情報戦争の時代 | 田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba

情報戦争の時代

国際社会を見ると、世界中の人たちが皆豊かに暮らせるほどの富や資源は準備されていない。そういう中で世界各国の首脳は、とにかく自分の国だけは豊かに暮らしたいということで、富や資源の確保に血眼になっている。よその国のことなどにかまけている余裕はないのである。国際政治の本質は何かといえば、富と資源の分捕り合戦なのである。「日本列島は日本国民だけのものではない」と言った宗教家のような総理大臣がいたが、そんな甘ちょろいことを言っては、日本列島が中国人などに乗っ取られてしまう。それは「日本列島を中国にくれてやる」と言っているに等しいのである。


第二次大戦までの世界は、軍事力を直接使って富や資源を分捕りに行った。しかし現在はそういう時代ではなくなった。軍事力を直接使わない代わりに、ウソ、デマ、捏造の情報を流して、富や資源が自分の国に還流するように、情報操作が日常的に行われているのである。現在は情報戦争の時代である。十分に注意しておかないと、情報操作によって、合法的に富や資源が分捕られてしまう。


一国の大統領や総理大臣などが発する言葉は、それぞれの国が得をしたいと思って発している言葉なのである。決して正しいことを言っているわけではない。言葉の裏にある真意を見抜くことが必要である。一昨年の4月にアメリカのオバマ大統領が、チェコのプラハで、我が国では核廃絶宣言と言われている演説をした。我が国のマスコミも鳩山総理も、「アメリカも核廃絶に向けて動き出した、我が国の非核三原則は正しい」と言って、はしゃいでみせた。しかしこれを核廃絶宣言と受け取るのは間違いである。オバマ大統領の真意は何処にあるのか。それは、これ以上核保有国が増えると、すでに核を保有している核クラブ参加国の国際社会における発言力が低下するので、核保有を目指している国を牽制することを狙っているのである。だからオバマ演説の3ヵ月後に決定されたアメリカ合衆国の次年度予算では、核弾頭開発関連予算が12%も伸びているのである。


8月24日、中国の呂克倹経済商業担当公使が、中国の重工業の社長などを連れて、佐藤雄平福島県知事に面談に行った。新聞によれば、呂克倹公使は、「中国の会社は、福島の復興に最大限の協力をする」と言ったそうだ。これも親切心で言っているのではない。福島の復興に当たっては、中国の会社にも儲けさせてくれと言っているのだ。そしてこれをきっかけとして、中国は福島県の合法的乗っ取りを狙っている可能性もある。外交とはそういうものだ。国際社会は腹黒いのである。日本国民は善意の国民性を持っており、それ自体は素晴らしいことであるが、国際政治にかかわる政治家や外交官までもが、善意のみで外交交渉に臨んでは、やがて日本は潰れてしまう。



国際社会を動かしているのは核保有国である。核を持たない我が国は、核武装国が決めたとおりにカネを出し、核武装国が決めたとおり国際貢献させられているだけである。核兵器の恐怖が喧伝されるが、核兵器は今後二度と使われる可能性はない。しかし、(核兵器を)持っているか持っていないかで、国際社会を動かす発言力には天と地ほどもの開きがある。核武装しなければ、国際社会を動かす側には回れないのである。だから世界の政治リーダーは、チャンスがあれば核武装しようと思っている。唯一の例外が日本の政治リーダーたちである。

外交交渉でも軍事力が弱ければ、発言は無視されるだけである。前原元外務大臣が昨年モスクワに行って、勇気を振り絞って、「北方領土は日本のものだ」と言った。しかし発言は無視されて終わりである。菅総理が「メドベージェフ大統領の北方領土訪問は許せない暴挙だ」と言った。しかし、これも無視されておしまいである。ロシアに対して軍事的に圧倒的に劣勢であり、核武装もしていない日本の大臣どもの言うことなんか放っておけというのがロシアの対応である。


軍事力は第二次大戦までは戦争をやるための道具であった。しかし現在では、相手国を外交交渉のテーブルに引きずり出して、話し合いで物事を解決するための道具なのである。軍事的に対等な関係があって、初めて外交交渉が成立するのだ。ソフトパワーの重要性を強調する人もいるが、軍事力というハードパワーがあってこそ、ソフトパワーが効果を発揮できるのである。


外交交渉は、相手国の国力を弱体化させ、自分の国を相対的に強くするために行われる。相手国の核武装を封じれば、相手国を弱いままにしておくことが出来る。自分の国を自分で守る態勢を造らせなければ、軍事的に威圧して、要求を吞ませることができる。すでに核武装している国は、我が国の核武装を封じるために、あらゆる情報戦争を仕掛けて来ている。我が国では、「核武装などと軽薄なことを言っている」とか言う評論家や学者がいるが、彼らは、すでに情報戦争に敗北しているのである。どちらが軽薄なのかはよく考える必要がある。福島の放射能の馬鹿騒ぎも、情報戦争を仕掛けられていると考えるべきである。これに負ければ、原発反対、核武装なんかとんでもないということで、我が国は今後とも世界の一流国にはなれないのである。しかし現状を見れば、我が国は総理を初め多くの政治家が、喜んで敗北を求めているように見える。