9月に入りましたね。まだまだ暑いんですけど、ふと見上げる雲に秋の気配を感じるようになりました。
一方でこの時期、学校に行きたくても行けない子どもたちが増える現実があります。今日は、そんな子どもたちとそのご家族へのまなざしを、ちょっとだけ転換してみたいと思います。
学校に行けない、行かないことを「不登校」と呼ぶわけですけど、字面からしてネガティブな印象を与えますよね。
でも、社会的にとらえられている不登校の概念をいったん脇に置いて、学校に行きたくないという子どもやご家族には世の中がどんなふうに見えているのか、毎日がどんなふうに感じられているのかということに、思いをはせてみてほしいんです。
それを理解するヒントになりそうな本を今日は紹介します。「ホームスクール&ホームエデュケーション家族会」という団体が出版した『わたしたちのホームスクール』です。一般の書店では流通していなくて、Amazonの電子書籍として出版されています。
ホームスクール、ホームスクーリング、ホームエデュケーション・・・・・・いろいろ呼び方はありますけど、聞いたことがありますか?
要するに、学校に行かずにおうちで学ぶという選択のことです。
海外の多くの国ではこれもひとつの学び方だとして、正式に認められています。
日本でいう教育委員会みたいなところとご家庭が連携して、学校に行かなくても社会で生きていくために必要なことを学べるように、その子に合った学び方をコーディネートしてくれるんです。
「不登校だから選ぶもの」ではなく、「安心できる学びを、自分たちで築く」積極的な選択肢として「ホームスクール」という概念を知ってほしい、というのが『わたしたちのホームスクール』という本のメッセージです。
その姿勢の根っこには、「なんでも学びになる」という柔軟な思考があります。料理や掃除、買い物さえ学びに変える。子どもの興味を出発点に、生活のすべてが学びの教材になる。そうした日常の中にこそ、子どもの主体性が育まれるのです。
ところがふだん、不登校児童の増加がニュースになるたび、どうしても「問題」として扱いがちです。
そこで、「不登校」を「ホームスクールという学びのはじまり」として受け止め直してみませんか?
学校に行かない、違和感を抱く、それは「その子の学びの入口がここじゃない!」というサインかもしれません。
そんなとき、この本にあるように、子どもの声と好奇心を起点に、親子で「何を、どう学ぶか」を探る時間をつくってみる。
例えば、一緒に自然観察をしたり、本を読んだり、好きなことに没頭したり。
その中で、“学び”とはテストの点数ではなく、「心が動く瞬間」であることを再発見できるのではないでしょうか。
そうやってその子なりの学びを探究していくうえで、「学校のこの授業は受けたいな」みたいなことがあれば、そこだけ学校を利用するということも、もっと柔軟にできるようになればいいと思います。
この秋、もしみなさんのまわりに「行きたくても行けない子ども」がいたら、どうか焦らず見守っていただきたい。
「行かない」ことの理由を解明しようとするのではなく、子どもが何を語り始めるのかをしばらくじっと待ってほしい。
実はこの本の帯に推薦文を寄せさせてもらいました。
「『勉強しなさい』と言うより、『空が青いね』と言うほうがよほどいい。」
これ、私が考えたのではなくて、本のなかに出てくるご家族の言葉として出てくるんです。
ここに、子どもの学びとか、親子関係とか、生きている意味とか、すべてが凝縮されているように感じました。
そういう場面に気づけるのがホームスクールの魅力なのかなとも思います。
「不登校」を「ホームスクール」と積極的に言い換えてみる。
「あの子、不登校なんだって」ではなくて「あの子、ホームスクールにしてるらしいよ」って言ってみる。
そんなところから、社会が変わっていったらいいなと思います。
※2025年9月4日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。