帰りの電車での出来事
電車が止まり
隣に座っていた学生さんが立ち上がった時、
バサっと音がした
見ると、床に財布が落ちている
「あっ 落ちましたよ」
私は思わず声をかけた
でも学生さんは気づかない
私はもう一度 さっきより大きな声で
「落ちましたよ」と言い
財布を拾って渡そうとした
その時
自分でも驚くほど大きな声だったので
周りの人がみんな私に注目していた
それでも、その学生さんはスマホを片手に
素知らぬ顔で下車していいく
私は財布を手にしたまま
「落ちましたよ」とさらに大きな声を出し
学生さんの後を追って
私も下車していた
わあ、発車したらどうしようと
焦りながら
学生さんの肩たたいて
「落ちましたよ」
と言うと
その学生さんは
迷惑そうに私の顔を見る
もう、電車のドアが閉まりそう
私は
「これ、落ちましたよ」と言って
財布を突き出した
その時、学生さんは
私の顔を不思議そうに見て、財布を受け取った
私は電車に飛び乗った
セーフ
閉まるドアの向こうで
やっとイヤホンを外した学生さんの口が
「ありがとうございます」
と動いていた