国内対策の柱は三つ | 山田としお オフィシャルブログ Powered by Ameba

国内対策の柱は三つ

 ところで、TPP合意に伴う国内対策の柱は、次の三つだと思います。
 一つは、経営所得安定制度の確立です。


    ・それは、関税撤廃等による輸入拡大や価格低下に

     伴う影響を緩和し、国内生産がきちんと維持できる

     対策でなければならない。


    ・もちろん、現状の規模で、被る影響を補償するだけ

     のものでは国民的な理解は得られない。規模拡大

     や技術改善などの対策を講じつつ、経営を継続で

     きる経営所得安定対策が講じられなければならな

     い。


    ・現状はコメを中心に、麦や大豆等の作物を加えた

     形での収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)が講じ

     られているが、生産者の拠出を前提として、過去の

     販売価と単収から求められる標準的収入額を基

     準に、減少分の90%を補てんするものであり、大型

     機械等のストが上昇して所得を減らしているような

     経営を補てんする仕組みになっていない。評判が悪

     かった規模要件はさすがに廃止したものの、認定農

     業者等を対象にしているため対象農家は限定され

     ている。これでは安定的な経営所得安定対策とは

     言えない。もちん、専業的な畜産や野菜農家

     ほんど含まれてない。


    ・また、今後の対策で、コメや畜産や野菜専業農家を

     ひとくくりにして経営所得安定制度にしてしまうのは

     現実的でない。肉用牛肥育や養豚や酪農は既存の

     経営安定対策の抜本的な充実を図ることが必要だ

     し、11~13年で関税撤廃がなされる養鶏等は、飼料

     穀物対策も含めて既存制度の見直し・強化が必

     要。


    ・また、コメ等は、輸入拡大分の相当数量を備蓄に繰

     り入れ需給均衡を図ったうえで、価格の変動やコス

     ト増に伴う経営所得安定制度の抜本的な強化が必

     要。その際、これまで検討がなされている収入保険

     制度との関連が出てくるが、農業共済と連動する形

     での収入保険制度がそう簡単に設計できるのかど

     うか、平成29年には法改正を行い、30年からの生

     産調廃止と、その際必要になる自由な価格形

     成の仕みを展開できるのかどうか、疑問がないと

     はいえない。とすると、現行のナラシの制度を改善し

     て、コストの合理化目標等も勘案した形での所得補

     てんの仕組みを考えてゆかねばならない。


    ・特に今後は、日中韓、日EU、更にはアジア諸国等と

     のRCEP等のEPA協議が進むとみられるが、それに

     対処するためには、安定した経営所得安定制度が

     不可決である。これは若干形は違うが、米国やEU

     では定着した仕組みになっているのである。こうした

     仕組みがなと、毎回の交渉は苦労の多い行き当

     たりばったりにってしまいかねない。


  二つは、国産農産物の需要拡大・輸出対策の制度化です。とりわけ、短期間で関税が撤廃される果実等は、輸入品との競合が激しくなりますし、輸入品に押されて国産品の価格低下も生じかねません。とすると、わが国が誇る高品質の果実等は、海外の需要に積極的に応えてゆかねばなりません。そのため、これまでもコメや牛乳でわが国が実施してきた、生産者拠出による消費拡大対策に加えて、海外の市場開拓も含めた輸出対策を大々的に実施する制度が作られてもいいのだと思います。


 三つは、国民合意の形成です。
 というのは、農業者が、約440品目にも上る関税撤廃に驚きと怒りを隠せないでいるにもかかわらず、新聞各紙は、TPP大筋合意に関する世論調査として、TPP合意を評価する59%、評価しない28%、安倍内閣の支持率は46%に上昇していると報じています(読売新聞)。他紙もほぼ同様の内容でした。読者層の農業関係者の比率が少ないため、評価しない比率が低いのでしょうが、国内農業に対する国民理解が少ないのは残念です。TPPを評価する人が過半数を上回るのは、このTPPで自動車をはじめ工業製品の輸出が増えて景気が上向くことへの期待なんだろうと思います。
 それなら、今回の合意で利益を得る工業サイドから、困難を抱えることになる農業サイドの対策への理解が示されてもいいはずです。


次のページへ続きます。