ごきげんよう。わかめです。


 前からやろうと思ってついぞやっていなかった劇しんの感想やら考察やらを好きなように述べるブログです。


 映画によっては感想が薄かったり、そうかと思えばタイムテーブルが載っていたりします。やりたい映画をやり切ったら途中でも辞めるかもしれません。


 記念すべき第一回は……全ての始まり、1993年「アクション仮面VSハイグレ魔王」映画クレヨンしんちゃんの第1作目である。

 監督は本郷みつる氏。音楽は荒川敏行氏。上映時間は1時間32分54秒(Abemaでの時間)







 ※ネタバレ注意ですよ。









 物語はアクション仮面の撮影中に事故が起き、撮影現場に忍び込んだハイグレ魔王がアクションストーンを盗むところから始まる。一方かすかべの子供たちの間では全種類集めるとアクション仮面の変身セットがもらえるチョコビについてくるアクション仮面カードを集めるのが流行っていて、しんのすけが幻の99番を引き当ててしまう……


 というあらすじである。


 まず、映画の入りが渋過ぎる昇天


 戦国までの劇しんの全てに言えることだが、こども向けに作られた映画とは思えない。そのレベルの渋さだ。テーマの深さや物語の筋というよりは、演出とかネタとかが見せ方の面で本当に子供に伝わるのか? というものばかりなのだ。子供は多分下ネタとかでギリ笑える感じだろ。しかもその下ネタすら子供にわかるんかいオエーといったものも紛れている。とにかく監督の好きなように描いている感が強い。


 それでは好きなところをツラツラと並べていこうと思う。


 最初の「東映」の画面からジリジリと音楽が掛かり、バンッと夕陽が現れる! いやはや、痺れるねぇ。そしてこれを見て思った。そりゃあ、この入りを見た後の劇しん監督たちは、勘違いするだろう。ここまでやって良いと。

 それから、第1作目からアクション仮面にフォーカスした映画という点もなかなか攻めていると思う。劇しんが方向転換をしてから普段のメインキャラクター以外に焦点を当てた映画がめっきりなくなってしまったから、その感覚に慣れていた私にはかなり新鮮だった。しかも、そのアクション仮面は架空の存在ではなく、並行世界で実在しているのをこっちの世界でドラマを撮影するために来ているという衝撃の事実が明らかになる。郷剛太郎の素顔(サングラス付き。目元は映らない)イケメンすぎるを。知らんけど、この映画がきっかけ(……なのか?)でしんのすけとアクション仮面は知り合いという設定が普段のアニメでも生きている。映画版ジャイアンは普段のアニメには引き継がれないという暗黙の了解があるのに対し、これもなかなか斬新だと思う。

 敵は元祖劇しんの敵といった感じで、ボスはオカマのハイグレ魔王。中間管理職のハラマキレディース。冷酷非情なホモのTバック男爵。ハイグレ魔王はしんのすけが一瞬女と間違えるほどの美貌という描写がある。しかし結構気性が荒くて、ほんの少しでも口答えをすると怒鳴り散らすという悪癖がある。だか何個かお気に入りのセリフがある。しんのすけに対する自己紹介が「私は可愛いお人形」というのは芸術点高いと思う。だがピアスは片耳でしかも左耳。案外男性脳だった。アクションシーンでは雄々しく戦う姿が見られる。しかし最後の「あんた達みたいな強い男の子がいない時また来るかもね」というセリフでやはりオカマだと分かるのだ。

 性格は結構悪いが、ハラマキレディースは地味に有能で、北春日部博士の基地を突き止めメインキャラクターのほとんどをハイレグ姿に変えてしまう。このとき、成人男性の股の部分はもっこりするように描かれていて、ハイレグ魔王も例に漏れずもっこりしているので去勢はまだしていないことが分かる。(この時のまつざか先生のハイレグ姿私も結構好きだ。というか、何気にまつざか先生の美人設定結構好きなんだよなぁ。タイプなんだよ。)

 そしてなんといっても、腐女子としては「冷酷非情なホモ」という語呂が良過ぎるホモは無視できないな。1番無能だったが、印象はバッチリ残っている。ただ、ホモっぽい描写が少なかったのがちょっと残念かなぁ。3方とも後の劇しんの敵キャラに恥じぬ癖の強さである。そして宇宙船はおっぱいの形。芸が細かい。

