ミュージカル「スクール・オブ・ロック」劇評 | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

ミュージカル「スクール・オブ・ロック」劇評

 

 

演歌界の大御所と言えば、故古賀政男御大。そしてJ-Popのパイオニアの一人として、筒美京平氏。音楽芸能に興味のある方でしたら、このあたりはカバーされていると思います。そして、ぜひとも覚えておいていただきたいミュージカル界の大立者と言えば、大作曲家、アンドリュー・ロイド=ウェイバー氏(67歳)。超ド級の大ヒット作「オペラ座の怪人」は、世界最長のロングラン記録の保持者でござます。他にもお馴染みのダンス系ミュージカル「キャッツ」も彼の作品。代表曲「メモリー」なんて、ミュージカルなんて大嫌いと豪語するタモリさんでもサビくらいは歌えるんじゃないでしょうか?そんな大ヒット作を量産した天才、さしものウェイバー氏も年齢とともに才能は枯れていくもののようで。ここ最近の作品は、全く冴えず、すでに過去の人だと思われていたのは否定できませんね。しかし、そのウェイバー氏の大復活劇と言えるほど大波が今、ブロードウェイに押し寄せてきているのです。それがミュージカル「スクール・オブ・ロック」。楽曲の全てをウェイバー氏が手掛けています。

 

 

 

えー、アンドリュー・ロイド=ウェイバー氏がロックぅ〜!?しかも青春満載ミュージカルって!?私にとって、もうタイトルだけで、ちょっとげんなり。それになんかうるさそ〜、って思ってしまったほど。どうせ自らのブランドを生かした、おこずかい稼ぎのお仕事に違いない、安直なお子様ミュージカルだろうと、舐めてかかっておりました。しかし物語が進むにつれて、ちょっと待てよ、う〜ん、これなかなかいけるんでないの? と、気が付いたら、ロックも子供も得意でない私のハートを鷲掴みにしていったのですよ。

 

このミュージカルの良いところはスバリ、キャストと音楽。まず、実にバラエティに富んだキャラクターの子役達。想像を絶する大人顔負けの演技力、歌唱力、ダンスは、大の大人に混じっても全く遜色なしです。日本の子役のように子供っぽい、あどけない愛くるしさを売りにしていないところもいいのですね。またこのショーでは、プロ並みの楽器演奏まで求められる難易度の高い役どころ。ロック演奏する大人の仕草を真似る子供達の、破格の実力に裏打ちされた可愛さに大爆笑させられました。特にベースを演奏するケーティ役、エヴィエ・ドランちゃんは超必見ですぞ!

 

舞台で、大人の役者の存在を脅かすのは、文句なしに可愛い動物と子役達の存在感なのですが、それらの強力なライバルをものともせず、完全に凌駕しているのが主人公デューイに扮するアレックス・ブライトマン氏。映画版のジャック・ブラック似の彼。小柄で三頭身のお茶目キャラではあるのですが、舞台俳優として魅力たっぷりなので今後が期待大。”山椒は小粒でピリリと辛い”とは、まさに彼の事。その小さな身体で、立派に看板を背負った役者さんですから、見上げたものです。すでに観客を幸せにするオーラ全開。次期のトニー賞主演男優賞候補には間違いなくノミネートされるでしょう。

 

これまでのウェイバー氏の音楽いえば、前述した「キャッツ」や、「オペラ座の怪人」など、朗々と歌い上げるオペラ風のバラードが大半で、全盛期の後の90年代以降、そのフォーマットの焼き直しのような曲ばかりでした。しかし、この「スクール・オブ・ロック」の舞台版では、ほんとにウェイバー氏が手がけた曲なのかと疑われるほど、斬新路線で、元気発剌の物語にドンピシャ。ロック、ポップを絶妙に融合した軽快な曲からオペラチックまで満載されていて曲の全てが耳に残るのです。彼ったら、とんだ新兵器を今まで隠し持っていたのですね。やはり天才は、侮れません。

 

ブロードウェイの客層は、大半が所詮中高年の白人富裕層が中心。しかし、この「スクール・オブ・ロック」なら、ロック好きにとどまらず。人種、宗教、性別、大人から子供まで万人が笑顔で楽しめ、観劇後、コーラの飲んだように「スカッっ爽やか」な気分になります。最後に、ウェイバー氏の名作「キャッツ」が来シーズン、ブロードウェイで再演されることも決定。「スクール・オブ・ロック」に「キャッツ」と、この一年はウェイバー氏ブームになりそうですね。