった)
アイ・アム まきもと
牧本壮は、山形の庄内市(架空のまち)の職員。担当はおみおくり課。それは、ひとりで亡くなった市民の火葬や納骨などを担当する課で、課には自分ひとりだけ。牧本はそれを事務的にではなく、結構身を入れて務めている。あまり空気を読んだり妥協したりできない性質のため、所轄の警察官(松下洸平)にはいつも「警察は遺体保管所じゃない!」と文句を言われているし、自分の机の周りには白い布に包んだ遺骨の箱が積んであって、お掃除の人に小言を言われている。牧本は、亡くなった人の隣人らから生前の人となりについて聞き取りをしたり、身内を探したりするので、なかなか納骨が進まないし、自前で葬儀を出してやっている。自分一人しか列席しない葬儀だが。
牧本は石は建てていないが、自分の墓所を持っている。市営住宅で独り暮らしだし、彼にも身寄りがいないのかもしれない。上司(篠井英介)は見守ってくれているが、新任の局長(最近俳優のほうが進境著しい坪倉由幸)は、無駄だと課の廃止を言い渡す。それで、自分の家の窓から見える隣の棟で孤独死した蕪木(宇崎竜童)の案件が最後の仕事になった。癖の強い男ではあったが、その人生を辿ってみると、シャイで仲間想いなところもあり、なんとか多くの人に列席してもらって葬儀をあげようと牧本は奮闘する。
そして思いがけない結末。蕪木の娘で喪主の満島ひかりが泣き崩れていたのは、父のためだけではなかったはず。でも牧本のおかげで彼女には新しく妹や姪ができた。また、最後に、彼は心をこめて送った人たちからの、心を込めたご挨拶を受けられた。(謎)
この映画は、数年前の洋画「おみおくりの作法」がもとになっているそうだ。実はその映画、見逃していて、GEOのレンタルリストに入れていたがまだ見ていなかった。ほかのブロガーさんたちのブログを見ると、あちらのほうが優れているけれど、これはこれでいいんじゃないかという意見が多かった。舞台となった場所は、「おくりびと」の舞台とほぼ一致。鳥海山の南側で、私は北から見た姿に一番なじんでいるが、南から見たなだらかな優しい姿のお山。港の景色にも見覚えがあり、Facebookの映画サークルの知り合いがエキストラで参加しているそうだ。
たとえ今家族に囲まれて暮らしていても、そのうちどうなるかはわからない。誰にとっても「明日は我が身」なのだ。しかし、一人で死んだって、それが不幸とは限らない。見終わって清々しい気持ちになる映画だった。
マイ・ブロークン・マリコ
永野芽郁がちょっとはすっぱでぶっ飛んだ女子を演じた。彼女・シイノトモヨには、イカガワマリコ(奈緒)という小学校からの無二の親友がいた。マリコは壮絶な家庭環境で、父によるDVだの性的虐待だのを受けながらも、なんとか「シイちゃん」を頼りに生きてきた。そうされるのは全部自分が悪いからだと思い込まされていた。彼氏にフラれても(それもただのフラれ方ではなく、暴力をふるわれたり金品を盗られたり)シイちゃんと会って、本気で叱られると喜ぶ。そして、シイちゃんに彼氏ができて私から去ったら死ぬと脅す。うーん苦手、こういうタイプ。(-_-;)メンヘラと言うのだろうか。でもシイノにも、彼女以外に友達はなく、彼氏もなく、ブラック企業ですり減る日々。
そんなマリコが、ある日突然、睡眠薬を多量に飲んで、マンションから転落死した。シイノになんの前触れも断りもなく。ラーメン屋でひとり昼食をとっていたシイノは、テレビのニュースでそれを知り愕然とする。そして仕事をすっぽかして彼女のマンションにいくと、もうあらゆるものはマリコの両親がきて持って行ったといわれ、葬儀も直葬だと。(すぐ火葬しその場で葬儀をする。都会ではよくあるようだ)シイノは、遺骨になってまでマリコの自由と尊厳を奪われるのは嫌だと頭に血が上り、包丁をカバンに忍ばせてマリコの家に押しかけ、父親に殴られながらも包丁で脅し、マリコの遺骨を奪って裸足で階下に飛び降りる。そのまま家まで帰りついたシイノは、これからどうしようか悩み、マリコがいつかとある岬にいってみたいと言っていたことを思い出し、リュックに手紙好きのマリコがくれた手紙のつまった箱を入れ、骨箱を抱いて(あんなのむき出しで持つ?(゚Д゚;))夜行バスに乗るのだった。
その旅はシイノにとっても迷いの旅だ。なぜ?いなくなったら死ぬとか言っていたのに、なぜ何も言わずに死んでしまったの?と、それどころではないことがいくつもシイノの身にふりかかる。助けてくれたのは謎の男(窪田正孝)。これからシイノはどう生きるのか。
ブロマンスという言葉がある。男同士の、友情以上恋人未満のような関係。女性ではロマンシスというそうだが、シイノとマリコはロマンシスか、または共依存なのか。
でもシイノは、マリコが死んでも生きていく。しっかり食べて、しっかり働いて、(マリコとともに)生きていくのだ。映画では内容までは明かしてくれなかったが、現在マリコの義理の母となった女性が善良な人で、シイノに彼女からの最後の手紙を届けてくれた。
シイノが行った海と岬。ロケ地は、青森県八戸市の種差海岸らしい。先日旅行で三沢に泊まったとき、ポスターが貼ってあったのを見た。今回はそこは訪ねなかったが。
クルエルワールドでも海(太平洋岸の、関東かどこか)、まきもとでも海(山形の北の日本海岸)、マリコでも海(青森の太平洋岸)。それぞれに内容に影響を与えていた。