NHKの火曜22時からの連ドラ、「プリズム」が昨日終わった。放送が始まったころに少し書いたが、毎週録画して見逃さないようにしていた。(NHK+でも見れちゃうのだが)(;^ω^)(その分裏番組の「ユニコーンに乗って」も見ていたけど。)4話まではオリジナル?5話からは浅野妙子原作らしい。
簡単にあらすじを。長野から声優を目指して上京してきた皐月(杉咲花)は、そちらで目が出ず、むしろバイトで勤めていた園芸店での苔テラリウム作りに目をとめられ、造園会社勤務のガーデンデザイナー森下陸(藤原季節)と付き合い始め、彼の会社に入社する。彼女の両親は離婚しており、東京に住む建築士の父奥寺耕太郎(吉田栄作)は、舞台美術家の水川信爾(岡田義徳)と暮らしている。彼女は彼らの家に出入りしているが、長野に住む母(若村麻由美)は裏切られたと父をまだ恨んでいる。そして皐月が幼馴染で工務店跡継ぎの荒木剛(寛一郎)と結婚して、帰って来てくれないかと思っている。剛は昔も今も皐月に気があるが、皐月は剛の古い考え方と性急さについていけない。
一方陸には大学生のときに恋した忘れられないひとがいて、ある日突然消えてしまったその「彼」白石悠磨(森山未來)が、数年ぶりに会社のプロジェクトに招聘されて目の前に現れ、動揺する。会社では社長が経営困難のために失踪し、陸は立て直しと請け負っていたガーデンの完成のために奔走する。融資してくれる銀行がなく、陸は「彼」とのことで不仲になっていた銀行重役の父(矢島健一)から融資をとりつけるため、早く身を固めろと言う父に対し皐月と結婚するふりをする。陸は本当に皐月と結婚する気があるのだが、陸が実は悠磨と過去に何かあって、今もひきずっていると察した皐月は、両親の離婚のこともあり、そこまで結婚に期待していない。ただ母は、父が急病で入院したことをきっかけに、父の相手の人柄や仲睦まじい二人を認め始めていた。
しかしその計画も、皐月の父のゲイ問題と悠磨が陸の会社にいることで、陸の父の怒りを買って頓挫する。実は悠磨が大学の講師をやめて陸の前から消えた(そして海外で園芸の勉強とプラントハンターのようなことをしていた)のは、父の圧力のためだった。悠磨は陸の幸せのためと思って身を引いたのだ。僕の願いはあなたと同じです、と言って。(´;ω;`)
会社では今のリガーデン・プロジェクトを中止せざるをえなくなったが、それでも少しでもガーデンを企画した形に近づけたい陸と皐月と悠磨は三人で作業を続ける。
9/6放送の先回(最終回の前の回)、凄いものを見られた。
皐月・陸・悠磨の三人で作業したとき、はっきりと自分たちの考えをぶつけ合って、討論というか、喧嘩したのだ。彼ら(役の人物として)がこれまでこんなに感情を露わにし合ったことはないのではないか。セリフも覚え、それに感情を乗せて、テンポよくぶつけ合わないといけないし、自分一人でなく三人の呼吸があわなければいけない。その喧嘩シーンが生き生きとして、しかも三人いずれにも共感できて、いじらしくて、スリルもあって、素晴らしかった。また再生して何度も見たいくらい。喧嘩のシーンって、おそらくすごく難しいのではないかな。しかしこの3人はみんな優れた俳優だからね。それに喧嘩って、信頼がないと逆にできないことだよね。
皐月は陸に言う。「『ごめんね』も『ありがとう』もいらないから!」陸はいつもそういった言葉付きの生き方をしてきていたようだ。彼は何も悪くないのに。悠磨も、皐月も。皐月は、陸は悠磨さんといたほうが幸せになれると思う、だから私は別れると。
ルームシェアしている野木綾花(石井杏奈)の膝で泣きじゃくる皐月。綾花は、オーディションで勝ち取ったアニメ声優の仕事を始めたばかりで、今は剛とつき合っている。泣きながらも、綾花の作ったご飯を美味しいと食べる皐月。それでいいんだよ。食べなきゃね。綾花がいてくれてよかった。そして綾花は、剛に是々非々でその考え方は違うとはっきり言える子だ。(^_^)
