常日頃、私たちは愛する人を失った時など、「心が引き裂かれる想い」という表現を使うが、実際に心臓に多大なダメージを与えて、死にさえつながるということをご存じだろうか
 
 
精神的ショックから肉体的に異常が起こるということは至極当然であり、それは『ブロークンハート症候群』と呼ばれている
 
オーストラリア外科医師会に属し、多数の著作も持つ心臓血管外科医のニッキ・スタンプ氏が、英紙「Daily Mail」で心臓への「愛」を語った
スタンプ氏は心臓のことがよくわかればわかるほど、「美しい臓器」である心臓が愛おしく思えるのだという
そして、真心や清い心などに使われる「心」とは正に心臓のことであり、我々の感情を支配すると共に、心が痛む体験は実際に心臓にダメージを与えていると解説し、さらには、精神が極限状態まで高まると愛する人との離別による失意と傷心で死に至ることもあるという
 
 
 
───1986年、44歳になる女性がマサチューセッツ総合病院に心臓に異常を感じて入院した
彼女にとっては、その日は特に変わった日ではなかったが、午後から急に胸に強烈な痛みを感じはじめ、その痛みは左の手にまで拡大していたという
これは、正に典型的心臓発作の症状であるが、検査してみても奇妙な事に彼女の冠動脈には、全く異常が見られなかった
 
一見、普通の心臓発作に見えるが、トーマス・ライアンとジョーン・ファロンは、『The New England Journal of Medicine』誌に掲載されたケースを引用しながら、この痛みの原因は激情による心臓発作であろうと説明した
実は彼女、発作の直前に自分の17歳の息子の自殺を知っていたことがわかった
その報告があまりにもショックで、心臓発作を起こしたのだ
この症例報告を行った医師らは、女性に起こった明らかな心臓の症状は、生理的な要因よりも、むしろ感情的な要因が大きかったと主張した
 
しかし、この手の心臓発作は、別に珍しくもなんともないという
バーバラ・ナッターソンとジャーナリスト キャスリン・バウアーが書いた「ズービキティー(Zoobiquity・訳語は汎動物学)」がある
 
 
長年にわたり、医師たちは心理学と生理学の密接な関係を見下してきた
特に感情と心臓病の関係は、ホメオパシー──同質療法・同種療法、「その病気や症状を起こしうる薬等を使って、その病気や症状を治すことができるという原理──程度にしか考えられていなかった
というのも、動脈中のプラークや、血栓、大動脈破裂のような目に見える障害にしか注目していなかったからだ
 
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医療センターの心臓専門医でありながら、ロサンゼルス動物園の循環器専門のコンサルタントでもあるバーバラ・ナッターソンらは、「人と動物には共通点がたくさんあり、人と動物は同じ病気にもなる。人だけを見て病気そのものを見ないと、本質が見えてこない。私たちはもっと多く動物から学ぶことができる。」と、自らの著書ズービキティでも主張している
 
感情が動物の心臓に影響を与えるという証拠は、何十年も前から存在し、野生動物学者や獣医師たちの間ではよく知られたことだった
動物が生死に関わる激しい経験をしたとき、例えば、天敵である捕食者に捕まったときなどは、アドレナリンが大量に分泌される
その量は、動物自身の体にも傷害を与えるほどの毒性を持つ量で、心臓をも傷つける
これは「Capture Myopathy(捕獲性筋疾患)」と呼ばれるものである
 
 
マサチューセッツ総合病院での珍しいケースで医師たちが頭を悩ませていた傍らで、野生動物学者や獣医師たちはすでに、ストレスにより心疾患が起こることを知っており、このことを知っていたトーマス氏らも、当然このことは人間にも当てはまるとし、この女性は、心の痛みが招いた心臓疾患ということになり、この症例から「ブロークンハート症候群」と名づけられた
 
 
 
さらに湾岸戦争において、ミサイルがイラクからイスラエルに向けて発射された翌日の1991年1月18日、多くのイスラエル人がミサイルによる被爆ではなく、心臓循環器系が原因で死亡したという事実がある
これは、化学攻撃による恐怖が死亡者数を増加させたと考えられ、また、1994年1月17日にアメリカ西海岸を襲ったロサンゼルス地震でも、死亡原因の多くが心臓循環器系だったという
 
このようなストレスによる心因性の心臓発作では、心臓の左心室の一部が膨張と過収縮することにより「たこつぼ」のように変形することが特徴としてみられ、その症状から、公益財団法人日本心臓血圧研究振興会所属の吉川勉が「たこつぼ型心筋症(Takotsubo cardiomyopathy)」と表現し、今では国際的に「ブロークンハートシンドローム」や「ストレス性心筋症」と同義で使用される言葉として認められている
 
