愛し合っている2人がセックスをすると、男女ともに、オキシトシンというホルモンが大量に分泌することがわかっています。オキシトシンは「愛情ホルモン」「抱擁ホルモン」などとも呼ばれ、人間同士の親密性を増幅させ、幸福感をもたらすといわれています。愛情や信頼を維持するために重要なホルモンです。ストレスを緩和する作用もあるといわれています。逆に好きでもない相手とするセックスではオキシトシンはあまり分泌されません。

 

実はちょっとしたスキンシップでも、オキシトシンは分泌されます。オキシトシンが分泌されることで、相手への愛情がさらに深まると、軽度なスキンシップでもさらに大量のオキシトシンが分泌されるようになります。要するに、スキンシップは、とればとるほどとりたくなり、とらなければとらないほどとりたくなくなるものだということができます。

 

「もう何年もセックスをしていないけれど、夫婦どちらにも不満はない。お互いに愛している」というカップルもときどきいますよね。しかし、そういうカップルによくよく話を聞いてみると、いわゆる生物的な意味でのセックスという行為はしていないものの、普段からよく会話し、ハグをしたり、キスをしたりという軽いスキンシップはむしろたくさんとっていることがわかります。

 

1回のセックスで得られるスキンシップの量を100ポイントとした場合、ハグなら10ポイント、キスなら20ポイントくらいでしょうか。すれ違いざまにちょっと肩を触るくらいなら5ポイント、腰を触るなら5ポイントくらいでしょうか。そうやって、小さなスキンシップを重ねることで、セックス1回分以上のふれあいを、彼らは継続的に実感しているのかもしれません。

 

セックスレスの期間が長引き、「今さらどうやって関係をつくり直せばいいんだろう」「恥ずかしくって今さらセックスに誘うなんて無理」という状態にまで行ってしまった夫婦もいるかもしれません。一度そうなってしまったら、いきなり無理してセックスをしてもただのストレス。そんな場合は、小さなスキンシップから積み重ねていき、徐々にオキシトシン分泌を復活させましょう。

 

妻が夫の気を引くために、エロティックな下着を身につけるという作戦もあるようですが、それは本来すべきこととは180度真逆の、間違った努力です。瞬間的には効果があるかもしれませんが、すぐに飽きてしまうでしょう。激辛ラーメンや激辛カレーにはまっても、すぐに物足りなくなって、どんどん唐辛子の量が増えていくのと同じです。

 

一度セックスに構造的な刺激を求め始めると、きりがなくなってしまい、しまいには変態プレーに走るとか、極端な場合薬物に頼るとか、強烈な刺激がないと物足らず、セックスそのものを楽しめなくなってしまう危険性があります。

 

セックスの「良さ」というものは2人の親密性からくるもののはずなのに、たとえばアダルトビデオでは第3者の視点からセックスを描かなければならず、ゆえにどんどん構造的な刺激を求めるようになり、現実にはあり得ない場面設定やプレーに走るのでしょう。むしろ登場人物の親密性が描かれた小説のほうが本質的に官能的だったりするのはそのためかと。

 

「私たち、セックスレス?」と思っても、焦らずに、少しずつ、会話、アイコンタクト、そしてスキンシップを増やしていくことが大切です。

 

 

※全国のFMラジオネットワークJFNの「OH! HAPPY MORNING」6月8日に放送した内容を掲載しています。