とわ子の幼馴染で無二の親友かごめ(市川実日子)。かごめは両親をなくし親戚に育てられたが、遺産相続の問題で親戚づきあいを避けているし、世知的な要領がよくないため就職してもうまくいかない彼女には、とわ子くらいしか気の許せる相手はいないのかもしれない。そのかごめがいきなり心筋梗塞を発病してあっけなく亡くなってしまった。坂元作品には伏線がちりばめられているが、かごめが肩が痛いと言っていたのでこれは何の伏線だ?と思っていたら、心筋梗塞の前触れだったのだろう。その夜、とわ子の会社も大変な時だったのだが、初めて彼女は音信不通になった。
連絡を受けて病院に駆け付けた最初の夫八作に、「ひとりで逝っちゃったよ、ひとりで逝かせちゃったよ。」と淡々と話すとわ子。ひとりで頑張ってる人が大きなものを失うと、むしろすぐに泣くこともできないのだ。(私にも経験がある。大学生の時に母を亡くし喪主として葬式を出した。しばらくは泣けなかった。)
そのかごめに、とわ子が社長でいることで「小さな女の子に社長さんになろうという希望を与えるから」続けてと言われていたので、会社の買収と社長解任の危機の時もとわ子は踏ん張った。
かごめはアセクシャルな人で恋愛なんかめんどくさかったので、八作がかごめを好きでも恋愛対象として付き合うのは難しかった。とわ子は後で八作の思い人がかごめであることに気づいたが、それでもかごめはとわ子にとっても本当に大切な友だった。亡くなってもまだその辺にかごめがいるような気配を感じ、とわ子は八作と再婚はしないものの、八作とかごめと共に生きていこうとする。
この連ドラは、全10話中で後半の第7話からが第二部になっているらしい。第6話でかごめを失ったとわ子はその1年後に始まる第7話冒頭、以前からやっていた屋外での集団ラジオ体操をしていた。いつもほかの人と振りが合わないとわ子は、そのおかげで同じように振りの合わない男(オダギリジョー)と知り合いになる。
これが小鳥遊(たかなし)だった。とわ子と同じように数学の問題を解くのが好きな、ひょうひょうとした人畜無害そうな小鳥遊となんとなく親しくなるとわ子。そんな小鳥遊に、なぜかとわ子は1年経ってやっとかごめの思い出を語った。それまできっと誰にも話せなかった大切な友の思い出や自分の感情を、良く知らない初めての相手に話した。いやむしろ知らない相手だからこそ、素になって泣きながら話せたのだろう。ここで相当彼女のため込んでいた気持ちは浄化し流されたと思う。
小鳥遊も人に軽く言えない重暗い過去を持っていた。今いうところのヤングケアラーで、家庭内介護を続けていて、17歳から14年くらいの間(?)生きる世界がなかったと。その彼を拾ってくれた今の会社の社長が、彼に人生をくれたという。とわ子は彼とつきあいはじめ(といってもラジオ体操とファミレスだが)、急にそれまでの1年間には見えなかった周囲の景色が生き生きしてよく見えるようになった。会社の社員にもわかるくらいにとわ子は変わった。