第二次安倍政権に期待する | 田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba

第二次安倍政権に期待する

第二次安倍政権が誕生して間もなく1ヶ月になる。世の中は大変明るくなり、株価も上がり円安もどんどん進んでいる。素晴らしいことである。安倍総理はこれまで我が国が十数年頑張ってきた国の支出を減らそうとする緊縮財政路線を捨てて、積極財政に打って出ようとしている。国債の発行に枠を設けずに景気がよくなるまで無制限に国債を発行して公共事業を実施しようとしている。そして景気がよくなれば税率を上げることなく税収が増えて、国の財政も勝手に立ち直るというものである。正しい方向だと思う。


我が国は政府の借金が1千兆円を超え、これ以上借金が増えれば国の財政が破綻すると言われ、この十数年緊縮財政の方向で国の財政を建て直し、景気を回復させようと努力して来た。しかしこの間我が国の借金は増えるばかりであった。公共事業は15年前に比べれば半分以下になっているのにである。十年以上努力しても全く改善の方向性が見えない政策は多分間違っているのだ。歴史的に見ても緊縮財政の方向で国が再生した例はないという。国が再生するときは必ず積極財政なのだそうだ。


緊縮財政理論は至極もっともに聞こえる。しかし理論は現実の裏づけがあって初めて正しいことが証明される。どんな精緻な理論も現実が伴わなければどこかに欠陥があるのだ。経済運営についてはこれまで我が国政府が実施してきた緊縮財政理論の対極に積極財政理論がある。十数年緊縮財政理論の国家的実験をやったが、全く成果が得られないのだから、緊縮財政派はそろそろ白旗を揚げて積極財政派に下駄を預けてはどうか。


20年前よりGDPが減っている国は日本だけだ。これは日本国民がサボっていたからではない。政府と日銀の経済政策が間違っていたからだ。景気全体をコントロールできるのは政府と日銀だけである。この二十年で我が国は徐々に国力を落としてきた。よその国はみんなGDPが伸びているのに我が国だけがGDPが減少しているからである。GDPこそが国力の源泉である。GDPを緩やかに伸ばし続けることは政治の使命であると思う。もしこの20年で我が国のGDPがよその国と同じように二倍になっていれば、我が国のGDPは今頃1千兆円を越えていた。4兆6千億円の防衛費も10兆円を超えていたことになる。自衛隊の強化など国の守りも強化出来たに違いない。尖閣諸島でこれほどまでに中国に脅かされることもなかったであろう。しかし我が国は一体どうなってしまうのだろうという土壇場で第二次安倍政権が誕生することになった。安倍総理の積極財政政策によって我が国経済は立ち直ることになると思う。


経済を立て直しながら、安倍内閣で国の守りの態勢も立て直してもらいたい安倍総理にはそれができると思う。安倍総理は東京裁判史観、即ち自虐史観に取り付かれていない数少ない政治家の一人である。自虐史観に取り付かれている石破茂氏のような人が総理大臣になっては国の守りが改善されることはないと思う。意外に思われるかもしれないが、石破氏は靖国神社に参拝したことはなく、これからも参拝するつもりはないと明言している人だ。そのような人が総理では自衛隊の精神的支柱は得られない。また歴史認識で諸外国から論争を仕掛けられた途端に圧力に抗することが出来なくなる。自民党政権なら誰が総理でもいいというわけではなく、安倍政権でなければ駄目なのだ。


自衛隊はいま専守防衛 で、ほとんど攻撃能力を持たないが、攻防兼ね備えた諸外国の軍と同じような戦力構成にしていく必要がある。攻撃力を持たない軍は抑止力にはならない。また集団的自衛権の行使はもちろん、自衛隊が国際法で行動できるように法体系も見直していく必要があろう。国際法は禁止規定である。禁止されている事項以外は何でも出来るのが諸外国の軍である。これに対し自衛隊は、他の官公庁の行政事務と同じ扱いで動く。自衛隊は根拠規定で動くのだ。自衛隊法などに任務が定められ、あらかじめ命令が付与されたことだけしか出来ない。テロ対策特措法でインド洋に給油のために派遣された海上自衛隊は海賊に襲われている商船を助けることは出来ないのだ。よその国の軍であれば直ちに海賊を撃退できる。自衛隊が国際法で動くことが出来れば、現在の尖閣における日中間の問題も起きていなかったであろう。


独立国は自主防衛が基本であるが、我が国はいま自分の国を自分で守れない。現在の自衛隊はアメリカの継続的な技術支援がなければ動けない。アメリカ製の戦闘機、護衛艦、ミサイルシステムなどを使っているからだ。主要な兵器は国産にしなければ自衛隊は自立できないし、我が国も自立できない。また暗号、敵味方識別装置、GPSなどもアメリカのものを使っているので、自衛隊の戦力発揮はアメリカの手中にあるといって過言ではない。諸外国では主要な兵器は国産を追求している。外国の兵器を使っていればその国との外交交渉で立場が決定的に弱くなる。だから多くの国は外国から兵器を買っていれば、同じだけ売って立場が弱くならないように配慮している。しかし我が国の場合は武器輸出三原則というものがあり、買ってくるのはいいが、売ることはだめということになっている。これも見直しが必要である。当然アメリカはアメリカの利益のために日本の現状をこのまま維持したいはずだから、見直しに当たってはアメリカとの摩擦が生ずることも覚悟しなければならない。


核武装も日本では議論することさえ難しい。しかし、核武装しない方が核武装するよりも国が安全だなどという理屈は我が国以外では通用しない。我が国では、我が国が核武装することが如何に不利であるかの理由が山ほど述べられるが、アメリカなどの核武装国の意見を代弁しているだけである。すでに核武装をしている国は、もうこれ以上核武装国を増やしたくないのだ。国際政治を動かしているのは核武装国であるからだ。アメリカの核抑止力は我が国を確実に守ってくれるのか。非核三原則についても見直しが必要であると思う。


安倍総理が第一次安倍内閣で「戦後レジームからの脱却」と言ったが、言うは易く行うは難しである。戦後レジームで利益を受け続けている我が国の学会やマスコミあるいは日教組など左翼政治団体はこれに頑強に抵抗するであろう。また米中韓など諸外国も現状を維持したいに違いない。安倍総理の前にはいばらの道が続いている。しかし一歩後退、二歩前進、長期戦を覚悟して、是非とも不退転の覚悟で頑張ってもらいたい。第二次安倍政権に大いに期待している。