武器輸出について考える | 田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba

武器輸出について考える

アメリカが台湾に、ペトリオットミサイルシステム(PAC3)×114基と、UH-60ヘリコプター×60機の売却を決めた。しかし、台湾が求めていたF-16戦闘機と攻撃型潜水艦の売却は見送りになった。これは、台湾に防御能力を与える一方で、攻撃能力は持たせないという、アメリカの意思が働いていると思う。攻撃能力を持たなければ台湾は、これをアメリカに頼ることになり、対米依存度が高まることになる。攻撃能力を台湾に与えないことは、アメリカが中国に配慮した面もあるが、台湾を自立させずアメリカの庇護下に置きたいというアメリカ流のしたたかな計算があるものと思う。


世界の主要国は武器輸出により、輸出相手国への影響力を行使しようと考えている。ある国が武器を購入すれば、その維持整備に、武器生産国の協力が必要となる。部品などの供給を受けることは不可欠であるし、技術支援を受けることも必要となる。従って、武器生産国は、輸出相手国の軍事能力に多大な影響を与えることが出来るのである。これは、ひいては他の国策への影響力も確保することになり、外交交渉における大きな力となる。


近年では戦闘機、護衛艦、ミサイルシステムなどの能力の半分以上は、ソフトウェアが占めていると言ってよい。ソフトウェアは如何なるコントロールも可能であり、極論すれば「5年後にはシステムが動かない」という機能を、あらかじめインプットすることだって出来てしまうのである。武器輸出には、単なる金儲けのみならず、その先には国際社会における国力の増大が隠されているのである。だから、世界の主要国は自国の武器を輸出するために一生懸命努力している。外国に駐留する駐在武官の任務は、軍事情報などの収集すなわちスパイ活動とともに武器を売ることも重要な任務になっている。


しかし、我が国には雁字搦めの武器輸出3原則があり、国産の武器を外国に輸出できないことになっている。我が国では、武器を売ることを「死の商人」とか言って忌避するが、武器を売ることを「悪」だと決め付けることは、中学生レベルの判断力と言って良いであろう。武力によって国際社会の安定が確保されており、武器はそのための不可欠の道具なのである。我が国も、より積極的に国際社会の安定に貢献するのであれば、武器輸出を考えるべきである。



それは、更に我が国の国際社会における影響力を強化することになる。



我が国は、雁字搦めの武器輸出3原則によって我が国の国力を弱めている。国力をみすみす失うような政策を長年にわたり国策としている国は我が国だけである。

いま、我が国には40兆円を超えるデフレギャップが存在する。経済学者によれば、デフレギャップがある限りハイパーインフレに陥る可能性は無いとか。私はこのようなときこそ、我が国の防衛体制を強化するために国産戦闘機の開発をやってはどうかと思っている。国産でなければ世界最高性能の戦闘機などを持つことは出来ない。各国とも自国保有のものよりは、1ランク2ランク性能の落ちるものしか輸出許可を与えないからである。戦闘機を造るには開発生産のために6,000社以上もの会社が業務に参画することになる。景気対策のためにも一般の土木建設工事とは違った裾野の広い需要が喚起できるのではないかと思う。


景気回復が出来なければ、いくら事業仕分けに頑張っても800兆円もの借金は返せない。