我が家からは、隅田川花火大会が見える。
スカイツリーも直ぐそばだ。
生まれも育ちもこの土地の私にとって、
隅田川花火大会は、特になんの興味もない、
何なら、渋滞や交通機関に影響が出る、面倒なイベントくらいに思っていた。
コロナ禍で、当たり前の事が当たり前に出来なくなったり、愛犬愛猫の死、彼の病気と、当たり前に過ごしていた日常が変わってしまった今は、当たり前の事に感謝すらする時がある。
4年振りの花火、彼と一緒に見れてる事がとても嬉しかった。
彼はと言うと、退院後も頸椎のMRIを取りに行ったり、大腸CTだったり、肝受容体シンチ検査を受けたりで意外と忙しい。
散歩も少しずつではあるが、頑張っている。
お店も、お盆明けからリハビリ程度に再開予定。
その前に、 8/9 退院後 初 診察だ。
病院へ到着。
自動受付に診察券を通すと、肝胆膵外科の予約も入っている。
いよいよ次のステップかと２人で話す。
緊急手術以来の◯先生。
ちょっと会うのが楽しみだ
転移している肝臓の事もずっと気になっている。
いつも渡されているブザーが鳴る。
彼に、診察室の扉を開けるように言われ、勢い良く開けすぎてしまった
あっノックしてない
先生、こんにちは
手術後の時とは別人の、ぽぁんとした先生
その後、調子はどうですか？
彼は、首はまだまだ痛くて、傷周辺の感覚は無いけど、お腹は特に何も気にならないと。
「それは、良かったね」
」先生、彼、良く食べるんです！
食べている物は、こちらで入院中食べていた物を参考にしたり、本を見て作っているんですけど、
大丈夫かってくらい食べるんです！
こんなに食べて良いものなのかと思って
先生、メッチャ笑ってる。
「好きなだけ食べさせてやってっ
あんまり消化に悪いものはダメだけどね」
」苦笑いするしかない
そして、いよいよ本題へ。
チーム内外と、沢山の人達の知恵を借りながら、
今後◯さんの治療を、どうしていくのが１番良いのか、色々意見が割れたり、悩んだりしたんだよね。
迷いに迷って昨日も会議して、やっとまとまった。
結論としては、
肝臓手術前に、抗がん剤治療をする事にします！
な、なんだってぇ！！！！！
それは決定ですか？と彼。
「大丈夫。首の方の感染科の先生にも、GOサインもらったから」
」先生、そこじゃない
「◯さんの切った癌を病理検査に出したところ、
リンパに3ヵ所と、
顕微鏡で見るとね、
本当に細い血管の中に、
逃げ足の早い癌がいるんだよね
」
」逃げ足の早い癌ってなんだ？
この時、抗がん剤と言うパワーワードにやられて聞けなかった
聞いたところで分からないし、
やる事は一緒だと思って未だに聞けずにいる。
「首の菌の事と、輸血量も結構多かったし、
先に薬でコイツをやっつけてから切った方が良いと言う判断に。
首が落ち着くまで待ってたらもったいないからね」
」だから、軽いんだってば
先生、肝臓はほっといて大丈夫なんですか？
この前、検査したみたいなんですけど、、、
「あれ？やったっけ？
ちょっと待って、あぁこれだぁ。
前回の画像から2ヵ月以上経ってるからねぇ
少し大きくなってるけど、抗がん剤で小さくなるでしょ」
」またまたショック！！！育ってる
怖くて、どのくらい大きくなったか聞けない
ヤバい彼が食い下がる。
彼が食い下がる。オレ、昔、
抗がん剤に嫌な思い出しかなくて、本当に辛くて、またあれをやるのかと思うとちょっと、、、
「今は昔と違って副作用を抑える薬も沢山あるし、
大腸がんの抗がん剤は良く効くよぉ
4クール抗がん剤をやって、それから肝臓。
年内には切れるでしょ」
」彼 撃沈
◯先生は、話を逸らすのが上手い。
大きくはなってるけど、まだ手術が出来るんだと、
私は少しほっとする。
先生の声のトーンが変わる。
「◯さん、◯さんは運が良いよ。
同時切除手術は決まっていたけど、
その前にあれだけ下血したんだから、
その手術自体出来なかったよ。
あとこっち首ね、
イレギュラーではあったけど、
そのせいで入院してたから、その場で手術する事が出来たんだよ。」
そうですねと彼。
と彼。「今言えるのは、
抗がん剤4クールしてから、
肝臓切除手術をする事が、
根治を目的とする最善の治療法。
◯さんは、ここまで、
根治する上で最短の治療を受けられてるよ。
だから、一緒頑張りましょう」
がん発覚後、初めて聞いた【根治】の言葉。
ずるい！！
また◯先生が言うなら大丈夫って思ってる
「この後、抗がん剤を担当する先生のところに行ってくれる？
直ぐ呼ばれると思うから。」
分かりました。ありがとうございます。と頭を下げて、診察終了。
ほどなくして、大腸外科の診察室の向かいの部屋に呼ばれた。