ゾウキもザツボクもキーボードで打ち込むと、雑木と漢字変換される。同じ漢字を書くが、ゾウキとザツボクは意味合いがまるで違うと思う。

雑木(ゾウキ)という場合の意味は、森の中にはいろいろな樹々が共存しており、共存しているそれらの樹々について名前の判らない樹種も人間にとっては、多く含まれているだろう。共存するいろいろな樹々であるが、森の中では名前など、どうでもいい事であり、森の環境や土壌に合った樹々がそこで共存して生きているだけの事である。

 

 樹種名というのは分類学上、人間界で整理しやすいように便宜を図っただけの様に思える。逆に名前が無いと木本や草本に関する学問は遅々として進まなかった事は容易に推察できる。すべての人々が木の名前を知っているはずもなく、森の中のいろいろな樹々をすべてまとめて雑木(ゾウキ)というのはとても良い表現方法だと思う。

 

 転じて、雑木(ザツボク)という言い方は特に林業に従事している人がよく発している言い方だと思う。これは、林業に従事する人々が扱う樹種がスギ、ヒノキ等の針葉樹、ケヤキ、コナラ、サクラ等の広葉樹以外はザツ(雑)な木と見ているからだと思われる。ザツ(雑)という言い方の意味は、人間の価値基準で考えて、役に立たない木という意味合いが含まれているのだろう。

役に立たない木(ザツボク)という木は地球上に全く存在しないどころか、そういう風に意味づける人間こそ、地球にとってはひょっとして役に立たない生き物なのではないかと思う事もある。

 

 私が森林インストラクター資格を取得しようと思ったのは、ザツボクという言い方が林業従事者にとても広く浸透していたので、たとえ名前は知らずとも、ザツボクをゾウキという表現に変える努力をしてみたいと思ったからだが、林業従事者への意識改革は未だ道半ばである。

草本については、雑草(ザッソウ)という呼び方が広く知れ渡っているが、品種改良された野菜との区別で野生の草本を、雑草(ザッソウ)と呼ぶのは良しとしよう。