昨年ホリプロの60年記念で制作されたというから、BL漫画が原作といってもあなどってはいけないのだ。(^_^;)原作はココミさんによる漫画。写真は続編の表紙だけど、季節が冬なのでこっちのほうが合っているかと思って。

田舎(北関東か?とか思ったけど、不明。映画では長野県の上田市と千曲市でロケ)の仏具屋の三男の狐塚(こづか)光臣25歳は、高校生から東京に出て、大卒後サラリーマン生活を送るが、一本気で言いたいことは言ってしまうため衝突が多く、会社を辞めて帰ってくる。すでに兄たちも遠方に住んでいて、誰も仏具屋を継ぐ気はなかった。それが映画では手作りの家具店で、一人息子になっている。
同い年の熊井大和(やまと)は、赤ん坊の時に捨てられていた子で、いくつかの施設を経由し、この地域の高校生のときに、仏具屋近所の熊井農園のじいちゃんばあちゃんの養子になった。その直後にばあちゃんは亡くなり、卒業後はじいちゃん(名バイプレイヤー蛍雪次郎さん)と二人暮らしで農業をやっている。作っているのは漫画では野菜、映画では果物。人懐こく素直でいつもニコニコしている好青年。

映画の配役では光臣が古川雄輝くん。イメージぴったりだ。しかし、彼は結構背が高いのだ。その点漫画では農業青年大和がひとまわり大柄になっているが、映画では竜星涼くん。かわいらしい笑顔と人がよさそうなところはぴったりなのだが、ちょっと華奢だな。
光臣の母(中島ひろ子さん)から息子の話をよく聞かされていた大和は、帰ってきた光臣にあうのが楽しみだった。(田舎には若者が少ないからね(^^;))光臣は父(甲本ヒロトさん)から家具屋を継ぐことを拒否され、すぐには勤め先も見つからないから、大和に声をかけられて農園の手伝いをする。
写真はハウスみかんの収穫中の大和と光臣。苺も収穫するが、光臣はちょっとがさつだ。


