安倍総理の米国議会演説に思う | 山田としお オフィシャルブログ Powered by Ameba

安倍総理の米国議会演説に思う

【見事だが、納得がいかなかったのは二箇所】


 私は深夜のテレビ中継で、米国連邦議会上下両院合同会議における安倍総理の演説を聞きました。自分のことは棚に上げて言いますが、総理の英語での演説は、決して流暢ではなかったかもしれませんが、素晴らしかったです。米国の議員は手元に紙を持っていたので、演説内容は配布されていたのでしょう。何度にもわたるスタンディングオベーションを、私も誇らしい思いで見ていました。


 ところで、私は次の二箇所だけは納得がいきませんでした。


 一つは、総理は若手議員の時、GATT農業分野交渉での農産物の市場開放に反対し、農家と一緒に抗議活動をしたことを披瀝し、しかし今となってはその勢い余る行動を反省し、TPPによる自由貿易圏の形成を推進する必要があるという論調であったことです。私は、この場面では、総理には「世界各国の多様な農業の共存が必要だ」と言ってほしかった。それが、「両国のセンシティビティを認識して」という、日本のTPP交渉参加の前提となった2年前の日米首脳会談における共同声明の理念だからです。また、その後の記者会見や自民党大会で、総理が「息を飲むほど美しい田園風景、世界に誇るべき国柄」「必ず私は日本の農業を、食を守ってまいります」「私は強欲を原動力とする市場主義経済の道をとってはならないと思います。道義を重んじ、真の豊かさを知る瑞穂の国の資本主義を目指してまいります」と挨拶されたことで、万雷の拍手で、我々も、TPP交渉参加の判断を了としたのです。


 二つは、60年も変わらずにきた農業協同組合の仕組みを、抜本的に改める、岩盤のように固い規制を、私自身が槍の穂先となりこじあけてきました、というくだりです。私は、何も米国に行ってわざわざ農業協同組合を悪く言うことはなかったと言いたい。というのは米国でも、協同組合は、弱者の協同による社会的な組織としてきちんと位置付けられ評価されているからです。もしかすると、総理の発言は、日本の農協改革は、米国の多国籍・グローバル企業等の主張や対日貿易障壁報告書等に盛り込まれた米国の意向に応えているのですよ、という報告だったのかもしれないのですが、協同組合の取り組みを評価する多くの米国議員の失望を買ったのではないかという懸念があります。これは、協同組合運動を社会的運動と評価するヨーロッパでも同じだと思います。


 ともかく、演説の原稿をまとめるにあたっては、総理は相当意見を言われたのだと思います。随所に総理の思いがうかがえました。しかし、上記二箇所だけは、総理の思いではなく、経済産業省や内閣府の思想なのだと思います。残念でした。


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