何のための訓示なのか | 田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba

何のための訓示なのか

1/13 昼のニュースを見ていたら自衛隊高級幹部会同における、鳩山総理と北沢防衛大臣の自衛隊幹部に対する訓示の内容について簡単に報道されていた。


鳩山総理は、日米同盟が日本を守ってきたことについて「アメリカに感謝しなければならない」と言っていた。アジア共同体構想や普天間問題などで、アメリカの態度を硬化させたと思っている鳩山総理は、アメリカへのゴマすりの意味で、お追従を述べたのであろう。極めて政治的な意味合いを持った言葉であるが、これは自衛隊幹部を前に言うことなのであろうか。


総理は、「自衛隊幹部の諸君にとって、最も大事なことはアメリカに感謝すべきである」と言っているのだ。「日本の平和が保たれたのはアメリカのおかげであり、決して諸君たちが頑張ったからではない」と言っているように私には聞こえる。


総理は、何のために自衛隊幹部を一堂に集めて訓示をするのか。


それは、自衛隊の士気を高揚させるためではないのか。しかし、外に対しては異常なほどの配慮を示す総理が、自衛隊に対してはほとんど配慮を見せない。外面をよく見せるために身内に対して我慢を強いる最高指揮官に自衛隊幹部は如何なる感想を持つのであろうか。今回の鳩山総理の訓示は自衛隊の士気を低下させただけである。


指揮官は、部隊を強くするために常に部隊の士気の高揚に努めなければならない。自衛隊の観閲式など、当然最高指揮官である総理が出席する行事に欠席を続けながら、やっと自衛隊に来たと思ったら隊員たちを前にアメリカに感謝しろでは自衛隊の立つ瀬がないではないか。



一方の北沢防衛大臣はといえば、「隊員が、大臣や政務三役の許可を受けないで、部外に対し意見を発表することは文民統制上許されない」という訓示をしている。この人は、一体、文民統制をどのように理解しているのだろうか。機会があれば議論してみたいものだ。自衛官の発言を封じたいとしか思っていないようだ。


中国や北朝鮮じゃあるまいし、自衛隊の部隊指揮官が講演を依頼されたときなど、いちいち政務三役の許可を受けろと言ったら業務が停滞するだけである。みんな萎縮し、結局は講演を受諾することも面倒になり、国民と自衛隊のつながりが悪くなるだけである。各部隊指揮官だって、政府方針を真っ向から否定したり、大臣の発言や行動を直接的に批判したりはしないであろう。そのぐらいのことは自衛官だって心得ているはずだと思って、好きなようにやらせたらいいのだ。


部下をのびのびと行動させることが出来ない指揮官は、結局は自衛隊の弱体化に力を貸していることになる。最も、北沢防衛大臣の頭の中には、自衛隊の精強化が大臣の責任であるという認識は無いようだ。政治的に問題さえ起きなければ自衛隊の弱体化なんか知ったことかと思っているに違いない。


もともと、我が国の安全保障について、関心の無い人だから止むを得ないことかもしれないが、これが我が国の大臣のレベルかと思うと寒心に堪えない。軍の最高指揮官である、総理大臣や防衛大臣の訓示がこれほど虚ろに響く国は、我が国以外にどこにあるのだろうか。