そうやって仕事に連れ出してもらい、疲れるがふさぎ込む暇もなく、そしていつも笑顔で隣にいる大和に心ひかれていく光臣。寒い中の作業後、じいちゃんが風呂をわかしてくれて、熊井家の風呂に一緒に入る。(しかしこれは原作にはない。なぜ挿入したかな?)サービス?
(^^;) ちなみに光臣はひとりで入るつもりだったが、大和があとで急に入ってきたのだ。
じいちゃんがある日けがをして、ふたりは病院に運び込む。頭は大丈夫で命に別状はなかったが、念のため入院することになった。病院の廊下でため息をついてしゃがみ込む大和。大和にとってはじいちゃんしか家族はいないのだ。じいちゃんに何かあったら、ひとりぼっちになってしまう。そんな大和の気持ちがわかって、わざと冗談をいって力づける光臣。
しかし心無い人たちは無責任に、よそ者で施設育ちの大和には、じいちゃんのかわりに物事は任せられないなどと陰でいう。それを聞きつけて咎めた光臣を大和はとめる。「そういうの、慣れてるから。」夜熊井家で二人で飲んで、酔って寝てしまった大和があまりにも無防備で可愛かったから、愛しくなった光臣はついキスしてしまう。それにはっとして家に帰る光臣。ストーブに照らされた美しいシーン。大和は実は気がついていて、なぜキスされたんだろうと考え始める。
いつも一緒の二人だが、光臣に、大和とずっと同級生だった町の食料品店の息子上田(原作では原田)が気になることを言う。大和がこっそり年上の女性と会っているというのだ。しかしそれは彼女ではなく、施設にいたときの仲良しの姉のような先輩(村川絵梨さん)だった。
彼女は光臣に、私たちは親の愛情をしらないから、人に愛情をかけられてもどうやって相手に好意を示せばいいのかがわからないのよ、という。だからつい壁を作ってしまうのだが、その壁を壊してくれたのは、私の場合あの人だった、とそこで子供と遊んでいる夫を指し示す。
(これも原作にはないエピソード。ほかのBL同様、母をのぞきほとんど女性が重要な役では出てこないのだ。続編だとちょっと違うが)大和がいつもニコニコしているのも無意識にめぐらしている一つの壁なのだろう。見合いの話を即座に断ることも。
また、光臣も問題を抱えていた。父は光臣に技術を教えてくれるどころか、家具作りの道具に触ることすら許さない。しかし、修理を頼まれていた箪笥の納品を前にぎっくり腰になってしまい、急遽大和と光臣で納品にいくことになる。光臣には運転免許がないので、いつも助手席に乗っている。(この二人の位置関係はこれで固定(^^;))そして出かけた遠くの村のかやぶき屋根の家で、この箪笥は光臣の祖父がつくり、この家のおばあちゃんの嫁入り道具として一緒に来て、さらに父が修理して、この家の孫娘が嫁ぐときの嫁入り道具となることを知る。
覚悟をきめた光臣が帰宅後もういちど父に思いを伝えると、父はやっと弟子入りを許してく
れた。そのことを喜び合う二人。(原作は仏具屋ね(;^ω^))
光臣が頑張ったので、大和も決意した。自分のルーツを確かめたかったが、今まで踏み出せなかったのだ。でもきっと光臣とならできると考えて、彼をさそって東京へ行く。亀戸の役所へいって、戸籍の開示を頼んだのだ。原作は亀有じゃなかったかな?('◇')ゞスカイツリーをみてわあっと驚く素朴な大和に、光臣はお前田舎もん丸出し~と笑う。(でもその目がやさしい)結局時間がかかって翌日まで待たねばならず、二人でホテルを探すが、その日はあいにくツインはなくてダブルの部屋になった。(;´Д`)
意識しちゃって背中をむけはじっこに寝る光臣に、大和はあのときなぜキスしたのかと尋ねる。光臣は正直に、お前が好きになってしまったと告白。大和は、まだ自分の気持ちがわからないためちょっと待っててと頼む。でも、「抱きしめていい?」と訊く大和に、「抱きしめてからきくなよ」、と光臣。(o^―^o)
翌日、役所にいったが、やはり出された書類には親のことは何もかかれていなかった。これでスッキリした、と「つばき公園」(そこのベンチに捨てられていた)にいってみようとする二人に、年配の役人が声をかける。私もその場にいたんです、あなたは真新しいタオルにくるまれ、すやすや眠っていましたと。そしてタオルにはさまれたメモにはふりがな付きで大和と書いてあったのだ。これまで名付けたのは役人か施設の人だと思っていた大和は、つばき公園のベンチで、これから捨てるのになぜ名前なんかというが、名前は親からの最初のプレゼントだから、愛情がなかったはずがないという光臣。「大和」、と呼ばれ、「もう一回呼んで」とかぼそく言う大和。また「大和」。このあと優しくハグされ光臣の胸で泣く大和。可愛い・・・。(´;ω;`)

このあと二人は歩いて川べりの土手の道にくる。河川敷では様々な人たちが思い思いに過ごしている。その誰もに親がいて、家族がいて・・・。「俺にも愛せっかなあ?」と大和はいって、突然光臣にキスする。それに続き今度は二人どちらからともなく再びキスするのだった。
電車ではお互い寄りかかって居眠りしながら帰ってきた二人。(原作ではキスするのはガラ空きの電車の中なんだけどね)そして故郷の山山が見守る道を、並んであるいていくのだった。これからもずっと二人で。
見て良かった。主演の二人が可愛いし(特に竜星涼くん)、役者さんみんな演技がとても自然に見えて素敵だった。原作も続編とともにハートウォーミングだし、お勧め。都会でなく田舎で自然と共にのびやかに、まあ田舎なりのめんどくささ(噂とか人の目とか)もあるけど、だいたいあったかく包んでくれるところがよかった。ホリプロさん、このお話を選んでくれてありがとう。