ひな祭りのパラダイムシフト

2月も終わりにさしかかり、間もなく3月

そして、3月といえば「ひな祭り」🎎

今回は、そんなひな祭りにスポットをあててピンク一色にしてみたいと思う

ひな祭りといえば、華やかで、娘の成長を祈願する行事、桃の節句とも呼ばれることから、なんとも春らしい彩に満ち溢れたイベントのような気がする

しかし、ひな祭りには、そんな華やかさの欠片もないパラダイムシフトが隠されていたのだ

まずは、ひな祭りの起源をみてみよう

ひな祭りの起源には様々あり、どれが起源なのかは判然としておらず、その起源説は複数存在している

平安時代の京都で、既に貴族の子女の雅びな遊びごとである「ひいな遊び」として行われていた記録が現存していたり、以前にも記したが、中国のある男の嘆きからだとか、同じく中国の上巳の日の身を清める習慣からなど様々だ

ほかにも、幼い少女を山に連れて行き、生贄とされたその少女を棺に閉じ込めて神に捧げるという話が東北地方に残っていたりする

まず、神主のような存在の者が、少女を手篭めにしたあと、村人たちも同じように凌辱を繰り返し、その後、生贄の少女の腹を鎌で切り裂き、生きている間に腹の裂け目から手を差込み子宮を取り出し、それを神に捧げた

そのため、その儀式の隠語として、少女(雛)を生け贄にする(奉る)、即ち雛奉りという単語ができたというものだ

いずれも女子に関わったり、呪いや厄災を避けるまじないからきていることから、中国から伝来されたのは間違いないだろうが、日本に伝わる時にいささかずれて伝わってしまったのか、その名残を残し現在のひな祭りに至っているのだろう

そんなひな祭りが、定着し始めたのは平安時代だという

この頃は、乳幼児の死亡率は非常に高く、赤ん坊のうちに死んでしまうことが殆どであった

親としては必死に成長を見守り、なんとしてでも生き長らえさせたかった

そのため、生まれて間もなく、枕元に形代（かたしろ）とよばれる身代わりの人形を置き、自分の身に降りかかる穢（けがれ／不名誉や、災厄・不純さ・災難）を移させ、3月3日に陰陽師を呼びお祓いをし、その穢を川に流す「上巳の祓い(上巳節)」という流し雛の風習に発展していく

これが、日本におけるひな祭りの起源であるとされている

元来、人型に穢けがれを封ずることから、一人一式が当たり前で、親子や姉妹などで共有しない習わしだったが、時代は江戸に移り、製作技術の発展により様々な人形が作られるようになり、子供たちの間では人形遊びが流行するようになった

そういった影響からひな人形は本来の姿から離れていき、豪華で立派なものとなっていく

そういった人形はお金もかかるので、気軽に川に流すわけにもいかず、次第に鑑賞を楽しむスタイルへと変貌していき、上巳の節句と呼ばれるようになった

「上巳の節句」――

五節句の一つで、元々は3月上旬の上巳の日だったが、後に3月3日に行われるようになり、旧暦3月3日は桃の花が咲く季節であり、桃は邪気払いの力もあるとされていたことから「桃の節句」とも呼ばれる

以前にも記述しているが、節句とは一年の中で節目となる日をいい、「節」とは季節の変わり目という意味で、最も邪気が入りやすい時期とされ、古来より無病息災や豊穣、子孫繁栄などを祈る行事が行われてきた

宮中では、節会と呼ばれる宴会が開かれ、江戸時代にはその中の五つの節会を特に公的な行事と定め、節句と呼び、その五節句のひとつに「桃の節句」があった

近年では、「雛祭り」とも呼ばれ、女の子の健やかな成長を願う伝統行事で、女の子のいる家庭では、雛人形を飾り、白酒・菱餅・あられ・桃の花等を供えて祀る行事として残っている

そして、この厄払いの様子は、今でも下鴨神社や流しびなの里として知られる鳥取市用瀬町（もちがせちょう）などで行われる「流し雛」の行事に再現されている

「雛人形」の「雛」とは、「雛形」を略したもので、これには「小さい」という意味があり、「雛人形」とは人間を小さくした物

つまり、「自分の穢れを、自分と同じ形をした別の物に移す」といわれ、雛人形は本来、呪具だったともされている

古来より、人に似せたものに魂や霊を込めるという儀式は多く行われてきている
古くからある土偶もそれにあたるといい、大まかには人の形に似せ、生贄を差し出し、その物の魂を人型に込め祈ったり、時には壊すということをしてきたそうだ
そういった物の大半は、人体を大きくデフォルメして表わしており、特に女性の生殖機能を強調していることが多く、豊穣、多産などを祈る意味合いがあったものと推定する説もある

雛祭りは、宮中や貴族の間で行われていたが、やがて武家社会でも行われるようになっていき、元々は5月5日の端午の節句とともに男女隔てなく行われていたが、江戸時代ごろから庶民の行事となり、豪華な雛人形は女の子に属するものとされ、端午の節句は菖蒲の節句とも言われることから、「尚武（武道・武勇を重んじること）」にかけて男の子の節句と女の子の節句に別れるようになった