ホラーといえば、人形ネタは鉄板だ
そこで、今回はあの『お菊人形』について検証してみたい
そもそも、この髪の伸びると言われるお菊人形、こんな話がある
──1918年8月15日(昭和13年8月15日)、札幌狸小路で開催されて博覧展の話
店先に陳列されていた日本人形に目に留まった鈴木永吉は妹・菊子への土産として購入した
しかし、翌年1月24日に菊子は病気をこじらせ命を落としてしまう
遺族は、大層気に入り、毎日可愛がっていた人形をお棺にいれようかと思っていたがいれるのを忘れてしまい、しばらく菊子の遺骨と人形を仏壇に飾っていた
そして、数年後樺太より帰国した永吉は、人形を見て驚愕した
妹・菊子の形見であった人形の髪の毛が伸びていたのだ
家族は皆「菊子の霊が乗り移った」と信じるようになった
そして、お寺に永代供養をお願いした
これが、あの有名なお菊人形伝説だ
だが、そこから数十年経った1962年に発売された『週刊女性自身』では、やや変わった内容で紹介された
──1958年3月3日(昭和33年3月3日)の雛の節句、人形を持った鈴木助七が寺を訪問。自分の娘だと言って一体の人形を預けて本州へと旅だった。それから3年経ったとき、住職の枕元に助七が現れ、娘・清子の髪の毛を切ってくれと告げた。気になった住職が人形を確認したところ髪の毛が伸びていたという。
この記事、名前は「お菊」から「清子」に変わり、時代も変わり、樺太から帰ってきたのが、本州へと行っていて、寺に預けたのも息子・永代でなく、父・助七となっている
伝聞ミスやニュアンスによって、変貌することはあるが、これはあまりの大差ではないか
そして、6年後に発行された1968年の『ヤングレディ』では、萬念寺の人形は初めてお菊人形として紹介される
『週刊女性自身』の記事を書いたのも『ヤングレディ』の記事を書いたのも馬淵記者だった
ところが『ヤングレディ』の記事では違うことを書いているのだ
以下は萬念寺の住職の話として紹介されたものの一部である
──札幌で北海道大博覧会（大正7年）がひらかれたので、助七さんは菊ちゃんを抱いてつれていき、その帰り、狸小路の人形屋で、日本人形を買ってやったんです。そのときから、菊ちゃんは、いつも人形を抱いて遊ぶ……寝るときも人形も手放さなくなりました。
(中略)
ところが菊ちゃんが、あくる年、かぜをこじらせて肺炎になり、亡くなってしまいました。命日は、三月二十四日です。
(中略)
年月がながれて、昭和十三年の八月、 助七さんは樺太の真岡の炭鉱へ移ることになり、菊ちゃんの遺骨といっしょに、人形を私にあずけていきました。
私は、人形を如来さまの台座の下の引き出しに入れて……忘れることもなく忘れていたのですが、戦後、……あれは昭和三十年の春でした。寺の大そうじをしたとき、ふと、人形をとり出してみたところ、包み紙の破れたところから、髪がはみ出しているじゃありませんか。あずかったときは、この人形の髪は、みじかいおかっぱだったのに！
さらに内容が変わっているではないか、同じ筆者にも関わらず！！
大正時代のエピソードが加わり、大正12年生まれだった助七が、生前の大正7年に娘がいたことになり、亡くなる女の子の名前は「菊」に変化し、命日は3月24日へと
とはいえ、人形自体は現在も萬念寺に安置されており、そして髪が伸びた状態の人形も確認できる
それでは髪が伸びる原因としてはどんなことが考えられるのだろうか？
最も考えられるのは、「髪がずれた」という可能性だ
下図をご覧いただきたい
これは１本の長い髪を２つ折りにしたもので、日本人形やハワイあたりで売っている人形の植毛方法として度々見受けられる
仮に人形の髪の長さを10センチにしたい場合、この場合、その２倍以上の25センチほどの髪を用意し、その中央を糸の輪でくくる
次にその輪の部分を人形の頭に空けた穴に植え、「にかわ」などで固定
すると実際は20センチ以上ある髪が２つ折りになって植えられているため、見た目は10センチくらいにしか見えなくなる
ところが、この植毛方法の場合、にかわが古くなったり、接着のやり方がずさんだったりした場合に変化が起きる
ちょっとした刺激で少しずつ髪がずれていって、不揃いの伸びた髪に見えてしまうことがあるのだ
これがお菊人形の髪が伸びる原因として最も考えられる可能性である
ただし、お菊人形は萬念寺の意向によって詳しい調査が実施されておらず、本当にこの植毛方法が使われているのかは今のところ確認されていない
そのため断定はできないのだが
そのほか、一般的には、人毛や爪など、死後もなお伸びることがあると言われていたり、人形の接着剤につかった「にかわ」が髪の毛の養分になったのだとか様々な仮説もある
参考──
超常現象のつくり方・山口敏太郎著
サイト・超常現象の謎解き『髪が伸びる恐怖「お菊人形」』
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