綾花は剛と暮らすために出ていくと言い、皐月は新しい就職先(造園会社)を見つけるため同居を解消し引っ越すことになった。皐月は、自作のテラリウムを持って陸の実家を訪ね、陸の父に、陸がこのテラリウムに惹かれたのは、幼いころ(母は早くに亡くした)父と過ごした庭での幸福な時間を思い出させるからだと話す。彼に庭づくりの仕事を続けさせて欲しい、と。
陸と悠磨は二人が出会った母校の大学を訪ね、話し合う。そして、このまま僕らが一緒に歩いていくことはないと結論を下した。
その後陸の家を母違いの妹が訪ねてきて、父からだと封筒を渡すが、それには陸の口座に一千万円を振り込んだ証書が。おかげで、社員一同頑張れて、やりかけのプロジェクトは完成した。
そのガーデンの開園日、多くの見学客招待客が訪れ、そこには、皐月の父(カップル)と母の姿も。仲良く会話する3人を見て、皐月は、こんな光景が見られる日が来るとは思わなかった、と感無量。(岡田義徳は、うんと前に橋口亮輔監督の「渚のシンドバッド」で、高校の同級生の男子に恋する伊藤君をいじらしく演じていたっけ。共演した浜崎あゆみも初々しかったっけなあ。今回も、吉田栄作より「らしい」雰囲気を出していた。)この日、散水しているため、ガーデンにはこじんまりとした美しい虹がかかった。和解と希望の象徴のようだ。
さて、と一大プロジェクトを終えた三人。これからどうする?
陸は、この会社を引き継いで、頑張ってみるよと言う。悠磨は、長野で一山をまるまるデザインするというプロジェクトに参加するつもりだと言う。悠さんならきっとできるよ、と陸。皐月は、声優目指して長野から出てきたといってもずっとやりたいことがはっきりしなかったのだが、やっと見つけたのだ。私は、ガーデナーになりたい。必ずなれよ、と悠磨。
そして、悠磨は幸あれとの気持ちをこめて皐月とハグする。それから、万感の思いを込めて、愛しい陸とも。
そのあとは振り返らずに去って行った。残った陸がまた皐月にあやまる。謝らなくていい、という皐月に、でも皐月の気持ちを乱したことには変わらない、と。皐月は目に涙をためながらきっぱりと言う。私は陸に出会えたから、前に進むことができた。だから私に悪いことをしたとか、思わなくていい。陸は陸が立っている場所で一生懸命生きて。
皐月の父は、パートナーの信爾と、パートナーシップ制度に登録して、新居を構えようとしている。一方母は、祖母を介護した経験から、勉強して介護士となり、地元で元気に働いている。
綾花と剛は、綾花の妊娠を機に結婚し、剛は綾花の出した結婚の条件である剛の産休・育休を取得することとなった。剛にしてはすごい前進だ。でも剛は、考えが旧くてちょっと女性の気持ちの機微には疎いが、本来頼もしくて優しいいい奴なのだ。そしてなんと、ブーケトスされたブーケは、皐月の母がキャッチしてしまい、「ごめんなさい~💦」と周囲に謝る母。綺麗で明るい母に恋している同僚がいるみたいだけどね。
そして皐月は、ここと思った造園会社に結構強引に入社して、厳しい昔気質の親方(以前バイトしたとき、雑草と間違えて植栽を抜いてしまって怒られた人(;^ω^))のもとで修業に汗を流す。一年が経ったころには、気に入ってくれた顧客の奥様(阿知波悟美)に、あなたにお任せするから庭を作り直してもらいたいという依頼を受けるまでに。
そこで「力を貸して」と久々に陸と悠磨に声をかけ、集結した三人。
わだかまりもない様子で、楽しげに共同作業する。そしていつかのように、並んでおにぎりを食べる。またこんな穏やかで和やかな時が3人に訪れて、見ていてうれしい。彼らの関係性には、恋人とか同僚とかの簡単なくくりの名前はつかないが、でもちょっと切なくてそして温かいものが流れている。植物への愛のような人間への愛・・・ん、やっぱり名付けるのは難しいな。
この3人でなきゃ作れない庭があると思うんだ。いいね、やろう。挑戦してみたい、と話がまとまる。引き続き、立ち上がって庭仕事へ。そこでお話は完結する。
登場人物みなそれぞれに、前を向いている。今もこれからも様々な困難があるだろうけど、自分で決断して、自分の足元を見て、懸命に歩いている。そんな彼らから発せられるプリズムのような光彩が交錯しあって作り上げられる世界は、どんな景色になるのだろうか。