肉を食べるより有益な野菜

酸化と糖化から身を守る
 
なぜ野菜は体にいいのか。活性酸素とは、私たちの体を錆びつかせ、老化させる物質で、その働きを抑える作用が『抗酸化』だ。抗酸化作用を持つ成分がさまざまな野菜に多量に含まれているからだ。
 

「野菜を食べた方が健康になれる」

そんな言葉は、皆さん誰しもどこかしらで耳にしていらっしゃると思います。野菜の持つ成分についても、「トマトのリコピンがいい」だの、「ナスに含まれるアントシアニンには抗酸化作用がある」だの、野菜を食べることの効用をめぐる言説が巷には飛び交っています。

でも、それが具体的にはどう体にいいのか、なぜ野菜を食べるべきなのか、そこまでわかっている人は、意外と少ないのではないでしょうか。

「抗酸化作用」ひとつ取っても、それが体に及ぼす効果を正確に理解している人は、それほど多くないのではないかと思います。そして、そこがわかっていないために、野菜を食べることがいかに大事なのかを今ひとつ実感できていない、そんな人も少なくないのではないでしょうか。

実感すれば、野菜を見る目が根本的に変わります。

 

野菜を嫌って偏食を続けていた家族は、しょっちゅう風邪をひいたり体調を崩したりしていた一方、野菜を好んでたくさん食べていた私は常に健康でした。

野菜を食べるか食べないかで、それほどまでに如実な違いが現れるのです。

野菜を食べることこそが健康の秘訣なのです。

 

健康のカギを握るのは「活性酸素」

ただ私は、理屈がわからないと納得できないタイプです。だから幼い頃から、「野菜を食べるとどうして健康な状態を維持できるのか」という疑問を抱きつづけてもいました。

そしてもうひとつ、大きなきっかけがあり、私は野菜を食べることの重要性に目を開かされたのです。

京都府立医科大学の大学院生だった頃、私は恩師の吉川敏一先生の研究室で、活性酸素の研究に従事していました。

活性酸素とは、簡単にいえば、私たちの体を錆びつかせ、老化させる物質です。その働きを抑える作用こそが「抗酸化」なのです。そして抗酸化作用を持つ成分は、さまざまな野菜に多量に含まれています。

 

「抗酸化成分が体にいい」ということは、今でこそ常識のように口の端に上っていますが、30年ほど遡る当時、そうした学説は一般の方々にはまったく知られておらず、研究者の間でさえ、「医者がなぜ、活性酸素のような目に見えないものを対象とした研究をするのか」と冷笑されていたのです。

今では、「植物の成分のうちでも、特に健康増進に寄与するものは、活性酸素を抑える抗酸化成分である」ということが広く知られています。

野菜を食べることがなぜ体にいいのか、その理由のひとつが、この研究であきらかになったわけです。

 

「ブルー・ゾーン」という言葉は、聞いたことがあるでしょうか。イタリアのサルデーニャ島、コスタリカのニコヤ半島など、100歳を超えるような長寿の人が特に多いことで知られる地域のことで、最近、注目を集めています。沖縄もそのひとつに数えられています。こうした地域の人々は、なぜそれほどまでに長寿なのでしょうか。

ここでも、キーとなるのは野菜です。

 

野菜にはものすごいパワーがあります。その源泉は、植物の生存戦略にあります。植物は動物と違って、逃げも隠れもできません。有害な紫外線や、土中の病原菌、害獣や害虫から、自分の力で身を守らなければならない。そのために植物は、紫外線による酸化の防止、殺菌や解毒、害虫の駆除などに役立つさまざまな成分を、自ら生み出しています。

私たちは野菜を食べることによって、そうした有益な成分を体内に摂り入れているのです。

 

また、そうした成分の中には、薬に転用できるものもたくさんあります。私たちが現在、使用している薬剤の七割以上は、植物由来であるか、もしくは植物にヒントを得ているものと言われています。

そうした事実に触れれば触れるほど、そしてその背後にある、生物としての野菜の持つ実に精妙なメカニズムについて知れば知るほど、「人は野菜を食べるべきなのだ」ということが心の底から納得できるようになります。

 

