私は元々髪の毛が茶色っぽかったので、茶髪にした時も、あまり変わらないねとよく言われていたが、この度、諸事情により黒染めして返って新鮮な気持ちになった。

 別に染めてないのに学校で注意を受けたりするほどまっちゃっちゃと言うわけでもなかったのだが、私は自分の髪色が好きではなかった。

 というのも、話は小学校の頃に遡る。ある日の授業中、教室に蜂が入ってきた。蜂は黒いものを攻撃するというので、授業中だから立ち歩くことが許されない状況の中、みんな頭を隠してやり過ごそうとしていた。私もみんなと一緒に頭を隠していた。
 そんな中、クラスの男子が私にポツンと言い放ったのである。
「お前頭茶色いくせに隠さんでええやん」
 今思えば、全く気にしなくていい言葉ではあるが、当時の私は一気に恥ずかしくなって、しかし蜂には攻撃されたくないしで、その言葉と蜂との板挟みになったのをよく覚えている。

 母にはよく茶髪っぽいと言われていたものの、それまで自分の頭の色を気にしたことはなかった。なので、それ以来私はその事件を思い出しては恥ずかしくなり、黒染めしたいと思うようになった。

 あれからもう10年ほど立つ。結局大学受験が終わるとともに茶髪にして、失敗したので黒に戻すという哀れな顛末を迎えた我が髪の毛達。しかしこっちの方が評判もいいし私も気に入っている。顔が白く見えやすいからだろうか。