フランスの取り組みに学ぼう | 山田としお オフィシャルブログ Powered by Ameba

フランスの取り組みに学ぼう

 私は議員になってから、担い手づくりに焦点を当ててヨーロッパを訪ねました。それは、当時野党になった自民党が、私を「担い手総合支援新法プロジェクトチーム」の座長に指名したからでもあります。フランスが、担い手の育成策として、サフェールという、若い農業者の就農を支援する仕組みを持っていたため、それを調査することが目的でした。その際のまとめを、当時のメールマガジンに書いています(平成23年1月17日発行 210号「駆け足でヨーロッパを訪問 )。


 サフェール政策の基本は、売りに出された農地の情報が公的機関であるサフェールに届き、先行して買い取り交渉にあたることができることです。その思想は、青年農業者の就農を確保することを焦点として、21歳から35歳までに限定して、事前に3~5年の技術研修や経営研修、さらには農家実習を積んだ者だけを対象に、営農が可能な一定規模の農地と営農資金を提供するものです。農外からの新規就農だけでなく、大半は子が親から経営を引き継ぐ形が多いのですが、その場合でもこの仕組みにより就農することになるそうです。


 農地の取得にあたっては、投資目的は絶対に認められず、まず、隣接する農地の農業者を優先し、次に公募の新規就農者と交渉する、そして、既存の農業者の場合は、現に所有する農地との距離は5km以内と条件を付けています。新規就農者の場合は、取得する農地に隣接して住むことが条件になっているのです。要は、きちんとした農地の有効活用を基本に、担い手を作り上げる、定着させることを条件にしています。自立的な農業者を作ることも、思想として政策として確立しているのです。なお、米国では州によって、一般の会社の農業参入は原則認めていません。このサフェールの先買権の仕組みは農地移動の20%を占め、青年農業者への優先的売り渡しが行われているそうです。


 もう一つ、日本とは異なる環境があります。それは、農地が売却の対象として市場に出てくるのは、高齢農家はリタイアして都市や街に住むことが社会の動きになっているからです。離農年金もありますが、農地売却による所得で都市や街に住み老後を楽しむという生活の形態が歴史的にあるのです。政策的にも、都市と農村田園地帯が隔離されているという、日本とは全く異なる国づくり都市づくりがあったことも影響しているのでしょう。確かに、ヨーロッパではどの国も、農地は農業のための大切な資産という意識が強く、ゾーニングによる農村区域の設定と転用の規制があり、道路等の公共的なインフラ整備を目的とする国等による買い入れはやむを得ないものの、転用には大きな税負担を課すことで、転用を抑制しています。


 かつての日本の農村にも隠居制度がありましたが今はほとんどありませんし、農業者年金もありますが、限定的なものでしかありません。


 先日、農林水産業骨太方針策定PTの人材力強化検討チームの会議資料に、日本の農業者はいかに高齢化しているかということで、日本は65歳以上が61%、一方フランスは65歳以上が3%、ドイツは9%、イギリスは18%、アメリカは28%という各国の比較表が農水省から出されました。出席している議員に、いかに日本が高齢化しているかを印象付けるにはいい図表だったのかもしれないのですが、日本以外の国々の高齢者は離農するという社会慣習や年金制度があることへの言及や注釈が全くないものでした。今から考えると、日本はこれだけ高齢化しているのだから「会社を参入させるしか方法がないのだ」と誘導する図表ではなかったのかと疑りたくもなります。


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