胃ろう…利点と課題 | 介護付有料老人ホーム としおの里 (群馬県太田市)介護付ホーム

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胃ろう:利点と課題 患者の負担少なく、誤えん予防/取り外し難しく

者の負担少なく、誤えん予防/取り外し難しく
 口から食事をとれなくなった時、胃につながる管をつけ栄養補給する「胃ろう」。鼻から管を通す方法に比べ患者の負担が小さいといわれる一方、「一度つけたら外すのは難しい」との指摘もある。老親を介護する時、医師から胃ろうの取りつけを求められ、戸惑う家族は少なくない。胃ろうをつける時に知っておきたい背景や知識をまとめた。【有田浩子】
 広島市の学校講師の女性(51)の義父(80)は昨夏、脳の手術で入院し、鼻から管を入れて栄養をとり続けてきた。女性と義母(75)は、口から食べる訓練をしてほしいと医師に何度か頼んだが、「飲み込むときに誤って気管支に入ると肺炎になるおそれがある」として、断られた。
 その後、医師や看護師は「鼻から管を入れ続けているのは本人にとってつらい」などと、胃ろうを取りつけるように繰り返し勧めるようになった。ものを飲み込む「えん下」の機能を調べたところ、液体も固体も飲み込むことができた。しかし、病院側は「99回成功したとしても1回でも誤えんがあってはダメだ」と説明して、口から食べる訓練をしようとしなかった。
 義父は義母と2人暮らし。義母も体が弱く、退院しても自宅で義父の世話をするのは難しい。女性も当時は実父が入院して、義父の介護は不可能だった。病院からは早期の退院を求められ、「胃ろうにすれば退院後の施設の選択肢が広がる」との説明も受けた。結局、2月末に胃ろうを取りつけて、3月末に退院した。現在は、老人保健施設に入所している。
 胃ろうにしてからは、経鼻栄養の管がはずれないように固定されていた両手を動かすことができ、会話もできるようになった。女性は「選択は間違っていなかったと思う」と自分に言い聞かせているが「義父が口から食べたいと言い始めたら、どうしたらいいのか」と戸惑いも口にした。
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 胃ろうをつけるのは、次のような場合だ。
 特別養護老人ホームの常勤医、石飛幸三さん(75)によると、高齢で認知症などになると、食べ物を飲み込む反応が低下する。無理に食べようとすると誤って気管に食べ物が入り肺炎を起こし、これを誤えん性肺炎と呼ぶ。抗生剤などの服用で肺炎は治せるが、えん下障害自体は治らない。
 病院側の事情もある。政府の医療費削減の政策もあって、患者の病状が落ち着き、入院日数が一定期間以上になると、診療報酬が減るため病院は早期退院を促すことが多い。その際、えん下障害を起こさないよう、胃ろうを取りつけるように勧めることが少なくない。
 79年に米国で開発された胃ろうは当初、食道が狭くなった小児向けとして使用された。高齢者向けには90年代後半以降に広がり、現在は推計で40万人が胃ろうをつけているとされる。胃ろうをつけた後、再び口から食べられるようになる割合は、病院や介護施設によって大きく異なる。口から栄養がとれるようになったといっても、高齢の場合、若いころと同じように食べられるケースは少ない。
 また胃ろうから栄養を入れる行為は医療行為とされ医師や看護師が行う必要がある。介護職員では対応できないとされ、看護師などが十分配置されていない介護施設などでは、受け入れが難しいところもある。胃ろうをつければ、施設の選択肢が広がるといわれる一方、受け入れ数に限界があるのも現状だ。
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 胃ろうに関する情報提供を行っているNPO法人「PEGドクターズネットワーク」理事長の鈴木裕・国際医療福祉大教授は「胃ろうは生活の自立度を上げるのに有効。安易な取りつけがないとは言わないが、課題はむしろ、その後のリハビリテーションだ」と指摘する。
 鈴木教授は、介護職員でも胃ろうの管理ができるよう厚生労働省が研修を進めていることなどを指摘し「胃ろうの人にとって施設の選択肢は増えていくはず」と話している。

 ◇震災で栄養剤の生産停止--6月供給再開

 東日本大震災後では、胃ろうの患者が利用している栄養剤の生産も止まり、関係者を不安にさせている。
 生産が止まったのは、アボットジャパン社の栄養剤「エンシュア・リキッド」など。栄養剤を詰める缶容器のメーカーが被災したことが原因だ。6月までには復旧し、供給が再開される見通しだが、それまでは不足するおそれがある。
 医薬品の経腸栄養剤は、同社とイーエヌ大塚製薬の2社が市場のほとんどのシェアを占める。大塚製薬は震災後、厚生労働省の要請を受けて増産体制を敷いている。また別メーカーが医療食として類似の製品を生産している。ただ、医薬品ではないため、全額が自己負担になってしまう。
 厚労省は、栄養剤の使用を外科手術直後の患者など医療食では代替がきかないケースに最優先するよう、呼びかけている。