月に何度か地元のTOHOシネコンにいっていても、映画上映前の予告編上映には流れなかったのだが、ネットの映画関係のコラムやムービーウォーカーへの投稿などで結構評判が良かったので見てみた。

 

2021年7月26日朝、34歳の誕生日を迎えた佐伯照生(池松壮亮)。佐伯の借りている部屋の大きなデジタル掛け時計(日付も出る)が何度も表示される映画だ。彼は部屋にたくさん置いてある鉢植えに水をやり、猫に餌をやる。ステージの照明係をやっている照生。ステージにいるバンドはクリープハイプ(尾崎世界観氏のバンド)?松居大吾監督がMVをたくさん撮っているミュージシャンだし、この映画の曲ナイト・オン・ザ・プラネットも手掛けている。というか曲のほうが先にあったらしい。そして監督はジム・ジャームッシュのファンであるようだ。松居監督といえば、「くれなずめ」も松居監督だった。この映画にも「くれなずめ」で主演した成田凌君が出ている。
いっぽうマスクしてタクシーを運転している葉。彼女は以前照生の恋人だった。ダンサーだった照生と知り合い、彼のバイト先の水族館で休館日に忍び込んでデートしたり、髪の長い彼にバレッタをプレゼントしたり、メーターなしでタクシーでドライブしたり、小さなケーキを贈ったり、次々に二人のかわいらしくキラキラしてきゅんとなる思い出エピソードが現れる。そのたびに壁のデジタル時計が映し出される。
この映画の時間軸は、どんどん後ろに進んでいくようだ。そしてそれらのエピソードは、すべて同じ日、(6年間にわたる)7月26日の出来事なのだ。だけど時間が止まったように公園入口のベンチに一日座る人もいる。永瀬正敏は、亡くなった奥さんが帰ってくるのを待つと言って一日座っているのだった。
ある夜合コンの席からタバコをすいに外の路地に出た葉は、火を貸してくれた男性となりゆきからライン交換する。葉のアイコンが猫の写真なのを見て、猫飼ってるのと訊く彼に、葉は切なそうに「あっちがひきとったから(今はいない)」と答える。そうか、二人は別れちゃったんだ、とそこで初めて気が付いた。だから合コンなんだ。(-_-;)「まだ引きずってるね」と言われて、「いやもう(アイコン)変えます」と葉。
別れたきっかけは、照生がけがをしてダンサーを続けられなくなったとき、葉に何の相談もなく、連絡もなく、一人で悩んで決断を下そうとしていたことらしい。わかるなあ。でも、葉は2週間なしのつぶてだったことで怒っていたが、私の場合は1か月だった。・・・・時代が違うのでね、今みたいにすぐメールやラインができる世の中なら、2週間でもそうなるかなあ。(;´Д`)私の時もこんなに通信手段が発達してればよかったかなあ。
でも、やさしい照生と、はっきりした葉、どっちも可愛いんだよね。ふたりともこんなにいい子でどちらも相手が好きなのに、なんで壊れちゃうのかな。・・・・(・_・;)やっぱりそういう縁だったってことかな。
ひとつひとつ丁寧にエピソードを描いているところが、「花束みたいな恋をした」と比較された投稿コメントトをいくつか見たけど、私は花束のほうを見ていないのでなんとも言えない。
直近(去年)の7月26日夜、仕事を終えて自宅のベランダで物思いに沈んでいる葉に声をかけたのは、赤ちゃんを抱いた男性。そうか、もしかしてあのときの彼?葉は今お母さんなんだ。そう、ちょっと思い出しただけなのだ。今日は忘れもしない照生の誕生日だから。