米倉さんがまたニューヨークにやってくる! | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

米倉さんがまたニューヨークにやってくる!

 
 
 
ニューヨークからおはこんばんわ🗽
 
 
米倉涼子さんが、またブロードウェイミュージカル「シカゴ」に出演するためにニューヨークにやってきます!
 
 
以前、日本凱旋公演の「シカゴ」のプログラムに寄稿させていただきました。
長文ですが、ご興味あられる方はぜひお読み下さい。
 
 

 

 

 

米倉涼子がミュージカル『CHICAGO』でブロードウェイ・デビューすることに、我知らず“嫉妬”。兼業主夫の私でさえ、モーツァルトの才能をねたむサリエリの心境になったのだから、おそらく舞台女優の99%が、私と同じくハンカチの隅を「キッー」と噛むほどの気持ちになったのではないだろうか?   日本人の役者にとってブロードウェイ(BW以下略)舞台に立つことは、ロンドン五輪で人類最速の男と言われるウサイン・ボルトと100メートル決勝で一緒に走るくらいの一大事。なにせ、世界中から才能溢れる面々が集まり、しのぎを削っているから、アーティストの質が尋常じゃない。ミュージカルともなれば、演技と歌はもちろんのこと、バレエ、タップ、シアターダンスが踊れて当たり前。ネイティブ並みに英語が喋れることも大前提だ。アカデミー女優ナンシー梅木が、1958年のBWミュージカル『フラワー・ドラム・ソング』に主演して以来、それに続く日本人で主役をはれる人材が出てこなかったのは、まさにBWの敷居の高さによるもの。そのハードルを54年ぶりに乗り越えた米倉涼子の偉業に、日本のメディアが大騒ぎするのは無理もない話だ。   彼女が『CHICAGO』で演じるのは、ボードビル・ショーのスターを夢見るナイトクラブの売れない白人歌手、ロキシー・ハート。過去に多くのセレブが同役を演じてきたが、アジア人が演じるのは前代未聞! 1991年のBW版『ミス・サイゴン』では、エンジニア役にアジア人がキャスティングされなかったことに、アジア系俳優組合が猛反発。ショーがボイコット寸前となり、開幕が危ぶまれたこともあった。しかし時代は確実に変わったようで、白人役を米倉涼子が演じることに労働組合もゴーサイン。とはいえ、過去に前例がないこのキャスティングに筆者の血が騒がないわけがなく、お手並み拝見ということで、2012年7月10日、記念すべき彼女のBWデビューの日に、最前列で目撃した!

 

 

 

 

 

 

当日のアンバサダー劇場前は、まるで演劇界のアカデミー賞と言われるトニー賞の授賞式を彷彿とさせるほどの熱気。ブロードウェイと8番街の間にある49丁目の歩道は、タキシードを着たジェントルマンで溢れかえっていた。その光景に、私は妙にアガり、脇の下は汗でグショグショ。満席の劇場内も、初見参ロキシーへの期待と不安が交錯する異常なまでのハイな空気に包まれていた。しかしそれも納得である。過去に多くの日本人アーティストが、NYの由緒ある劇場や大ホールを借りて、ミュージカルやコンサートの興行を行ってきたが、米倉涼子の場合はそれらとは全く比較にならない挑戦。なにせ世界屈指の演劇都市NYのオン・ブロードウェイで、一流の舞台人と肩を並べて全編英語で演技しようとしているのである。片や畳の上で生まれ育ち、抑制された立ち居振る舞いの日本人に対し、イスにしか座らず、常に全身で自己主張するアメリカ人との共演。言語の違いも、圧倒的な体格の差もある劣勢の中で、舞台に立つというのだ。日米演劇史上に残るこの瞬間を、我々ニッポン人が固唾を呑んで見守りたいのは当然のことである。 実は私、スゴく心配していた。慣れない英語で台詞を噛んだりしないか、見せ場の側転はうまく回れるか、と。しかし、我らが米倉はのっけから絶好調! 物怖じしない舞台度胸に満点を差しあげたい。胸もお尻もボリューム満点のBW女優たちの中にいると、確かにモデル体型でちょっと細身だが、八頭身で小股の切れ具合なんて他のキャストと比べても全く見劣りはしていない。 今回の来日公演で見逃せないのは、7月10日から15日までアンバサダー劇場でのBW公演と同じキャスティング、ロキシー、ヴェルマ、ビリーが観られること。ヴェルマに扮するのは、金髪のつんつんベリーショートがトレードマークのアムラ=フェイ・ライト。2010年の日本公演では米倉涼子、河村隆一、大澄賢也ら日本人キャストと“日本語で”共演した強者だ。年齢を感じさせないダイナマイト・ボディで歌い踊る“ALL THAT JAZZ”のナンバーで、今回も観客のハートを鷲掴みにするはず。そしてビリーを演じるのは、中近東系の濃い顔と、私にもわけて欲しいほど黒々とした髪の毛をきっちり七三分けにしたトニー・ヤズベック。2006年のリバイバル版『コーラスライン』でアル役に大抜擢されて以来、ブロードウェイの第一線で活躍する俳優だ。セクシー・オーラ溢れる男なのだが、悪徳弁護士ビリーにはちょっと若いかぁ?というのが筆者の感じたところだが、エンタメ業界はルックスも重要。日本でも、女性に限らず、ゲイのおネエ様たちの人気を独占することは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

開幕からまもなく16年を迎える本作では、これまで様々なセレブが主演を務めてきた。ビリー役は米ポップアイドルグループ、バックストリート・ボーイズのケヴィン・リチャードソンやR&Bシンガー、アッシャーなど。ロキシー役には映画女優ブルック・シールズやビリー・ジョエルとの玉の輿婚で一躍セレブとなった元スーパーモデルのクリスティ・ブリンクリー(ジョエルとは1994年に離婚)らが名を連ねる。そんな中で、私が一番インパクトを感じたのは、2003年にロキシーを演じた映画女優のメラニー・グリフィス(出世作は1988年公開の映画「ワーキング・ガール」)。アントニオ・バンデラスの二番目の妻としても知られている彼女、舞台経験が全くなかったため、歌と踊りはお世辞にもウマいとは言えなかったけれど、舞台に登場すると目が釘付け。妖艶な立ち居振る舞いで観客を魅了した彼女は、真のエンターテナーとしての貫禄十分だった。でもさすがに二幕終わりのダンスシーンで見せる側転にはヒヤヒヤさせられた。ちなみに、彼女が出演した時のチケットが飛ぶように売れていたのは業界内で有名な話。 『CHICAGO』は、アクロバティックな宙吊りを見せる『スパイダーマン』や、絵巻物のような派手なメイクや衣裳で見せる『ライオンキング』とは対照的に、至ってシンプルな演出。舞台上にはフルバンドのオーケストラ。舞台転換もなければ、衣裳替えもない。目玉は登場人物のアクの強さと、全身に神経を行き渡らせる官能的なフォッシーダンス、と役者ありき。贅肉をすべて削り取った簡素なステージだから、役者の粗が見えやすく力量も試されるわけだ。そんな難易度の高いミュージカルでヒロイン、ロキシーを見事に演じきった米倉涼子。『CHICAGO』日本公演の関係者の多大なる期待と、日の丸を背負ってのBWデビューは、我々の計り知れないプレッシャーとの闘いであったに違いない(その頑張りを評して私から象印賞を進呈したい!)。凱旋公演では、さらに磨きがかかったユーモアたっぷりの演技と、セクシーでキレのあるダンスを存分に見せてくれるはずだ。