一人のクリスマスイブなんて寂しくはない。寂しいのは、受け取りてのいない贈り物だ。 (by ギイ)
このとおりの文だったかどうか、定かではないが。(また確認しないで書いてる(^^ゞ)タクミくんシリーズ完全版(時系列で並べなおして、大幅に加筆修正した作者渾身の作)の一冊目のはじめの方のここを読んだとき、本当にそうだなと思った。
この時のギイの事情はまだちゃんとわかってはいなかったが、自分の長い人生経験からしてもそのとおりだなと心情が容易に想像できた。
昨年の今頃はタクミくんの実写も本もまったく見ていなかったのだから、これは今年初めての感慨である。
もはやリアルな恋愛に踏み込むことの可能性もなく許されもしない中高年既婚者なので、それでもゲッターズ氏いわく「永遠の中学2,3年生」の身としては、痛いオバサンながらラノベを読んだりドラマや若い子むけの映画を見てキュンしているわけだ。
このとき高校1年生のギイがタクミ(託生)を想って購入したものは、上質な冬のコートと手袋だったらしい。(ギイは御曹司だから金額的にはなんてことない。)クリスマスの買い物客でにぎわう銀座でみつけ、「タクミに似合いそうだな」と思ったら、受け取ってくれるかどうか、それどころかそのことをタクミに言い出せるかどうかもわからないのに、つい買ってしまったのだろう。ここにあるそのプレゼントを見れば切ないのだ。
ただそのコートと手袋は、のちに思いがけなく役立つことになった。
2年生の春休み、親戚から譲られたニューヨーク行の航空チケットを手に、タクミはギイの帰省に同行して初の海外旅行をし、あろうことか着いたばかりの空港で交通事故にあってしまった。大きなケガはなかったが、そのとき着ていたコートが悲惨な状況になったので、ギイはタクミにあのときのコートを着せたのだった。タクミ自身はこのとき記憶喪失状態だったので、これが自分のコートなのかどうかも判別できていなかったため普通に着用したのだが。この後の、NY自然史博物館でのギイとタクミの「再会」シーンは、11冊に及ぶ完全版シリーズの中でも最高のシーンではないかと思う。このコートはどんなのだったのかなあと時々想像する。私の目に浮かぶのは、ペールグレーの中くらいの丈の(タクミ寒がりだから)、軽くて暖かくてすべすべした手触りのフラノのコート。NYも寒いんだけど、春休みぽくはないかな。(^^;)
そして昨夜の私の〇〇歳の最後の夜、やっぱり一人で過ごしていたのだが、(^^;)フィギュアスケートのオリンピック出場権を競う試合で羽生弓弦くんがSPを「序奏とロンド・カプリチオーソ(byサン・サーンス)」で滑った。そのタイトルを見て「!!」と思ったのは、タクミが3年生の夏に、尊敬する同い年の天才バイオリニスト井上佐智の別荘で開かれるコンサート(佐智の母マリコさんのためのバースデー企画)で弾く課題曲がこれだったからだ。その日タクミは「ぱきっと」した演奏でマリコさんに絶賛され、佐智はクライスラー作「プニャーニのスタイルによる前奏曲とアレグロ」を、めったに会えない恋人の前でこれ以上ないくらい色っぽく演奏した。ギイでもそわそわするくらい。私はここを読むまでロンドは知ってたけどプニャーニは知らなかった。そこを読んでからしょっちゅうこの2曲を聴いているけど、演奏者によって全く印象が違うのだった。例えばイツァーク・パールマンのだと凄く落ち着いているし、前橋汀子さんのだと完璧に端正だし、五嶋みどりさんのだと柔らかいとか。
ゆづくんの演技は本当にため息ものの完璧さだったし、その音楽も素晴らしかった。ピアノ演奏だったのがちょっと残念だが。あれはきちんと全部演奏すればSPの時間では収まりきれないし、ピアノのほうが音の強さや譜面の長さを調節しやすいのだろう。27歳だとフィギュアの世界では引退する選手もいるくらいだが、ゆづくんの向上心は凄い。次回のオリンピックにはぜひ出場させてあげたいし、(って私には何の権限もないが)悔いのない演技をやりきってほしい。
そんなこと思いながら三平汁なんか作っていたイブだった。「群青領域」の最終回も良かったし。全くイブっぽくない三平汁はなぜかというと、なんとなく作りたくなったから、そして具だくさんの汁物は旦那の好物だから。今日は妹からと友人からとプレゼントが届く予定。そして夜はいつもの歌の練習会をさせてもらっているカフェでお楽しみ会があって、旦那と出席する。ひとり一曲歌うのだが、私はリクエストにより"It's too late"に決められてしまった。(^^;) クリスマスソングでも覚えようかと思っていたのだけどね。