 
スタンプ氏によれば、精神的ショックはアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンなどのホルモンの分泌を促し、冠状動脈に一時的なダメージを与えて心臓発作に似た症状を引き起こすという
そしてこのブロークンハート症候群に苛まれるのは圧倒的に女性が多いという
実際、ブロークンハート症候群の患者の9割が女性という時期もあったほどだ
女性はそれだけ感情面の影響を心身に受けやすいということだろう
さらに閉経後の女性は、心臓を守る働きのあるホルモンであるエストロゲンの分泌が低下するので、心臓に、よりダメージを受けやすい状態にあるという
 
また、中高年になってからのパートナーとの死別も、心臓に多大な悪影響を及ぼしているとも発表している
 
ある研究によれば、愛する人を失った初日は、心臓発作を発症する可能性が普段の16倍も高まっているとある
また、別の研究では、パートナーとの死別から最初の30日間は、死亡率が66倍に増加しているという報告もある
妻に先立たれた夫があまり時を経ずに「後を追う」というケースも一般的に良く知られている事実だ
さらに中高年だけではなく、若者にも注意が必要だとしている
記事によれば、精神的ストレスによる神経系とホルモンの活性化が引き起こす心拍の乱れは若者のほうが顕著に現れやすいという
つまり、若者のほうが物事の事実を受け止めきれず、その精神的ストレスから身体への影響を受けやすいということだ
 
また、死別だけでなく離婚もまた心臓へのダメージになり得るとしている
記事によれば、離婚をした女性は、結婚を続けている女性よりも1.29倍から1.39倍、心臓発作のリスクが高まるという
男性のほうも1.38倍と、ほぼ同等の心臓発作リスクをはじきだしている
しかし、男性は再婚することで、このリスクは打ち消されるのだが、どういうわけか、女性は新たなパートナーを見つけても高まった心臓発作リスクはそのまま続くという
 
 
Daily Mailによれば、鬱と心臓疾患の強い関係も指摘されている
9万3000人の鬱の女性を調査したところ、鬱の女性はそうでない女性よりも1.5倍、心臓疾患のリスクが高まっており、また別の研究では鬱の男女は心臓発作のリスクが1.6倍になるということも書かれている
そして、鬱の症状を抱え、心臓発作を体験した患者は、次にまた心臓発作を起こす確率が2.5倍に上がり、死につながる心臓疾患の確率も同程度に上昇するともされている
 
鬱の症状になると、身体は免疫機能を高めようとして細胞内で生理活性タンパク質(サイトカイン)を多く分泌するようになるが、実はこのサイトカインは、血管を詰まらせるなどの心臓にダメージを与えるともされている
さらに鬱の状態では、健康的な食生活や運動にもあまり期待ができず、結果的に心臓の健康にも悪影響を及ぼしてしまうこととなる
 
 
 
 
では、薬物にあまり頼らずに心臓の健康を保つにはどうすればよいのだろうか?
その鍵を握っているのが、オキシトシンと睡眠である
オキシトシンは、別名「幸せホルモン」と呼ばれ、幸福感や愛情に関係があると囁かれていて、主に乳幼児やパートナーとのスキンシップで分泌が促されるとされている

 
そして、このオキシトシンは、心臓の健康に良い働きを及ぼすことも報告されている
 
心臓は、心臓発作や各種感染症によって炎症を起こすのだが、オキシトシンには炎症を抑制する働きがあり、心臓と血管へのダメージを緩和する働きがある
 
 
しかし、日常生活の中でオキシトシンのレベルを上げるにはどうしたらよいのか?
 
そのひとつの有効な方法として、身近な人々となるべく多く『ハグ』をすることだという
 
 
また、睡眠も心臓の健康を左右する
寝不足などの不眠症患者は、1.8倍も高血圧症を発症しやすく、そのぶん心臓疾患リスクも高まるという
ハグは、できる相手がいないことには行うことはできないが、睡眠は自己管理によって十分に得ることも可能だ
心臓の健康のためにも十分な睡眠時間は、たっぷりと確保したいものだ
 
 
 
参考───
Zoobiquity/バーバラ・ナターソン・ホロウィッツ
Daily Mail
BBC News
日本内科学会雑誌
 
   『いいね!』と思ったら
ブログランキング・にほんブログ村へ

都市伝説ランキング

───────────
#心臓
#心臓病
#ブロークンハート症候群
#ズービキティ
#パートナー
#幸せホルモン
#奇妙な店
#メンバーお立ち寄り
#大衆酒BAR都市伝説
#和歌山市内のあやかしスポット
#無責任コミュニケーションスペース
#フリーメイソン和歌山支部
#和歌山の歓楽街新内 
#都市伝説 #和歌山市 #バー #フリーメイソン #アニメ #オカルト #呪い #占い