実は例によって原作を読んでいないのだけど……。しばらく前にGEOで借りたDVDで、日高ショーコさん原作の「花は咲くか」の劇場版を見たのでちょっと書いてみる。(しかし早く書かないと、結構内容を忘れちゃってるのだ(-_-;))間違ってたら、すみません。ご指摘ください。

そしてこれ一作に、何冊分の原作単行本が含まれているんだろうね。

公開は2018年の2/24だったかな?もちろん私はしょっちゅう映画館に足を運んでいるのだけど、全く記憶になかった。こっちで上映したのかな?

ストーリーは、静かに進んだ。これと言ってビックリするような展開やショッキングな出来事はない。そして、BLながらも、周囲から頭ごなしの否定や揶揄はなく、むしろ周囲の善意や、人への思いやりが多く描かれていた。逆に言うとちょっと特殊な世界な気がしたくらい。

 

主人公の美大生水川(みながわ)蓉一は著名な画家の一人息子で、お父さんは友情に篤く、多くの人に慕われていたし、財産もあった。でも彼の両親が事故で彼がまだ小さいうちに亡くなってしまい、彼には広大な庭付きの古くて立派な日本家屋が遺された。維持するのも大変だし、今はたくさんの部屋の一部を下宿屋として活用している。管理してくれているのはお父さんの友人のヨシトミさんで、松本明子ちゃんのご主人で普段悪役の多い本宮泰風さんが演じている。別に仕事があるのにここでご飯を作ってくれたりして、とてもいい人。蓉一役は渡辺剣(つるぎ)君。映画は初主演。いろいろあって、今は芸能界をやめているようだ。

 

同居する下宿人も、蓉一のことを心配した親戚が下宿させたので、大学生の竹生も高校生の菖太もいとこである。兄弟もいない蓉一が、普段無口で他人に関心を示さないので、心配してなんとなく保護者的な感じでいるようだ。彼の周囲は善意ばかり?でもやはり財産持ちだとそういう意味でほっておかない、前から親しかったわけではない身内や遠い親戚たちもいるらしく、それらから守ろうとしているらしい。

 

ある日、広い敷地と庭を広告会社に貸して、撮影会が行われた。蓉一が庭に面した和室(絵具で汚したらもったいない!)にイーゼルを立て油絵を描いていると、会社の担当者桜井和明が、大家さんに挨拶をしようと庭から廊下に上がってくる。彼は絵を描いていた蓉一に(蓉一こそが大家さんとは知らず)声をかけ、家の者に迷惑をかけないようにとがっちり釘を刺される。タジタジとなるが、ふと絵に目を止めて、「花の絵だね。」という。抽象画なのに花だと言い当てた桜井に蓉一は驚く。が、さらに桜井は、「なぜか君の絵はずっと見ていたくなる。」と言う。
 
その後も時々桜井はお土産を持参したりして水川家を訪れるようになる。食卓で会話しながら、竹生や菖太は、蓉一が桜井にだけは関心を示し、言いたいことを言っているのに気づき驚く。蓉一は時々物言いがきつくなるのだが、桜井は大人なので、ちょっとカチンときながらもおおらかに受け止められるのだ。ここがもっと若い子だったらこうはいかないかもしれない。
なにせ桜井は37歳という設定。18歳と言う年齢差があるし、自分のことを十分オヤジだと思っている。仕事熱心で独身。このPCに映っているのが、先日水川家で撮影したPR写真。
 
桜井役は天野浩成さん。どこかで見た人だなあと思ったら、雛形あきこさんのご主人だった。役にぴったりなおだやかで優しい感じがする。
蓉一は水川家に来た桜井に「今から家を訪ねてもいいですか?」ときき、桜井はちょっとびっくりするが、OKする。そしてそこでの会話から、桜井は蓉一が他人の家を訪問したことがないときいてさらにびっくりするのだった。(純粋培養というか箱入り息子というか世間知らず)
この映画は、写真のこの女性、谷本佳織さんの初監督作品。撮影は、この桜井のマンションのシーンから始まったらしい。女性監督なせいか原作のせいか、全体にさらりと軽くきれいな雰囲気だ。
だんだんと距離を縮めていく蓉一と桜井。竹生や菖太も単独で桜井に接し、「蓉一をよろしく」的な探りをいれている。(^^;)が、そこにもう一人、蓉一の大学の友人である藤本が登場する。硬い蓉一と違って軽く社交的なキャラの藤本(塩野瑛久くん)は、蓉一にどうも特別な感情を抱いているらしい。水川家にたびたび訪れ、下宿もし始める。
藤本もふくめた若い子たちが、夏に庭で水撒きをしているシーンなんか、美しくキラキラしていた。いいなあ。彼らから離れ植木(広いから軽く林状態)の陰でキスする二人。
 
藤本も学校で蓉一に迫るのだが、悲しいことにフラれてしまう。塩野君のこのときの演技がよかったんだなあ、目に涙を浮かべて。渡辺君とは違うんだなあ、そのへんが。(;^ω^)
チャラいキャラで当て馬役ではあるが、蓉一に対し気持ちがまっすぐなのがいじらしかった。
 
「花は咲くか」の花って、蓉一が昔お母さんと一緒に花壇に植えた花のことだった。その花は咲かなかったし、すでに記憶が古くて、何の花だったかも思い出せない。蓉一が絵に描いていたのも心の中のその花だった。でもいつか咲かないだろうかと思って、その花壇は今も手入れしている。母と何を植えたのかは調べても考えてもわからなかったが、そこに蓉一の名前からとって芙蓉の花を植える桜井。
桜井に前から決まっていた大阪転勤の時期が迫ってきた。動揺する蓉一。桜井も、自分たちの年齢差や同性であることなど考えて離れようとする。しかし、やっぱり蓉一を失いたくないと思って走り戻ってきた桜井を、いつも通る道に立って待っていた蓉一。そしてしっかりと抱き合う二人なのだった。芙蓉の花、ちゃんと咲かせてね。