国家戦略特区における企業の農地取得は認められない | 山田としお オフィシャルブログ Powered by Ameba

国家戦略特区における企業の農地取得は認められない

【農業を専業としない会社の農地取得を大々的に認める動き】


 怖れていたことが起こりました。
 国家戦略特区における株式会社の農業参入については、これまでも検討がなされてきましたが、ここに至り、参入要件を緩和して、出資比率(議決権)を現行の4分の1から過半を超える比率まで認めるよう、今国会での国家戦略特区法の改正を主張しだしたことです。農地をリースする形での会社の参入は、平成21年から認めていますし、昨年の農地法の改正で出資比率は2分の1未満(50%未満)まで緩和し、今年の4月に施行となっています。それを待たずして、特区に限ってですが50%以上までも認めようというのです。加えて、これまでは会社の事業は農業による売上高を2分の1以上として、農業関連会社であることを要件にしていたものを、2分の1未満でも認めようとしています。要は、農業外の事業を中心とする会社が、農業に参入し、農地を取得し、議決権も過半を占め、他の構成員の主張に拘束されずに経営判断ができるようにするというものです。


 これは一体どういうことなのでしょうか。
 本来的に農業生産の源である「農地」(これは他の資産と異なり、流動化せず、作物生産の源であるのみならず、国の基である国土形成の基(源)でもあるものですが)、これを会社・資本が手に入れて効率的に動かそうという発想です。



【心配は尽きない】


 農業者は、農地を相手に、気候風土に合わせ、太陽や雨の恩恵を受け、家族が相協力して、作物を育て、販売し、所得を実現し、生きてきました。利益が出なければ、それに耐えながら生きてきました。その状況は今の近代化した農業経営の現場でも変わりません。


 一方で、企業の思想は、資本が要求する利益を追求し、従業員を雇用し(場合によればアジアの低賃金の労働者を雇用しながら)、利益が出なければ、一気に生産から手を引き、従業員は解雇し、残された農地は商業や工業等の他の用途に転用することもやりかねません。


 国家戦略特区の根底にあるのは、要は、自然重視の摂理から、資本重視の摂理へと、農業・農地・農業者・家族・地域のあり方を切り替えてしまおうという発想です。確かに、これで生産力は上がるかもしれません。しかし、農地は、地域は、家族を中心とする農業者(農家)は消えてしまうでしょう。


 ましてや、現に外国資本企業の投資は制限されていません。外国企業が日本法人を設立して農地を取得して農業経営を行うことは当然避けられないのです。


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