転記

 

平成22(2010)年11月20日(土)赤坂の料亭「金龍」で愚足凡夫は女優の吉永小百合さんにお目にかかる機会を得ました。 
 それは本当に思いがけないことでした。女優の吉永小百合さんから「泳縁」と直筆の色紙をいただのが、そもそもの縁でした。
 昨年6月号の『ぱんぽん』に掲載された拙文「水泳クロールで百メートルを泳ぐ」を読んでいただいたのです。
 吉永さんが、昨年はじめに日本経済新聞の『こころの玉手箱』というコラム記事に「泳縁」という言葉を使われました。週に二、三回はプールで二千メートルずつ泳ぐそうです。
「泳縁」は、泳ぐことで心や体を癒やし、人とのつながりを大切にする気持です。プールでは若い人が水しぶきを上げて気持ちよく泳いでいると同時に、足や膝、そして腰を痛めている人も、水中歩行でリハビリに励んでいます。家庭の主婦から定年退職後の人まで、年齢も職業もさまざまな人が来ています。そういう人の輪が広がって、気取らぬ付き合いが楽しめるところです、と書かれていました。
 吉永さんの所属するグループに私の友人(正坊地邦典さんご夫妻)がいましたから、いろいろな話が聞けました。ロケ地には必ず水着を持参して、市民プールなど公営プールに行かれるそうです。
 色紙をいただいたお礼の手紙に、
「日立市にある吉田正音楽記念館にお越しのおりには、隣接する市営の室内プールに、ぜひお立ち寄りになって、私たちの水泳教室の仲間とご一緒に泳いでくださることを夢見ています。」と、私は書きました。
 平成19年3月号の『ぱんぽん』に、前年はじめに足をケガして、プールでの歩行などで完治した喜びを書きました。そして、三年間のプール通いの成果として、「水泳クロールで百メートルを泳ぐ」を書いて、私の友人に送ったところ、友人が吉永さんに届けてくれたのです。
 その友人は、学生時代、就職してからも同じ会社で一年後輩でした。私は足を痛めて、「自己の再発見」を目的に、三年前から仏教の学習のため、築地本願寺に通いはじめたときも、偶然ながら、また学習会で会うようになりました。
「仏教学習課程三年間の卒業証書だ、吉永さんが色紙に書いてくれたよ」
 と、昨年7月、学習会の閉講式のときに持ってきてくれました。
「泳縁」は仏教の根本思想の「縁起」にも通ずるものがあります。自己の再発見は、我執のない、とらわれのない自分の発見、それは人との出会いを大事にすることでもあります。
 吉永さんからの色紙の送り状には、吉田正音楽記念館で発売している便箋が使われていました。開館五周年記念の行事で、日立に来られたときに求められたものでしょう。多忙な中で丁寧にサインをしてくださる、彼女の誠実な人柄に触れることができて、心から嬉しく思いました。
 
 吉永小百合さんの主演映画「おとうと」が日立市民文化会館で上映されたのは、今年の8月22日でした。日立市民の自主上映グループが主催して開催し、その事務局の永井孝二さんは日立電脳シニア倶楽部の知り合いでした。映画「おとうと」は大変好評でした。市民会館は一杯になり、永井さんには、多くの感想文が寄せられました。永井さんから、その感想文集を吉永小百合さんに送って欲しいと頼まれました。私は友人に文集を届けてくれないか、と相談しました。

 前置きが長くなりましたが、それが吉永さんにお会いできるきっかけとなったのです。11月3日には文化功労者の表彰を受けられた大女優に、私が会えるとは夢にも思っていませんでした。