昭和に流行した、「企業戦士&専業主婦」という役割分担は、サッカーに例えるならば、夫がオフェンスで妻がディフェンスというように役割を明確にしたフォーメーション。それぞれに専門性が高まるメリットがあるが、お互いに代わりがきかないというリスクがある。それに対し、共働きというのは、二人でオフェンスもするし、二人でディフェンスもするというフォーメーション。どちらかがダウンすれば、戦力は当然半分になるが、一応オフェンスもディフェンスも続けられる。

 たとえ、「企業戦士&専業主婦」という夫婦においても、夫が妻を喰わせているのではない。妻がしっかりディフェンスしてくれているから、夫がオフェンスとして得点してくるだけである。チームワークで勝利していることに代わりはないのだ。共働き夫婦の中にはどっちの収入が多いかで家庭の中での発言力が変わるみたいなことがあるというようなことを聞くこともときどきあるが、それってどうなんだか……。二人の収入は、それぞれが独立してひとりの力で稼いだわけではなくて、お互いの協力があってこそ稼げたものであるはず。二人の収入の合計が、二人のチームワークの成果であるということ。オフェンスとディフェンスのバランスの違いでしかない。二人のうち、どちらがたくさん稼いだかなんて比べても意味がないと思う。

 子育て真っ最中で、十分に仕事で力を発揮できなくて、忸怩たる思いをもっている人たちも、もっと自分の社会的存在意義に誇りをもってほしい。少なくとも夫婦の間では、どちらの稼ぎが多少多かろうと、どちらが偉いわけでもなく、安定した収入が得られるのも、子どもが健やかに育ってくれるのも、すべては二人のチームワークの成果だととらえたほうがうまくいくはずだ。

※「オレが稼いできているんだから、オレが一番偉いんだ」みたいな勘違いについては、All Aboutのコラムでも書いたので時間があったら参照願いたい。
・「父親の威厳ってなんだ?」http://allabout.co.jp/gm/gc/444573/
(このコラムの中では、働く夫と戦況主婦の夫婦を、オフェンスとディフェンスではなく、選手とマネージャに例えているけど)