エイズの芝居 | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

エイズの芝居

ホモ野郎と麻薬中毒者が罹る死病と言われたエイズ。
私がそれを知ったのは20代。
三度のメシより、エッチがしたい血気盛んな頃だった。
ある日、ふと、本屋で手にした週刊誌フライディ。
何気にひらいたページに飛び出して来たのは
カポシ肉腫が体中に広がったエイズ末期患者の写真。
ゲイに生まれて来た事だけでも、
孤立無援の状態で劣等感に苛まれていたのに
それに追い討ちをかけるような突然の大災難。
自己嫌悪、お先真っ暗。
ミュージカル「コーラスライン」の生みの親で、
Broadway Cares/Equity Fights AIDS
(HIV/AIDS患者救済のための米チャリティ団体)の創設者でもある
マイケル・ベネットがエイズに倒れた時の哀しみと言ったら・・。

そんな同性愛者の多くが恐怖に震えた時代に上演されたのが
芝居『エンジェルス・イン・アメリカ』。
オフ・ブロードウェイ初演は93年。
現実的な切実感や緊迫感をもって、
この作品が脚光を浴びたことは言うまでのない。
あれから約20年が経過。
『エンジェルス・イン・アメリカ』が再びオフに蘇った。

物語の舞台は、80年代、レーガン政権時代のNY。
大統領とのパイプも持つ大物弁護士ロイ・コーンは
目をかけている友人の判事ジョーに
ワシントンへの転勤話を持ちかける。
しかし、ジョーは精神安定剤を常用している
妻ハーパーを気づかい返事を保留。
彼は様子をみて、妻に「新天地で結婚生活をやり直そう」
と提案するのだが、夫婦関係ないことに
不信感を抱いていた彼女はそれを拒否。
ある日、ジョーは彼女に「ホモでないか?」
と問いつめられる。
真実をついたその問いに彼は大激怒。
激しい口論となり彼は家を出てしまう。
一方、プライアーとルイスは同棲を始めて約5年のゲイカップル。
が、プライアーがHIVに感染しエイズを発症したことで破局。
プライアーはルイスに捨てられてしまう。
その後、ルイスとジョーが急接近。
ついに一夜を共にしてしまう・・・。

脚本を手掛けたトニー・クッシュナー
(「Caroline, Or Change」04年)は、
本作でピューリッツア賞、トニー賞、エミー賞と
名だたる賞を総なめに。
リアリズムを追求すると同時に、短いエピソードを積み重ねて
一つの物語を作り上げて行く手法で知られ、
中でも『エンジェルス・イン・アメリカ』はその典型。
なんと50シーンから構成されている。

上演時間は7時間以上にもわたる本作は、
第一幕「ミレニアム・アプローチ」と
第二幕「ペレストロイカ」の二部構成で描かれ、
二日間に分けて上演されている。
幕間も2回あり、歌舞伎のような長丁場だけど、
ホモフォビア、偽装結婚、エイズによるゲイカップルの破局など、
ゲイ作家ならでは着眼点で
赤裸々に描写された物語は奥深く全く退屈しない。
だけれど再演版の役者が・・・
基本に忠実に演じている。
だけれど、リアルタイムでエイズの恐怖を知らない役者だから
演技に熱がない。
残念ながらマイケル・グライフ(「RENT」96 年)の演出も
TVの昼メロ風の想像力の乏しさ。
と、私は本作に納得しなかったけれど、これは時代の流れ?
作品自体がすでにクラシックだから、
鬼気迫るものが伝わって来ないのは無理ないかも!?

エイズウイルスの繁殖を抑える薬の進歩で、
もはや死病とはいわれなくなったエイズ。
最近の若い子なんて、全く気にしちゃいない。
発展場なんていくと・・・
ゴムなし、中出し、なんて当たり前や。
正直、この歳だけど、ちと、いやかなり裏山ぁ!!
一度でいいから、
命がけで快楽をもとめてーーーMさんのように・・・汗。

最後に、
ゲイ男性の2人に1人がHIVに感染しているといわれるNYで、
私がいまだに健康でいられるのはセーフセックスのおかげ、念のため。