劇場版のこの作品を見てきた。主演は神尾楓珠くん。
以下、テレビドラマと映画と混ぜこぜになっているかもしれないが、あらすじと感想などを。
(いつもどおりちっとも「あら」すじではなく細かめだけどご容赦(^^;)
NHKの「よるドラ」で一昨年あたりやっていて、毎週見ていたドラマ。その題名は、「腐女子うっかりゲイに告る」。原作は、(例によって読んでないけど)、浅原ナオト著「彼女の好きなものはホモであって僕ではない」という小説。作者もカミングアウトしているそうなので、これは細部が事実に裏付けられた、しっかり意図をもった作品なのだ。
「よるドラ」は毎週30分ずつで、一作につき何週続いたろう?ゾンビものだとか、森崎ウィン君の「彼女が成仏できない理由」だとか、結構先鋭的で若々しい、昔のNHKだとこれはなかったなあというようなテーマが取り上げられていて、面白かった。・・・あ、私は「ヤンキー君と白杖ガール」のユキコみたいにゾンビ映画好きではありません。むしろ苦手。(;^ω^)
NHKでは、主人公の高校生安藤純に金子大地くん。ちょっと孤独な影のある(本人は孤立してみえないように相当気を配ってるが)彼には秘密があった。それは、彼がゲイだということ。マコトさんという結構年上で社会人の彼氏もいる。しかも、マコトさんには妻子もいるのだ。
そのマコトさんは、NHKでは谷原章介さん。役にかなり似合っていた。映画では今井翼くん。(やっぱりセクシーかも。)純くんは両親が離婚したため母子家庭で、一人っ子だから家ではお母さんと二人暮らし。ドラマではお母さんが、今「阿佐ヶ谷姉妹ののほほん二人暮らし」で妹の美穂さんを演じている安藤玉恵さん(映画では山口沙弥加さん)、親友の亮平君には小越勇輝くん、映画では前田旺志郎くんだった。(小越君可愛かったなあ。前田君は、とにかく演技がうまかった。)ほかにはSNSで知り合って、まだリアルで会ったことのないMr.ファーレンハイトというゲイ仲間もいる。いろいろとLINEで相談する間柄の友人で、クイーンのファンである。純くんもおかげでクイーンのファンになった。
(私はリアルタイムでフレディのファンだった。ピアノを弾きながら新曲「キラー・クイーン」を歌うフレディのMVを見て、いっぺんにファンになり、レコードを既に出ていた「戦慄の王女」「クイーンII」と買い集めていった。でもやっぱり一番は「オペラ座の夜」かなあ)
で、大事なのが彼とちょっと変わった友情をはぐくむことになる、クラスの三浦さんこと藤野涼子ちゃん。彼女はほんとに賢そうな子で(実際賢いのだろう)、映画「ソロモンの偽証」に出たときから好きだ。「ひよっこ」でも、賢くて気の強いしっかり者キャラだった。映画では山田杏奈ちゃん。もっと今風(涼子ちゃんは古風な女子高生)の女子だけど、映画の役柄はすごくいい子だ。
純くんと三浦さんの出会いは、本屋さんで三浦さんがBL漫画を買っているのを、鉢合わせした純くんが目撃したとき。三浦さんは、中学の時に「腐女子バレ」したら、女子たちから総スカンをくらって地獄のような日々を過ごしたのだと。だから、絶対内緒よ、と純くんに迫る。(えっと、個人的な意見では、なんでそれがいけないのかと思うのだが、彼女は「え、キモ」のたった3文字でそんな羽目においやられたそうだ)。純くんはBLを読んだことがなかったので、その漫画を貸してもらってマコトさんと読むのだが、「これはファンタジーだね。」というのが感想。「だって、初めからうまくなんて(SEXを)できないでしょ。」(;^ω^)ええ私もそうだろうとは想像してましたけどね。痛そ・・・。(-_-;)それは女性だって痛いよね。・・・おっとやめとこ。(-_-;)
それはさておき、三浦さんは純くんに興味をもち、やがて好きになった。純くんは彼女を恋愛対象として好きなわけではないのだが、彼女の告白にOKする。それはなぜか。彼は、ずっとマイノリティである自分が「異質」であって社会から疎まれる存在であると感じてきたから、なるべく目立たぬように生き、そして、できれば普通の幸せを・・・結婚して子供をもうけて親に孫をみせて、死ぬときは家族に囲まれて死にたいと願っていたのだ。それで、三浦さんとなら付き合えるかな、と望みをかけてみたのだった。うん、それはわかるよ。それはゲイに限らず、ほとんどすべての人が一度は考えることだと思う。でも、LGBTQではない私だって、結局それはできていないのだよ。(;´Д`)だからそのことにこだわりすぎなくてもいいんじゃないかとこの年齢になって思ってるのだけど。
実は、親友の亮平くんがひそかに三浦さんを好きだったという問題があったのだけど、純くんはそれを知らなかった。亮平君はそのことはあくまで内緒にし、二人を取り持とうとするほどのお人よしだ。
