作業記憶とは、情報を一時的に保持しながら同時に処理する能力のことで、複雑な思考・行動の基盤となる重要な認知機能です。これまで数多くのfMRIを用いた研究によって、作業記憶には前頭葉の働きが重要であることが報告されています。
 近年は、動物を用いた実験から、作業記憶などの認知機能にヒスタミンH3受容体が関与していることが報告されています。ヒスタミンH3受容体は、ヒスタミン神経終末部のシナプス前膜に存在し、ヒスタミンの合成や放出を抑制します。また、他の神経系の終末部のシナプス前膜にも存在し、アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、グルタミン酸、GABAの放出を抑制します(図1)。ネズミを用いた実験では、ヒスヒスタミンH3受容体の働きを、拮抗薬を用いて阻害することによりヒスタミンの放出量を増大させると、作業記憶が改善することが報告されています。