「主文 被告人を懲役5年に処する。」

 

地裁における娘の判決が下された。

求刑7年に対する5年の判決なので多少は情状酌量されたのかも知れないが、弁護士が自信を持って主張していた執行猶予はつかなかった。

 

 「あり得ません。不当判決です。即刻、控訴するべきです!」

 

弁護士は強く主張したものの娘本人が「控訴はしない。判決を受け入れる。」と意思表示したため判決が確定することになった。

 

不倫相手の男に娘が性の捌け口のように取り扱われたことは一部認めてもらったが、

住宅が密集する日本で"現住建造物放火"は重く、一歩間違えば隣家など多くの死傷者を出し兼ねない許しがたい行為だとして厳しく断罪された。

 

不倫相手の男は娘の放火事件により、勤務先の会社を依願退職。

妻ともども住居を引き払い、どこかの地方へと逐電していった。

 

私も娘の判決が確定すると、ほどなくして従業員100人程度の孫会社への出向を命じられた。

破廉恥罪で懲役刑の実刑を喰らった家族を持つ人間を上場企業に置いておく訳にはいかないのだろう。

 

テレビを見れば不倫をテーマにしたドラマや話題があふれている。

雑誌もネットも不倫だ、婚外恋愛だと、まるでちょっとしたブームのようにも思える。

 

今や不倫は"背徳の恋愛"というネガティブイメージではなく、

"結婚している人の恋愛"というポジティブなイメージにすらなってきている。

 

確かに結婚していようがいまいが、素敵な異性に出会ったら心が動き、恋に落ちてしまうことはあるだろう。

 

それが人間らしさであり、配偶者以外の人間に恋してはならないというのはモラルでしかなく、モラルで人間の情欲を抑え込むなどできはしない。

 

だから私は不倫してしまうことは人間として致し方ないことだと思っている。

 

だが、一方で不倫恋愛は人間社会においては異常な状況であることは認知すべきだ。

 

情欲だから、好きだからという感情論だけで、いつまでも異常な状況を継続させようとすると歪みが生じる。

その歪みが徐々に大きくなっていき、何かのきっかけでドンと大きく破裂する。

 

不倫恋愛の破裂はその期間が長ければ長いほどダメージや影響は大きい。

 

だから、不倫はやむを得ないにしても、どこかでケジメをつけないといけないだろう。

通常の恋愛には結婚というゴールがあるが不倫には別れというゴールしかない。

配偶者と別れるか、不倫相手と別れるかの二者択一である。

 

 「配偶者とも不倫相手とも別れたくない。」

 

その感情だけを優先して先延ばしにしたところに不倫事件や騒動がある。

 

 

私は妻の10年近くにわたる不倫には目をつぶった。

妻が不倫に走った原因の半分は自分自身にもあるからだ。

そして、それは娘の不倫にも影響を及ぼしてしまっていた。

 

だが、私は崩れかけた家庭、家族を今一度再建していくと心に誓った。

娘は30歳になれば戻って来る。

もちろん、前科者のレッテルはそう簡単に剥がれないかも知れないが、私は娘を守っていく。

 

妻との関係も一からやり直して、真のオシドリ夫婦になれるよう尽力する。

 

ただ、そのために失ったものは大きい。

 

私は声を大にして言いたい。

その不倫恋愛、いつまで続けるつもりなのですか?

 

不倫であろうとなかろうと、恋愛に終わりはつきものなのですから。