写真はクラスメートらとの遊園地デートの二人。(ドラマ)でも、うまくいきそうにみえたけど、やっぱり齟齬が生まれる。たとえば一緒に純くんの家で勉強しようとして、そこでキスからその先にすすもうとするが、純くんにはやっぱりできなかった。彼女は急がなくていいよと言うも。しかも、Mr.ファーレンハイトが自死してしまった。そしてマコトさんが家族サービスで来ているとわかっている温泉娯楽施設にWデートに出かけた純くんは、物陰でマコトさんとキスしてしまうが、そこを三浦さんに目撃されて水風船を投げつけられてしまう。そのことについて美術室の奥の部屋で彼女に弁明しているときに、それを聞いてしまったクラスの小野くんから、純くんがゲイであってそれを隠してきたことがバラされてしまうのだった。
このことは全校に瞬く間に広がったらしい。相変わらず亮平君は純くんを気遣って一緒にいてくれるが、周囲の好奇の目や冷たい視線にさらされる。そして教室(3階?)でクラスメートの前で小野君に責められた純くんは、(ゲイであることを責めたんじゃなくて、それを亮平君らに隠して三浦さんとつきあったことなどを責めたつもりらしいが、あれでは本当にいたたまれなかったろうと思う)ドラマではバルコニーから(映画では窓から)飛び降りてしまう。
ええっっ、死んじゃったの?と思ったが、骨折はしたが命は植木にひっかかったため無事だった。良かった。自分のためにもお母さんのためにも友人たちのためにも、命は大切だ。これで死んでしまったら小野君や亮平くんらに一生傷が残るだろう。お母さんは、わざと気丈に明るくふるまうが、病室で純くんは、どうして僕をこんな風に産んだの?僕は誰にも理解されずにたったひとりで死んでゆくの?と泣く。愛する息子の悲しみに、お母さんも彼を抱きかかえて涙を流すのだった。
そして彼はお母さんと大阪に引っ越して転校することに決めた。一緒にお見舞いに来た亮平君と三浦さん。美術部の三浦さんは、純くんを描いた絵が賞をもらって、その表彰式があるから、一日だけは登校してと頼む。その日、体育館の壇上で表彰された三浦さんは、純くんがいるのを見ると、マイクを奪って全校生徒の前でスピーチを始める。「私はBLが大好きな腐女子です」と。先生方は慌てて止めようとするが、亮平くんは飛び出してきて先生方を抑えてスピーチを続けさせようとする。だって、三浦さんは自分の身を捨てて本当に大事なことを訴えようとしているのだから。小野君ら床に座っている生徒たちも、人の話を遮っちゃいけないんだろ、と擁護する。そして三浦さんは、初恋の人に告白して付き合い始めたが、世の中全部がゲイになればいいと思っていた自分の、唯一ゲイであってほしくなかった人が、ゲイだったこと。でも彼が自分のことを隠してバリアをつくっていたのは、自分を守るためというより、周りのそうでない人たちを居心地悪くさせないための心配りだったのだと話す。彼が、生きていてくれて本当に良かった・・・・・。壇上にあがっていってハグしあう三浦さんと純くん。
テレビでは、きわどいことも長いスピーチで話すが、映画ではそこはさらっとしている。
映画では、純くんが入院中に、学校全体で、同性愛について各クラスでディスカッションした。そこでは女子中心に活発に意見が出されて、(男子は沈黙)自分は気にしないという意見が多数をしめたようだが、小野くんは、「みんな、(人間じゃなくて)何かのキャラクターみたいに考えてんじゃないのか」と疑問を口にする。そうだよね、他人ごとだと、是か非かどっちでもよくなるし、無責任に噂して面白がるんだろうな。
騒動の罰として、亮平君は反省文を書かされ、三浦さんは親を呼びだされた。(-_-;)
純くんはマコトさんにお別れを切り出す。でも、僕はマコトさんを好きになれて良かった。大人への階段をまたひとつ上った純くんだった。
そして、純くんはMr.ファーレンハイトの遺言(僕が死んだら「クイーンII」を供えてほしい)を叶えに行く。(三浦さんも家の外まではつきあう)海の近くの町で彼の実家に初めてお邪魔したところ、なんと彼は、想像していた大学生くらいの若者ではなく、中学生だった。なんて悼ましいのだろう。(´;ω;`)彼は大好きないとこの兄さん(磯村勇斗くん)に告白して失恋し、自ら死を選んだのだった。その兄さんの後ろ姿の写真が、彼のプロフィール写真だった。( ノД`)
なかなか来ない電車を待つ駅で、三浦さんは「私たち、別れよう」と言う。彼女にとっても彼にとっても、この出会いはとても意味深いものだった。
わかり合おうとする健気な二人の魂。三浦さんの好きなものは、ホモではなくて、僕だ。
日陰の植物のような、涼しげでかつ可憐な雰囲気の(ミステリアスな)神尾君。純くんによく合っていた。こちらも金子君よりもやや現代的だった。金子君も本当に純くんに見えた熱演。(これが「おっさんずラブ」のマロとは。(^^ゞ)いや、それにしても・・・前田君は、上手い役者だ。劇場版、草野翔吾監督の脚本も演出も良かった。
ところで三浦さんの描いて入賞した絵。ドラマのほうは、水族館の大きな青い水槽に純くんの横顔が透けていきそうな雰囲気だったが、映画のほうは、ペンギンに向かって純くんが泳いでいくような構図。漫画チックで。私はドラマのほうが好きだな。