「なぜか疲れやすい」「元気が出ない」と訴えていながら、原因がはっきりしない患者さんが多いのです。こうした人々の中には、実は壊血病や脚気の予備軍が含まれているのではないかと私は疑っています。

壊血病はビタミンCの、脚気はビタミンB1の欠乏が原因で発症する病気です。どちらも放置すれば死に至ることもある恐ろしい病ですが、発症する原因もはっきりわかっており、新鮮な野菜や果物も豊富に手に入るようになった現代では、ほぼ根絶されたと考えられていました。しかし壊血病の発症事例は今もって、しかも先進国でも報告されています。そして「元気が出ない」といった状態は、それらの病気の初期症状である可能性もあるのです。

 

外食では野菜は摂りづらいのが現実ですが、「家メシ」なら、食材に何を使うかも、そのバランスも思いのままです。ぜひこの機会に、野菜を深く知り、それをおいしく食べる術を身につけましょう。それによって、思わぬ病気から逃れることもできるのです。

もちろん、積極的に野菜を食べれば免疫力も高まり、新型コロナウィルスにも感染しにくくなります。その意味でも、野菜と向き合うべきなのは今です。

 

人生後半のひとり暮らしでは、どんな食事を摂るといいか。

「細胞の炎症は、体の酸化と老化につながる。中からも、錆びない体をつくるには、抗酸化作用を持ち高いアンチエイジング効果のある赤、黄、緑といった色の濃い野菜を摂取するといい。また、キャベツ、ハクサイは、抗酸化物質のビタミンA、C、Eが豊富に含まれており、セロリ、カブの葉、トウモロコシ、アボカド、メロンなどは強力な抗酸化物質のルテインを多く含む。生で食べれば、野菜に含まれる酵素も体内に摂り込むことができ効率的だ」

 

赤、黄、緑といった色の濃い野菜は高いアンチエイジング効果が認められています。

緑黄色野菜の天然色素には、αカロテン、βカロテン、リコピン、ルテインといったカロチノイド類が豊富です。摂らない手はありません。

特に、カロチノイド類が豊富な緑黄色野菜は、ニンジン、トマト、ホウレンソウ、グリーンピース、ブロッコリー、エダマメなどです。

 

 

そのほか、キャベツ、ハクサイは、抗酸化物質のビタミンA、C、Eが豊富に含まれており、セロリ、カブの葉、トウモロコシ、アボカド、メロンなどは強力な抗酸化物質のルテインを多く含んでいます。

果物では、ベリー類に、脳と心臓を保護する抗酸化物質のアントシアニンが豊富なので、意識して食べていただきたいです。

 

ベリー類とは、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、カシス、おなじみのイチゴもベリー類です。ちなみに、リンゴ、プラム、ピーマンもアントシアニンが豊富な食品です。

生で食べれば、野菜や果物に含まれる酵素も体内に摂り込むことができ効率的です。

 

「毎日、朝はパンを食べる」「健康のために牛乳を飲むようにしている」という人は多くいます。小麦や牛乳は、多くの人が長年の習慣で毎日とっています。もしあなたが疲れ知らずの体で、健康には大いに自信があるというなら問題ないかもしれません。しかし、体になんらかの不調を感じている場合は、毎日とっている小麦と牛乳には注意してほしいのです。

いつものパンやパスタ、うどんに含まれるたんぱく質が、心と体の不調を引き起こす原因となっている可能性があります。悪さをしていると考えられるのは、おもに「グルテン」です。小麦粉には、「グルテニン」「グリアジン」と呼ばれる2種類のたんぱく質が含まれています

 

グルテンと同じような性質を持っているのが、牛乳やチーズなどの乳製品に含まれるたんぱく質「カゼイン」です。牛乳に含まれるたんぱく質のうち、カゼインが8割、残りの約2割がホエイです。グルテンとカゼインには共通点があります。私たちの持っている消化酵素では分解しきれない構造になっているのです。

たんぱく質は通常、消化酵素によって分解され、アミノ酸となって小腸から吸収されます。ところがグルテンやカゼインは、消化されないまま小腸の中に長時間とどまってしまいます。その結果、腸の粘膜が炎症を起こします。