せっかくの劇場版なのに、ようやっとFODの配信で見た「續ポルノグラファー·プレイバック」。ずっと見たかったのだ。でもやっぱり、初めのほうの激しいベッドシーンは一人で劇場で見たらどうだったんだろう。PCで見たほうがいいかも・・・。(^^;)))そしてそのとき発した木島理生のあの言葉は、官能小説家としては適切なんだろうか、(;´Д`)なんて。まあ脚本書いたのは三木監督だけど。

一作目「ポルノグラファー」、その前日譚の「インディゴの気分」に続き今回は一作目の二年半後である三作目の物語である。全部三木康一郎監督の脚本、同じキャストで。ストーリーはこれまでほとんど原作通りだったが、本作では少し改変されたところもある。でもそれで映像作品としてむしろよくまとまり、そして描きたい心情がよりよくわかるように思う。

 

理生が実家に戻ってから2年半、アナログな性分の理生と久住春彦は、主に文通で連絡をとってきた。城戸が自分の会社(官能小説の出版社)宛てに来た春彦の手紙を理生に転送してくれていたのだ。理生は、愛する対象がいないと書けなくなる人らしい。鬼島蓮二郎として何冊も本を出していたのに筆がぱったりと進まなくなったのは、やはり城戸が結婚して子供が生まれた頃だからだ。理生は否定しているが城戸は内心気にしている。かといって妻帯者になった城戸はもう理生とは親密にできない。一方春彦は、自分がもっと成長して社会人となったら理生に会いに行こうと決めていた。そして理生は、春彦という対象ができたことで、またぽつぽつと作品を産み出せるようになっていた。

 

春のある日、春彦が本当に久しぶりにはるばる理生に会いに来る。駅のホームに降りた春彦は、迎えに来て待つ間煙草を吸おうとしていた理生を見つけ、満面の笑みで「先生!」と声をかける。理生はこんな顔をして振り向くのであった。

 

このときの気持ちは、少し驚くとともに、「会いたかった」「変わらないな、でも君少し大人っぽくなったね」「若くて眩しいな」、そして愛しさがこみあげてきたのだろう。それがこの表情から感じられるから、役者ってすごい。

その後、広告代理店勤務の春彦はやたら忙しいのだが、頑張って休みをとっては理生に会いに来るようになった。しかし冒頭のラブシ―ンのあと、春彦がセクシーパブのショップカード(先輩に連れていかれたらしい)を持っていたのをみて、やきもちを焼いた理生は春彦を責めて喧嘩する。喧嘩するときの迫力(理生、手を出した(゚д゚)!)を見るとやっぱり男だなあと思った。ていうか春彦は受けてるだけで理生だけ拗ねてるんだけど。

 

そして理生からも春彦からも連絡のない日々が数週間続いた盛夏、姪のための小旅行(原作では七五三のお祝い)を理生は土壇場ですっぽかす。幸せでにぎやかな家族像には足がすくんで入っていけないというややこしい性格なのだ。(その割に姪っ子には懐かれているが。)そのことで元ヤンの妹の菜月を激怒させた理生は家出する。行く当てなんてないからふっと春彦と過ごしたあのラブホに向かい、部屋で「もう潮時なのかな」と黄昏ていると、聞こえてきた争う声に部屋の外に出て、巻き込まれて再びけがをする。今度は利き手の左手の脱臼と捻挫だ。けがの原因になったスナックのママの春子と、息子の若いのにしっかりした静雄には、なぜ一人でラブホにいたのかと尋ねられ、「実は祖父の遺産を巡っておじの鬼嫁に狙われているため身を隠していた」と嘘をつく。よくそんなウソいきなりいえるなあ、さすが作家、ていうかよく信じるなあ、お二人さん。(-_-;)それでうまくこのスナックに匿われることになった。春子役は松本若葉さんで静雄役は奥野壮君。ぴったりだ。

 

スナックでは常連客達がみな春子と関係を持ったことがあるらしい。(;´Д`A ```理生も誘われるが、しっかり断る。客らは理生を春子のヒモかと思っているが、理生は「春子さんがそれでいいならいいさ」という。しかし息子の静雄は、「先生はそうならない気がする。俺、そういうの、なんとなくわかるんだ」と言う。(このあたりの事情は、作者の丸木戸マキ先生の「アケミちゃん」という作品に詳しい。)実際静雄君は店の床に掃除機をかける理生の手に触れた時にちょっと焦っていた。(;'∀')

 

一方春彦は我慢できずに理生に電話するも、おそらく充電切れでつかまらない。それで実家に電話したら菜月に「2週間くらい家出してるけど、友人の家にいるって連絡があったから、てっきり久住君のところだと思っていた」と言われる。率直な菜月だからこう答えたが、もしかして電話に出たのがお母さんとかお婿さんなら別の答えだったかもね。それで春彦は休みを工面して、GPSを頼りに理生を探しに来る。(原作とはここも違う)菜月役は小林涼子さん。彼女は何年も前の少女時代に、私がFODで最近見た「鈴木家の朝食、佐藤家の夕食」に出ていた。主演は女性カップルの鈴木家に精子提供で生まれた山﨑賢人くんで、彼女はゲイカップルの佐藤家でお父さんとその恋人と住んでいる少女だった。

 

スナックを探し当てた春彦を鬼嫁の手先と勘違いした((^^;))春子と悶着がおきるが、中に上がり込んだ春彦は、理生が静雄に口述筆記させているところを目撃して怒りと悲しみで一杯になる。これが「プレイバック」という題の表すことの一つか。「俺は、俺はがっかりしました、先生と俺の大切な思い出だと思っていたのに・・・」。事情を察した春子は、お店を休みにするからここで好きなだけ痴話喧嘩しなさいと言ってくれた。

 

理生の気持ちもわかるのだ。自分は春彦より一回りも年上だし、社会的ステイタスも高くない。いつまた書けなくなるかもわからない。なぜこんな自分でいいの?君はご両親に大切に育てられた一人息子なんだし、その相手が僕だなんて申し訳ない気持ちがする。(本当はもっと素敵な自分でいて大きな心で彼を愛したいのに。実のお父さんと分かり合えず葬式にも帰らなかったから家族にも引け目があるし、仕事でも愛でも挫折してるから自信が持てないんだよね)

でも春彦は、「自分本位で考えるのやめてくれます?」と。だって春彦はそんな理生が好きなのだから。放っておけないのだ。これはもう理屈ではない。そしてこの映画では春彦は何度も泣かされている。

出ていこうとした春彦を理生が「春彦!!」と初めて名前で呼んで引き留めた時、はっとする春彦。このときの声も滅多に理生からは聞かれない大声で野太かった。やっぱり男なんだよなあ。