成長戦略のためだけでない地方創生の理念が必要 | 山田としお オフィシャルブログ Powered by Ameba

成長戦略のためだけでない地方創生の理念が必要

 ところで臨時国会では、まち・ひと・しごと創生本部による地域再生法の改正が大々的になされる動きとなっており、それは大賛成です。しかし、農林漁業分野で行われる法改正の内容が、これまで産業競争力会議や規制改革会議、さらには国家戦略特区諮問会議で主張されてきた、6次産業化を進めるための施設用地の農用地区域からの除外や転用許可の迅速化のための農地法・農振法の改正というのでは本末転倒だと言わざるを得ません。これでは、成長戦略を推進する経済界からの主張だけになります。


 ふるさと回帰とは、それぞれの回帰の理由は各人によって多様ですが、美しい農山漁村の環境を求め、豊かな自然のもとで家族を中心に人間性の回復を求め、村々の共同の取り組みの中でのびのびと子育てできる生活を求める取り組みでもあります。


 ですから、現在の地方を覆っている、幹線道路の沿道際の無秩序な転用、そして近年のガソリンスタンドをはじめとする各種店舗の撤退による荒廃、コンパクトな街づくりに反する郊外への市街地の拡散、中心市街地をさらに荒廃させる郊外への大規模店舗の進出等を改め、真に地域を創生する政策と事業を仕組まなければならないのです。また、この取り組みの中では、これまで地域の社会的な組織としても役割を担ってきたJAをしっかり活性化させることを念頭に置いたものでなければならないのだと思います。JA中央会の廃止は、これらの政策推進の重要な手段を失うことでもあるのです。


【JA・経団連・連合による三位一体の取り組みに学ぼう】


 ふるさと回帰支援センターは、16年前に、当時のJA全中の原田会長の「団塊の世代よ故郷に帰ろう」の提案に、当時の経団連の奥田会長、連合の鷲尾会長が呼応されて、三者一体で発足した組織です。そのときからは、確かに時代も経済も世界の環境も変わっているかもしれません。しかし、経済界が、労働界が、農業をJAを攻撃するのでなくて、ともに改革しよう、元気にしようと手を組んだことの意義を改めて回顧し、学ばなければならないと思います。


 ところで、内外情勢調査会での総理の講演記事が報道された当日の読売新聞は、1面全部を使って、敗戦後の農地改革を特集していました。記事を見た瞬間、私は思いつきました。総理は、「戦後レジームからの脱却」を農業版で行おうとしているのではないのかと。


 思い過ごしでしょうか。