ポルノグラファーシリーズの作者で、ストーリーテラーとしてもいいなと思っている丸木戸マキさんの新刊、2冊同時に刊行。(2月の話だけど(^^;))漫画の定期刊行物は読まないので、お知らせのあったときに単行本で購入する私。(オメガ・メガエラの新刊を待ってるんですけど・・・)
さて、ストーリーは、主人公 仁科真澄と昔の彼氏 日下部律(りつ)を中心に進む、なんとSFである。(でも緻密な科学考証とか社会学的な検討とかはまず措いておいて読まねば。)
「もし地球の終わりが来たら、何して過ごす?」というような「IF話」は、友人や恋人間でのよくある話題だと思うが、それが現実になった。
真澄は、シングルマザーで彼を愛情深く育ててはくれなかった自堕落な母親から逃れたくて、必死に勉強とバイトをして都内の大学にすすんだ。なんと奨学金から母親に仕送りまでしている。一方律は、地方で手広く事業をしている父親が何番目かの愛人に産ませた子で、美貌と才能に恵まれているが、東大に合格しても正妻の息子に遠慮させられ入学できず、彼にとっては滑り止めで受けた大学に入り真澄と同学年になった。つまり二人とも家族の愛には恵まれなかった。
ゲイを自覚しているが恋したことがなかった真澄と、下半身に節操のない律は、律が初めて真澄に恋をしたことで、恋人同士になり半年の蜜月を過ごした。(律はそれでバイとなったが真澄以外の経験は女性のみ)
しかし律にはKOC(キング・オブ・サークル・クラッシャー)の称号があり、彼が入部したサークルは必ず彼の下半身のおかげで解散や廃部の憂き目にあうらしい。一時律も所属していた
真澄のミニコミ誌サークルはつぶれなかったが、律の退部と真澄の病気&ひきこもりという結果を生んだ。律は在学中に会社を立ち上げ、順風満帆な生活をしているが、真澄は留年しブラックな会社に就職して体を壊すなど散々である。奨学金の返済も残っている。
そんなある日、巨大隕石が地球に衝突して10日後に世界が滅びると言うニュースが流れた。
真澄はまだ大学の近所の同じアパートに住んでいて、大学の図書館に行ってそこで本を読みまくって死のうと思った。行ってみたら同好の士も案外いた。・・・と、なんとそこに律が現れた。一番会いたくない奴だったのに。(律は実は、以前例の話をしたときに真澄が図書館で読書したいと言ったのを覚えていたのだが、ここではそう言わない。)
真澄は律に頼まれて、彼のタワマンになんと死体の移動をしに(!)同行することになった。律がクラブで飲んでいるとき、ひょんなことから楽に死ねる薬というのを手に入れ、それをSNSで募った見知らぬ少年と飲もうとして、まずその子に先に飲ませたら死んでしまったという。
【え、あんたは飲まなかったのかい!(-_-;)薬を飲もうとしたのは隕石のせいじゃなくて、おおかた事業がうまくいかなくなったのか、あるいは女がらみ?いや、女で死にたくなるようなタイプではなさそうだが。】しかし、その部屋に行ったらその子は生き返っていた。そこで、もう公共交通機関はあてにならず車は道が渋滞しているため、その子を実家の浜松に自転車で送り届けることになった二人&一人(のちにもう一人)の不穏な珍道中が始まる。下は道連れになる遊馬とめぐる。
純で人が良すぎる真澄と、ちょっと人を食ってるけど案外懐の深い世慣れた律。実はいいコンビだ。しかも律は用心深く、こんな終末期になってもやっぱり「お帽子」をするのである。(;^ω^)
そのサバイバル道中で、律のこと、遊馬が死にたいほど絶望した原因となったアイドル「まあたそ」の自殺のこと、「まあたそ」こと嘉神まどかのこと、その妹(じつは弟)のめぐるのことなどが明らかになっていく。そして、やっと律と真澄に和解のときが訪れる。
果たして、最後の時を二人はどう迎えるのだろう。・・・内緒ね。
スピーディーに、二巻まとめて一気読みできる面白さ。(SFやリアリティーにこだわりのある人はやめといたほうがいいかも?)でも基本的にヒューマン&ラブドラマなので、単に設定が隕石衝突で終末の危機ということだけである。メカも軍事防衛も政治もひとつも出てこないから、それが苦手な人はご安心を。(^^;)
さて、彼らは彼らの人生の終末まで、ずっと一緒に生きていけるのかなあ?できればいいなあ。