新たな懸念は、日中韓と日EU協議の動き | 山田としお オフィシャルブログ Powered by Ameba

新たな懸念は、日中韓と日EU協議の動き

 ところで、ここにきて、新しい動きが出てきています。それは、3年半ぶりの日中韓首脳会談で、日中韓のFTA(自由貿易協定)交渉の加速化が議題に上り、いつまでに合意するという約束がなされたのではないかという懸念です。次回会合は、日本が議長国として主催するということなので、来年の秋までに、日中韓のFTA協議が急速に進むのではないかという心配です。日中韓の首脳会議には経済界の多数の企業関係者も同道していたので、そうしたことが話題になるのは当然なのでしょう。

 

 韓国は、TPP加盟にも関心があるということですが、そのTPPも米国の大統領選挙戦による制約や、米国議会の重鎮が医薬品の特許期間の問題で大筋合意の内容に不満を持っており、議会への通知や、
大統領による署名、そして議会による批准について、全く予想がつかず、ましてや再交渉を求める動きも出て来るのではないかとまで言われています。そうした中では、来年の秋までの動きは全く予想がつかないのですが、一方で日中韓も動き出す可能性があるということです。

 

 しかし、両国との交渉は容易でないと思います。同じ東アジアの隣国として、これまでも多くの農産物や加工食品の貿易を行ってきましたし、生産される作物も似ていて、大きな競争が起きる可能性があります。まして中国は、我が国に比べて農産物の価格が低く、我が国の農産物市場は一気に中国に席巻されかねません。一方、我が国にとっても大人口を抱える中国の市場は魅力でもあり、安全安心な我が国の農畜産物は、価格は高くても中国の市場では大きな評価を受ける可能性があります。また食品会社は、一挙に労賃の安い中国に移転しかねません。そして、我が国に輸出攻勢をかけてくるでしょう。状況は違うと言え、韓国との間でも同じような事態が生じかねません。


 そしてこれも報道によると、日EUのEPA(経済連携協定)交渉も急ぐべきだとする意見が出ているようです。とりわけ産業界からは強い要求があるようですが、農畜産物は、EU側からの酪農品や豚肉等の輸出拡大で、我が国との間で大きな争点になります。我が国の酪農生産は、米国・カナダ・ニュージーランド・オーストラリアに加えて、EUからの攻勢に耐えなければならなくなるのです。
 

 もちろん、これらの動きは、今すぐと言うことはないでしょうが、しかし、上記のTPP総合対策本部の基本方針にある「新たな市場開拓」「産業活性化」「チャンスに満ち溢れた日本」という掛け声からすると、政府は、世界各国との連携を進めずにおかないでしょう。


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