 アクション仮面とハイグレ魔王の決戦のシーン、鬼ごっこの始まりと言っても良いのではないかと思われる、のぼりっこ勝負。ヘンダーランドの鬼ごっこほどぬるぬるしてはないにしてもなかなか見応えのあるシーンだ。鬼ごっこは劇しんには欠かせない要素で、ほぼ全ての映画にこれに該当する(または該当すると思われる)シーンがある。私はヘンダーランドの次からはわざとそのシーンを入れていると考えている。なかなかぬるぬる動くのでアニメーターさん泣かせなのではないかと勝手に思っている。クライマックスに繋がるところに持ってくる時もあれば、日常と地続きになっていたり中盤ででてくる場合もある。多くの場合笑いで映画を盛り上げる大事な要素なのである。


 次に、今のクレしんとの違いや、繋がる点をつらつらと並べていく。


 アニメーションの作画自体は当時のアニメそのままといった感じで、日常的なシーンもふんだんに盛り込まれている。音楽も普段のアニメでよく聴くものが使われている。(おそらくこの映画から使われ始めたものもある)。アニメーションや音楽だけでいうと普段のアニメを劇場で見る感覚だと思う。特別編としてテレビで放映されていても気づかないかもしれない。

 矢島晶子さんの演技も良く聞き慣れたダミ声よりも初期の何を考えているかわからない5歳児感が強いものだ。さらにオープニングもみさえと2人で歌う、「オラは人気者」。原作の頃からみえさとの関係性は印象的だ。最近は野原一家での絆が描かれているが、初期はしんのすけとみさえという印象が強い。みさえが結構精神年齢低いのだ。初めての子育てで余裕が無いんだと思う。ハイグレ魔王を倒し、みんなに再会した時真っ先に抱きつくのもみさえである。ひろしはそれを眺める姿も映っていない。

 防衛隊もまだ結成されていないので、個々で喋っていてたまたま5人が揃うという描写はあるものの、明確に5人でつるんではいないようである。5人でよく集まっている公園の地面が土でなくアスファルトなのも驚いた。

 意外にも風間くんへのセクハラはこの頃からあった。幻の99番を手に入れたしんのすけがキスを求めるシーンがあるのである。まさおくんイジりもこの頃からあるようで、ラストのシーンでみんなの名前を呼ぶのだが影の薄いまさおくんは呼ばれない。

 そしてなんと、オープニングが粘土じゃありません。アニメーションです。逆にびっくりした。しかも曲の切り抜き方もシュールで、いきなり「パワフルパワフルパワフル全開なみさえ」のところから始まる。みさえが主役なのかと思った。しんのすけの性格って結構みさえ似なとこあるよな。

 声優ネタもある。ひろしが野球中継を見ている時に、実況から中田、高田、藤原、小桜という名字が聞こえてくる。私の記憶が正しければ矢島も聞こえた気がするんだが……。今日聞き返したら途中でしんのすけとみさえの会話が重なり聞こえなかった。とにかくこの苗字の並びを見ればピンとくるだろう。全て映画に登場する人物の声優なのである。どうしてこのチョイスなのかはちょっとよく分からんが、藤原啓治さんは他の映画や日常回でも度々名前が出たり、俳優としてテレビに映っていたりするよね。

 途中でシロが喋るシーンがあるが、エンディングにクレジットされていないし、風間くんと同じ声優だと気づく人は少ないだろう。風間くんの喋り方と結構違う気がする。


 というわけで思いつく限り色々気づいたことや好きなシーンを並べた。


 ここまで書いておいてだが、この映画に対する感想は、特に無い。ええぇポーン

 小さい頃に見ていたら特に魅力も感じなかったのではないかとすら思う。それぐらい渋くて、ニッチで、大人向け、それでいて余計なものが極限まで削ぎ落とされた映画なのだ。なので、初見殺しで、子供は置いてけぼり。岡田斗司夫が劇しんの魅力を解説する動画を見ていなければ、駄作と切り捨てていただろう。物語の大筋はかなりシンプルで、セオリー通りなのだ。それをクレしん独特の演出やネタで脚色している感じだ。だから、それを楽しまなければなかなか魅力には気づけない。

 まぁ、クレしんの原作は元々青年誌で連載されていたことは有名な話だし、監督達も子供向けに話を書くつもりは無かったのかもしれない。


 知らんけど。